クリープハイプ×AC部|破壊から本質を生む実験

できないことが個性になる

尾崎 子供の頃「超兄貴」というゲームが大好きだったんです。知ってますか? マッチョな男たちが出てくるんですけど……。

安達 知ってますよ。戦闘機から弾が出てそれで敵を倒しながら進んでいくんじゃなくて、マッチョから直接弾が出るシューティングゲームですよね(笑)。

尾崎 あれが子供の頃の僕にはたまらなくて、弟と一緒によくやっていたんです。自分の理解を超えたものを見ると安心するという感覚は「超兄貴」で知った気がします。全部わかってしまうと不安になるし、楽しくなくなって、怖くなる。今はその逆で、理解できないことが怖いみたいで、「わからない、怖い」と放り出しちゃう人が多いですよね。理解できないものがあるたびに、自分が生きていく意味があると思うんです。

安達 僕らは逆に人に共感してもらえるものを届けることができないんです。ちゃんとやろうとすると全然届かない。

尾崎 共感されるものを作ろうとしていた時期もあったんですか?

安達 ありましたよ。AC部は過去にいろんな仕事を受けていて、細かく細かくぶれてここまでやってきてますから。「AC部といえばこれ」という確固たるものがないし、失敗した作品もいっぱいあります(笑)。

尾崎 “正面から伝える”というのは僕もやってこなかったし、そもそもできないんです。クリープハイプにはまず僕の声があって、それをAC部に置き換えるとあの絵のタッチだと思うんですけど。この声に歌詞が引っ張られて、まっすぐに歌っても別の意味に聞こえてしまうんですよね。AC部のお二人はご自身の絵についてどう思っていますか?

安達 狙ってやっていることと、自然にこうなっちゃうということがうまいことブレンドされて混ざりきらずにそのままあることで、なんとなくうまくいったという感じですね。

尾崎世界観(クリープハイプ)

尾崎 クリープハイプと近いかもしれないですね。

板倉 そうですね。僕は自分で描いて失敗した部分をあまり捨てないようにしてます。一旦呼吸を置いてみるといいものに見えてきたりもするので。

安達 失敗したものを見て、「これ全然いいじゃん」って僕が拾うこともあるし。

尾崎 それを素直に「じゃあ使おうか」となるんですか?

板倉 そうですね。その場合がいいほうが多いので。そこは経験上そっちを優先しています。

尾崎 クリープハイプには小川(幸慈)くんというギタリストがいるんですけど、フレーズを考えている途中で出てきたものがよかったりするんです。でも次にスタジオに入ったときにしっかり考えてきていて、そこが違うフレーズになっているんです。「この前のフレーズのほうがいいよ」と言うと、小川くんは「バレたか」という顔をして(笑)。本人からするとしっかり考えていないから悔しいみたいです。でもそこは「あれがよかったよ」と言ってしまいますね。

安達 整ってきちゃうとね。

尾崎 いいところが消えてしまったりするんです。結局みんなできないことのほうが多いと思うんです。こうしたいんだけどうまくいかない。でも、クリープハイプはそれが個性になってきた。だからよく「独特なジャンルですね」「独特なアレンジですね」と言われるけど、普通にカッコよくやりたいのにできなかっただけなんです。そこをいい部分だと思ってもらっているから今があるんだと思いますけど。

裏切ることが裏切らないこと

尾崎 締めになりますけど、AC部にリスペクトがあるので、今回一緒に作品を作れてうれしかったです。次は逆のパターンをやらせていただきたいですね。こちらから壊しに行くパターンを(笑)。壊したいですよ。頑丈なAC部を。

安達 ふふふ(笑)。

板倉 僕が今回の企画でクリープハイプさんはすごいなと思ったのは、アーティストはファンがいて成立するものじゃないですか。そんな中、映像を僕らに任せてくれたというのは、ファンとの信頼関係ができているんだなって。

尾崎 せっかくクリープハイプを好きになってくれたのであれば豊かになってほしいんです。もっと売れているバンドもいる中でクリープハイプを選んでくれた人たちには、幸せになってほしいし、いろんなことを経験してほしい。今回であれば邦楽ロックのジャンルでAC部が作ったMVを観られるのは、今はクリープハイプぐらいじゃないですか。クリープハイプを好きだったからこそAC部を知れたわけですよね。それは1つの財産だし、クリープハイプのファンでよかったと思ってもらえるところです。

板倉 そんなふうにおっしゃっていただけてうれしいですね。

安達 やっぱ器が違いますねえ。

板倉 ね(笑)。

尾崎 余談なんですけど、「エシスポ」(クリープハイプも出演したAC部の20周年記念イベント「AC EXPO'85(エシスポ'85)-映像・音楽と紙芝居技術の進歩-」)で初めてお二人はファンの姿を目の当たりにしたわけですよね。あれだけの人が盛り上がっているのを見て、どう思いましたか? あんなふうに盛り上がっているファンの期待に応えたいと思いましたか?

板倉 まず、僕らの職業にはファンがいるなんて考えられなかったのに、いてくれるというのは本当にありがたいなと思いましたね。

安達 今後はその人たちを裏切りたくないというか、裏切りたいと言うか……。

尾崎 裏切ることが裏切らないことなんですよね。それはクリープハイプも同じです。ファンを裏切ることが結果的に裏切らないことだから。裏切り続けるのも大変ですけど、今回はしっかり裏切れた実感があります。

ツアー情報

10周年全国ツアー「僕の喜びの8割以上は僕の悲しみの8割以上は僕の苦しみの8割以上はやっぱりクリープハイプで出来てた」
  • 2020年2月7日(金)北海道 Zepp Sapporo
  • 2020年2月15日(土)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 2020年2月16日(日)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
  • 2020年2月27日(木)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2020年2月28日(金)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2020年3月1日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2020年3月6日(金)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2020年3月7日(土)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2020年3月15日(日)千葉県 幕張メッセ国際展示場9~11ホール
  • 2020年3月22日(日)大阪府 大阪城ホール
尾崎世界観(クリープハイプ)とAC部。