マリチチが人格を持ち始めた

──フィロのスはメンバー1人ひとりの個性が強いことも印象的で。グラビア活動もやっている奥津さんは、自身の胸に“マリチチ”と名付けて話題を呼んでいますね。

奥津　楽曲派のアイドルがグラビアを始めるとなると、絶対に「音楽性を大事にしているのに脱ぐのか」と言われるんだろうなと思って。私も嫌で脱いでるわけじゃないし、ポップな言い方をしたら抵抗感がなく面白がって見てもらえるかなと考えて、初めてグラビアをやったときに「マリチチ解禁しました」とツイートしたのが始まりですね。ここまで浸透するとは思わなかったので、正直驚いてます。最近は「マリチチも喜んでます！」とか、人格を持ち始めました（笑）。

佐藤　生きたおっぱい（笑）。

──もともとアイドルを目指していたわけではないのに、Twitterでのアイドル的な発信の仕方がうまいですよね。一方音楽面では、ワンマンライブのたびにどんどん声が出るようになっているように思います。

奥津　最初はアイドルだからかわいく歌わなくちゃと思って、探り探りの歌い方だったんですけど、1stワンマンのときくらいから自分はこうやって歌いたいという思いがだんだんと芽生えてきて。この1年で練習を重ねて、自分の歌いたい歌を突き詰めて歌うようになりました。

──加茂さんは奥津さんを、グループにおけるどのようなポジションのメンバーだと捉えているのでしょう？

加茂　結成するときに、それぞれ違う声の個性を持っている子たちを選んだんですよ。マリリちゃんだったらJ-POPのリスナーに刺さるだろうなと思って。ほかのメンバーもハルちゃんはR&B、あんぬ（佐藤）ちゃんはアイドルソング、おとはちゃんは電波ソングやアニソンを聴いてる人に、というように各々に役割分担があります。

──奥津さんのグラビアの仕事については、最初から狙っていたわけではない？

加茂　マネージャーが話をもってきて、試しにやってみようと思ったらニーズがあった感じです。アイドルグループにグラビア担当がいることはいいことなので、よかったですね。狙っていたわけではなく、偶然の産物です。

奥津　去年、「週刊プレイボーイ」主催の「ナツ☆イチッ！オーディション」で優勝したときも加茂さんが一番驚いてましたもんね。全然勝つと思ってなくて、楽屋でみんなでだべってたんですよ。発表の瞬間もマネージャーさんしか見に来てくれてなかったんです。

──この間は「ヤングガンガン」のグラビアの撮影でグアムに行ってましたね。

加茂　業界に入って長いですけど、グラビアのロケでグアムに出張することになるとは思わなかったです（笑）。

奥津　加茂さんが一番楽しんでましたね。

日向　2人のプリクラが朝から送られてきて、めっちゃ笑いました。きつかったですね、あれは（笑）。

ゲームで勝つために1からパソコンを組み立てた

──佐藤さんは、ご自身のことをグループにおけるどういうポジションのメンバーだと考えていますか？

佐藤　ファンの方からはよく普通と言われるんですけど、あんぬ推しは奇抜なことを望んでいない、正統派なものを好む傾向があるとこの2年間で学んで。無理せず背伸びせず飾らず、そのままでいたらアイドル担当というポジションをがっちりと掴めました。

日向　アイドルグループのアイドル担当ってどういうことだろう（笑）。

佐藤　ほかのメンバーがしっかり特徴を持ってくれているお陰で、私が無茶せずに素のままでいられるので、3人にはありがたく思ってます。

十束　こちらこそ、すみませんいつも（笑）。

──佐藤さんの腹筋について、ファンがときどきTwitterで話題にしているのを見かけます。

佐藤　最初は自分の腹筋のことを何も思ってなかったんですけど、ファンの方がきれいと言ってくれたのがきっかけで、これは気をゆるめられないなと思ってトレーニングするようになりました。お腹が見える衣装を着ていたときに腹筋を4つまで割ったら、腹筋フェチの方がTwitterでフォローしてくれて、「腹筋割れてるのが好きな人、けっこういるんじゃん！」と驚きました。

──日々何かトレーニングをしてるんですか？

佐藤　もともと筋肉質で、腹筋30回3セットを週に3日やるだけでバキバキに割れちゃって。あと見られていることを意識するとお腹に力が入るんです。需要があれば上腕二頭筋もモリモリにしたいですね。

──（笑）。加茂さんはどういう思いで佐藤さんをフィロのスのメンバーに決めたんですか？

佐藤　（小声で）いいこと言って。

加茂　清純派アイドル担当が1人欲しかったんです。オーディションで会ったときにこの子は入れよう、必要なキャラだと感じました。BiSも寺嶋由芙ちゃんがいたので、あのケミストリーが起きたんだと思います。

──そうなんですね。続く十束さんは個性がたくさんあって、何から聞いたらいいのかという感じですが、最近は自作PCを作成する過程をブログにアップしていたのが印象的でした。何がきっかけでPCを自作しようと思ったんですか？

十束　パソコンでゲームをよくやるんですけど、あまりにもパソコンのスペックが低く、反応速度が追いつかなくて対戦相手に全然勝てなかったんです。それが悔しくて、ゲームで勝つために1からパソコンを組み立てようと決心しました。でもパソコンを光らせたらデコトラみたいになっちゃって（笑）、ヤンキー臭がするって話題になりました。本当に大変な思いをして産んだ我が子なので、大切にしていきたいですね。

──ゲームは昔から好きだったんですか？

十束　学生時代はずっとゲームセンターに通ってて、美少女ゲームも格闘ゲームも好きでした。ゲームが生活の一部になってましたね。

──十束さんはキャラクターや声の面で、秋葉原の要素を一手に引き受けてますよね。

日向　1人でんぱ組.incだね。

加茂　アニメも好きだし、オーディションのときからこのキャラがほしいなと思っていたんです。

十束　びっくりなのが、オーディションでほとんど歌を聴いてもらえなかったんです。ハマっているゲームの話とかをして、そのときに歌えなくても自分らしさを出せばいいんだと吹っ切れました。

──十束さんは、おばあちゃんの刺繍した洋服を着ていることもネットで話題になってましたね。

十束　祖母が昔からおしゃれが好きで、いつか孫に着せたいと思って取っていた服を私が着るようになったんです。祖母には刺繍も教えてもらっています。自分としては普通のことだったので、ネットでまとめていただいたり、ファンの方に褒めてもらえたりして、「ほかの家は違うんだ」と気付きました。

気付いたらゴリゴリのゴリな歌声に

──日向さんもアーティストからアイドルになったメンバーで。アイドルを卒業してアーティストになる人はけっこういますが、その逆は珍しいですよね。

日向　私は売れたくてフィロのスに入ったんです。個人の活動に限界を感じて、「あ、もう売れない。見切りをつけないといけないな」と思ったときに知り合いだった加茂さんに「何か仕事をください」と連絡したら、「アイドルでもいいのか」という話になって。「手段を選んでいる場合ではないから、いいです」と答えました。

──アイドルとして活動することへの抵抗はなかったんですか？

日向　うーん。もっと前だったら断ってましたね。やっぱりバンドをやりたかったので。でもそう言ってたら世に出れないな、世に出ることがまず第一だなと思ったんです。世に出たら好きなことをやりやすくなりますし。

──当時、アイドルにはどのような印象を持っていました？

日向　正直もともとはプラスのイメージはなく、マイナスだったと言うより興味が無だったんですけど、アイドルと名乗っていてもいい楽曲を届けているグループもたくさんいて、そういうグループにアイドルという先入観で耳を傾けない人たちがいるのはすごくもったいないと今は思ってます。なので、私がその人たちの印象を変える存在になるのが目標で、楽曲派アイドルが一般の人たちに広がるきっかけになれればと思っています。

──日向さんの声には一聴してフィロソフィーのダンスとはどういうグループかがわかる、リスナーを力技で黙らせるパンチ力がありますよね。

日向　グループ結成当初はここまで歌えなくて。気付いたらゴリゴリのゴリな歌声になってたんです。でもアイドルらしくいなくていいところがこのグループのよさで、誰も取り繕ってなく、好きな方向が別々を向いているから面白いんです。

加茂　だんだんと曲もメンバーの歌唱力の向上に合わせて難易度の高いものを作れるようになってきました。アイドルの歌振りは均等なケースが多いのですが、このグループはその曲に必要な声の子のパートを多くしています。だから曲によっては歌わない子がいてもいいと思うし、フィロのスは歌割りが特徴的なグループでもあると思います。

──日向さんは踊ることについてはどう思っていたんですか？

日向　もともとちょっとだけダンスをやってたので、特にダンスが負担になることはなかったです。でもアイドルのダンスは普通のダンスとはまた違うので、首の動きとかは佐藤のマネをしてます。アイドルらしい動きがいまだに苦手で、ゴリゴリのゴリな動きになってしまうんですよ。

──（笑）。奥津さんはどうでした？

奥津　私はフィロのスに入るまで踊ったことがなかったし、加茂さんに誘われたときにこのグループでは踊らない、やっても手振りくらいだと聞いていたんですが、振り入れに行ったらガッツリ踊らされて。踊るしかないんだと覚悟を決めました。

──アイドルファンのライブでのノリについてはどういう印象を持ちました？

日向　最初はびっくりしました（笑）。対応力に驚きましたね。私はオタク歴ゼロだったので、アイドルに関してはお客さんのほうが大先輩なわけで。始めてやった曲にもすぐ対応してくるから「パイセンすげえ！ こういうリズムにこういう言葉を入れるんだ！」とびっくりしました。でも、いろいろやっててライブ観てないじゃんと思うことはあります（笑）。

奥津　最初にアイドルファンの方が曲中に叫ぶMIXをきいたときに「なんて言ってるんだろう？ この人たちはなんで叫んでるんだろう?」と不思議で、目新しいことばかりでした。これが来たらこれを言うということが決まっていて、オタクの使命なんだなと思いました。