フィロソフィーのダンス|まだまだ踊ることをやめない 自己肯定感あふれる4人が満を持してメジャーへ

フィロソフィーのダンスがソニー・ミュージックレーベルズよりシングル「ドント・ストップ・ザ・ダンス」をリリースし、メジャーデビューを果たした。

2015年の結成以降、ファンクやR&Bを軸にした楽曲、ハイレベルな歌唱力などで注目を集め、順調に活動の規模を拡大させてきたフィロのスは、昨年12月の東京・新木場STUDIO COAST公演にてメジャーデビューすることをファンに報告。今年に入ると初期からほぼすべての楽曲の編曲を担当してきた宮野弦士、歌詞を手がけてきたヤマモトショウがグループのプロジェクトから離れることも発表され、ファンの間で話題となった。「ドント・ストップ・ザ・ダンス」では、テレビ朝日系「関ジャム 完全燃SHOW」でフィロのスのことを紹介するなど以前より4人に注目していたヒャダインこと前山田健一が作詞を担当。メジャーデビューにあたり、彼女たちが高らかに所信表明しているような歌詞を書き上げた。

音楽ナタリーでは結成5周年と共に過去最大の転機を迎えたメンバー4人にインタビューを実施。新曲の話題はもちろん、メジャーで活動することやグループを取り巻く環境が変わったことへの率直な思いを語ってもらった。また特集後半にはシングル収録曲を手がけたヒャダイン、児玉雨子、斉藤伸也(ONIGAWARA)によるコメントを掲載している。

取材・文 / 近藤隼人 撮影 / 斎藤大嗣

フィロのスがメジャーデビューする意味

──この5年間、フィロソフィーのダンスはクオリティの高い作品をコンスタントに発表しつつ、ワンマンライブの規模を順調に拡大させていて、このままでも十分に戦っていける勢いがあったように思うのですが、4人としてはやはりメジャーに行きたかったんですか?

フィロソフィーのダンス

奥津マリリ フィロソフィーのダンスの目標は「国民的アイドルグループになる」なんです。その目標を叶えるのに必要ならば、メジャーに行くべきだと思っていました。

十束おとは 今の時代、インディーズでも第一線で活動している方はたくさんいますが、私たちとしては4人で活動を続けてきた結果として何か1つ成し遂げたいなと思っていたんです。メジャーデビューはいい意味での通過点、ゲームで例えるなら絶対に超えたいボス戦みたいなものだったので、みんなでつかみ取れてよかったです。

佐藤まりあ ここ1年くらい発表していたCDは会場限定盤ばかりだったから、もともと私たちのことを知っている方々が買ってくださっていたと思うんですよ。メジャーデビューすればきっとどこのCDショップにも作品を置いていただけるようになって、私たちの音楽に触れてもらえる機会が増えると考えていて。それによって新規開拓のチャンスが広がることを期待しています。

日向ハル 「もうメジャーデビューしてると思ってた」とか、「メジャーデビューしないで自分たちでやっていくのかと思ってた」とよく言われるんですけど、国民的アイドルグループになるという目標に向けて、正直なところプロモーションの限界も感じていました。もうインディーズでできることをやり尽くしたという感覚があったというか。ライブのキャパもそうですが、インディーズのアイドルなのにテレビの冠番組(テレビ朝日「フィロのス亭」)も持たせていただいたり、Spotifyのバイラルチャートで上位に入ったりして。でもタイアップの企画や地上波の音楽番組への出演は実現できなくて、そのためにはメジャーデビューが必要だなという考えに至りました。

フィロソフィーのダンスとは

──初期からグループの楽曲を手がけてきた宮野弦士さんとヤマモトショウさんが今年6月にプロジェクトから離れたのは、メジャーデビューの話とはまた別の流れですか?

加茂啓太郎(フィロのスの生みの親である音楽プロデューサー) それは彼ら2人がブログに書いた通りで、それ以外に理由はないですね。

──メンバーとしては、家族のような存在だった制作チームが変わってしまうことに不安を覚えたんじゃないですか?

奥津 正直に言うと不安でしたし、今後のことが想像できなかったですね。でもそれを悲しく思うのではなく、前を向いていかなきゃという気持ちが芽生えて、メンバーも歌詞の面などで制作に参加していくようになりました。やっぱりメジャーの1作目はすごく重要ですし、私たちとしてはどういう作品にしたいかをディスカッションしたんです。

日向ハル

日向 曲のテーマなどをレーベルの方と話し合うことで、自発的な意識が生まれました。いろんな方の曲を歌って、いろんな方からボーカルディレクションを受けることで吸収できることも増えると思うし、どんなことでも前向きに乗り越えるしかないと考えるタイプなので、これからのことに楽しみな気持ちしかありません。

──「フィロソフィーのダンスとはなんぞや」というグループの定義みたいなものを新しいスタッフと共有する作業も必要だったのでは?

日向 それはけっこう話し合ったよね。

十束 4人の個性を尊重し合ってここまで来たので、その絶妙なバランスが崩れるとグループ自体がなくなってしまうという不安があって。「私たちはこういう人間で、こういう音楽をやってきて、こういうことをしていきたい」ということを具体的に伝えるところから始めましたね。昨日もレーベルの方とホワイトボードを使いながらディスカッションしました(笑)。

日向 メジャーデビューの発表後、わりとすぐに新型コロナウイルスの影響でステイホーム期間に入ってしまって、あまりコミュニケーションが取れないまま時間が進んでしまっていたので、何回かミーティングする必要があったんです。最初の段階で認識の差が生まれちゃうと今後どこかでつまずいてしまうし、このタイミングでちゃんと方向性をすり合わせておこうと。

──メンバーがグループの根幹について考えているアイドルってそうそういないですよね。メジャーデビューして新しい一面を見せたい一方、絶対に変えたくない部分もあったと思いますが、そこの認識はメンバー間で一致していたんですか?

奥津マリリ

奥津 うーん……はっきりと「これだよね!」と答え合わせしたことはなかったですが、同じことを考えてるなと感じることは多くて。逆にそれぞれの考えの違いもディスカッションの中で浮き彫りになったので、そういう意味でもミーティングは有意義なものでした。与えられたものをただひたすらステージ上で表現していく、という活動の形がこれから変わっていくと思います。

──では、この機会にいっそのこと変えてみようと思ったものはありました?

十束 音楽の面ではファンク、ソウル、ディスコを軸にしているけれど、ときにはその軸からちょっとずれてみてもいいのかなと思っていて。私たち4人が表現すれば絶対にフィロソフィーのダンスの音楽になるという自信があるし、賛否両論が出てもそのほうが楽しいし。1本の軸は持ちつつも、そこに遊びを入れてもいいのかなと。

──フィロのスは独自の音楽性を武器にのし上がってきたグループなので、楽曲を制作する作家の方もきっとすごいプレッシャーですよね。

奥津 言われたくないですもんね、「メジャーに行って曲が悪くなった」とか。

佐藤 言わせないためにも、私たちも歌やパフォーマンスのクオリティを上げなきゃね。

奥津 「4人が歌えばフィロソフィーのダンスになるんだ」という自信を持てたのは、5年間の経験やメンバーのポジティブな気持ちのおかげなので、もっと自分を強く持たなきゃと思っています。