ナタリー PowerPush - DAISHI DANCE
ハウスミュージック目線で語るジブリ音楽の魅力
ジブリ映画と寄り添い、その映像世界を忘れられないものにしているジブリサウンド。その数々の主題歌や劇中歌を取り上げ、自身のフィールドであるダンスミュージックと融合させたDAISHI DANCEのカバーアルバム「the ジブリ set」は、2008年のリリース以来ロングセールスを記録している。この作品の続編「the ジブリ set 2」が5年の歳月を超えて登場した。ジブリ映画をこよなく愛する彼がメロディアスでドラマティックなカバーアレンジに込めたものとは果たして?
取材・文 / 小野田雄 インタビュー撮影 / 佐藤類
久石譲さんのコンサートには学生の頃から必ず足を運んだ
──まず、DAISHIさんは9月リリースのアルバム「NEW PARTY!」から作品リリースの名義を分けることにしたんですよね?
はい。2006年にデビューして、2013年で活動歴が7年目に突入したんですけど、2012年に「来年、何やろうかな?」って考えたときに自分としてはまだまだ新人だと思っているものの、移り変わりの激しいダンスミュージックシーンで7年活動してきて、「恐らく自分は定番のアーティストになっているんだろうな」とも思ったんですね。だから2013年はDAISHI DANCEの活動をリブランディングしようかなって思ったんです。そこで日本的な、メロディアスなダンスミュージックを作る今までのDAISHI DANCE名義はそのまま続行しつつ、DJの現場で即戦力になるようなものを作っていきたいって。だから9月にリリースした「NEW PARTY!」を含め、フロアに特化した作品は周りの友人や海外の人が使ってる僕の呼び名“DD”という名義でリリースすることにしたんです。
──そしてフロアに特化した「NEW PARTY!」のリリースに続いて、今回メロディに特化したDAISHI DANCE名義でリリースされるのが2008年に大ヒットを記録したジブリ作品のハウスカバー集「the ジブリ set」の続編「the ジブリ set 2」なんですね。まずDAISHIさんとジブリ映画、そこで使われている音楽との出会いというのは?
ジブリの映画は小学生の頃に観た「となりのトトロ」を皮切りに、リアルタイムで観ています。小さい頃は映画として観て楽しんでいたんですけど、大学生の頃、テレビでの再放送やDVDを繰り返し観ているうちに、ジブリ映画で使われている音楽のよさに改めて気付いたんです。中でも「となりのトトロ」でまっくろくろすけが引っ越しのために夜空に飛んでいくシーンで流れる久石譲さん作曲の「風のとおり道」は、ハウスビートとミックスしたときにすごくいいものになるんじゃないかと思ったんです。当時は曲を作ってなかったんですけど、「『風のとおり道』のハウスバージョンがあったらいいな」っていう思いがずっとあって、2006年に曲を作り始めたとき、そのアイデアをヒントに日本人としての感覚に素直に向き合ったメロディを盛り込んだ「P.I.A.N.O.」というトラック(1stアルバム「the P.I.A.N.O.set」収録)を作ったんです。
──つまりDAISHI DANCEの楽曲制作はジブリ映画や久石譲さんの音楽から受けた影響が大きい、と。
そうです。こと久石譲さんの音楽はジブリ映画のサントラはもちろん、映画とは別のオリジナル作品も大好きで、僕は学生の頃から地元札幌でコンサートがあるときは必ず行ってましたし、本州で行われるコンサートにも足を運んだりする、いちファンなんです。久石さんの音楽は初めて聴く新曲であってもどこか懐かしさがあるというか、すっと心に響きます。それでいて構成が革新的でアイデアが沸き出ています。そして、どの作品も自分にとって気持ちがリラックス、リセットされるし、その印象はジブリ映画とまったく同じに感じます。
ブックレットの写真はジブリゆかりの地を自分で訪れて撮った
──今回の「the ジブリ set 2」のアートワークはすべてDAISHIさんがご自分で撮影した風景写真が使われていますが、そういうビジュアルの感覚もジブリ映画から受けた影響がありますよね?
はい、今回のブックレットに使っている写真はジブリのモデルとなった場所、例えば「となりのトトロ」だったら埼玉、「千と千尋の神隠し」だったら江戸東京たてもの園、「耳をすませば」だったら聖蹟桜ヶ丘だったり、そういう地を自分で訪れて撮ったものなんです。僕は地方へDJに行ったとき、空き時間にパワースポットへ行ったり、風景を見たり、毎日持ち歩いているOLYMPUSの「OM-D」というカメラで気に入った風景写真を撮ったりしているんです。そういうところもジブリの影響ですね。写真ということでいえば、前作「NEW PARTY!」からジャケット写真も自分で撮っています。
──なるほど。ちなみにジャケット写真はどこで撮られたものなんですか?
僕は何年も前から「天空の城ラピュタ」に出てくる竜の巣みたいな雲の写真を撮りたいと思って、その機会を狙ってたんですけど、なかなかいい感じの雲に出会えなくて。でも、今年の夏に羽田から新千歳空港に向かうとき、飛行機が離陸する前から羽田の海の向こうにジブリ映画に出てくるような入道雲が浮かんでいたので、「これは!」と思って、離陸後にカメラの高解像度モードで奇跡的に撮ることができました。
収録曲
- 君をのせて(JPN ver.)feat. 麻衣(天空の城ラピュタ)
- やさしさに包まれたなら feat. GILLE(魔女の宅急便)
- カントリー・ロード(JPN ver.)feat. 本名陽子(耳をすませば)
- 風のとおり道 feat. 吉田兄弟(となりのトトロ)
- アシタカとサン(もののけ姫)
- Arrietty's Song feat. Cecile Corbel(借りぐらしのアリエッティ)
- 帰らざる日々(Mellow mix)(紅の豚)
- 時には昔の話を feat. COLDFEET(紅の豚)
- ひこうき雲 feat. arvin homa aya(風立ちぬ)
- あの夏へ(Mellow mix)(千と千尋の神隠し)
- さよならの夏~コクリコ坂から~ feat. Lori Fine(COLDFEET)(コクリコ坂から)
- Take Me Home, Country Roads feat. arvin homa aya, SHINJI TAKEDA (Re-Visited SAX mix)(耳をすませば)
DAISHI DANCE(だいしだんす)
札幌を拠点に活動するDJ / プロデューサー。メロディアスなハウスからマッシブなハウスまで守備範囲の広い、ハイブリッドで先鋭的なDJスタイルに定評がある。東京・新木場ageHaをはじめ大阪、京都、福岡、韓国などの大型クラブでレギュラーパーティを行うほか、各地のクラブにDJとして年間150回以上出演。ピアノやストリングスを軸としたメロディアスな楽曲プロデュースが特徴で、2006年7月にリリースした自身初のオリジナルアルバム「the P.I.A.N.O set」は、外資系CDショップやiTune Storeなどあらゆるダンスチャートで軒並み1位を獲得している。その後も「MELODIES MELODIES」「DAISHI DANCE Remix.」「Spectacle.」と毎年作品を発表し、いずれもロングセールスを記録。特に、スタジオジブリ作品で使用された名曲をメロディアスなハウストラックでカバーする「the ジブリ set」は、クラブミュージックのリスナーのみならず幅広い層から支持され異例の大ヒット作となった。このほかにも多数のリミックス制作や作品プロデュース、コンピレーションへの参加、家電製品への楽曲提供など多岐にわたる活動を展開。上海万博では「日本パビリオン(日本産業館)」の公式テーマソングとして「Re...JAPANESQUE」が起用された。2013年には新名義「DD」としてのアルバム「NEW PARTY!」と、ジブリ音楽カバー集の第2弾「the ジブリ set 2」をリリースした。