田中徹、D.A.N.櫻木、ぷにぷに電機、KOTORI横山、THE LOCAL PINTS・MAKOTOが語る「CRAFTROCK FES」 (2/2)

アーティストとのコラボビールはどうやってできる?

田中 今度「CRAFTROCK BREWING」でKOTORIとコラボしたビールを出すんですよ。

横山 僕の大好きなbachoが「群雨」というクラフトビールを出していて、キャップ付きのボトルがめちゃくちゃおしゃれだったんです。銀のボトルにラベルが貼ってあるシンプルなデザインにDIYを感じたし、飲んでみたら「うわ!こんなのがあるのか!」ってびっくりして。気付いたらものすごい酔いが回って気持ちよかったです(笑)。クラフトビールはあんまり悪酔いしないのがいいですよね。

田中 今日はいろいろなクラフトビールを飲んでもらって、コラボビールのイメージをつかんでもらおうかなと。

左から横山優也(KOTORI)、田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)、MAKOTO(THE LOCAL PINTS)。

左から横山優也(KOTORI)、田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)、MAKOTO(THE LOCAL PINTS)。

横山 あー、僕はピルスナー(※チェコのピルゼンで誕生した淡色ビール。世界中で特に普及しているタイプで、さわやかな口当たりが特徴)よりもIPAのほうが好きかもしれないですね。

田中 こうやって飲み比べることで、自分の好みが見つかっていくんですよ。

横山 ピルスナーはちょっとシャバく感じちゃうかもしれない。

ぷにぷに電機 でも、1周回って「ピルスナーがいい」と思うときもありますから。

MAKOTO そうそう。バンドで例えるとThe Beatlesみたいな感じ。コアな音楽を聴き始めるとメインストリームを否定しがちだけど、やっぱりいいものはいい。ラガーとかピルスナー(※ラガーは下面発酵で製造されたビール。上面発酵で製造されたビールはエールと呼び、ピルスナーはラガー、IPAはエールに分類される)はそんな感じですね。特にクラフトのピルスナーは……長くなっちゃうな、あとで話します(笑)。

MAKOTO(THE LOCAL PINTS)

MAKOTO(THE LOCAL PINTS)

──アーティストとコラボしてビールを作るのは、どういう流れで実現するものなんですか?

田中 「CRAFTROCK FES」や「CRAFTROCK CIRCUIT」の楽屋でご挨拶した際に「コラボしたい」とお声がけしてもらうことが多いですね。今日みたいな感じで打ち合わせして、アーティストさんの好みを聞きながらアイデアを出していきます。うちの醸造長もすごく音楽好きなんですけど、彼はおいしいビールへのこだわりが強いので「いや、もっとこうしたほうがいい!」とアーティストさんからの要望に+αしてくれて。そんな感じで、双方が満足できるビールを作っています。

横山 僕はクラフトビール初心者だから、フラットなアイデアが出せればなと思ってます。音楽も、考え込んじゃったらいいものがなかなかできないので。ピュアなものには勝てない……あ、「ピュア」って名前のビールにしましょう!

ぷにぷに電機 うわ、めちゃくちゃいい!

櫻木 その名前のクラフトビールは絶対頼んじゃうわ。

ビールが誘う、とても大事な対話

──昨今はコロナの影響でイベントの開催も難しいですし、飲酒に対する風当たりも強いです。そのあたりはどう感じていますか?

田中 本当に飲食店とライブハウスは大きな影響を受けていますし、しんどい思いをしています。それでもイベントをやるのは、単純に参加してくれた皆さんに楽しんでほしいし、元気になってほしいからで。普段営業しているクラフトビール店に対する思いと変わらないですね。当日の状況によっては皆さんに守っていただくルールが増えるかもしれませんし、アーティスト含め、意見が一致しないところは出てくるはずなので、難しい部分もあるかもしれませんが、安全を確保したうえでベストを尽くしたいと思っています。

ぷにぷに電機 人はパンとワインだけあれば生きていけるわけじゃなくて、サーカスも必要だと思うんです。フェスとお酒の組み合わせで無秩序を想像してしまう人は多いかもしれないけど、決してそうではなくて。フェスはとても豊かな文化的側面がありますよね。でも、世界中が新型コロナウイルス感染拡大という未曾有の危機に瀕したことで、このカルチャーにすごく圧力がかかってしまっている。私が「CRAFTROCK FES」に参加しようと思ったのは、大好きなクラフトビールや音楽というカルチャーを少しでも守りたいという気持ちが強かったことも理由の1つです。

ぷにぷに電機

ぷにぷに電機

──ライブハウスでクラスターが発生したときの報道を見て、「ライブハウスに足を運ぶ人はいまだに『普通じゃない』と捉えられるのか」と、なんとも言えない気持ちになったのを思い出しました。

横山 完全に少数派ですよね。

MAKOTO 好きなものが両方否定されたような気分になっちゃいますけど、カルチャーは続けることに意味があるし、「ちゃんと感染対策しながらやってますよ」ということを行動で示していかないと。

ぷにぷに電機 文化を守る意味でも、参加される皆さんには感染対策やルールを守ってほしいなと、出演者からもお願いしたいです。

横山 僕もやれる限りはやるべきだし、止まっちゃダメだと思ってる。「自分のイベントで問題が発生したらどうしよう」とか、正直びびっちゃうじゃないですか。でも、そもそも音楽が好きだからやっているだけなんですよね。僕はライブって、お客さんに「観に来てもらってる」のではなくて、「自分たちが好きなことをやっていて、そこにお客さんが観に来ている」状態だと考えるんです。お互い好きで集まっているから自己責任になるし、だからこそ守るべきことはちゃんと守りたいですね。

──アーティストとオーディエンスは対等だからこそ、各々が自主的に行動しよう、と。

横山 音楽を披露できる場所は、自分の生活があったうえで成り立つから。自分が守れる範囲をしっかり把握して行動できれば、外野の意見は気にならないと思うんですよね。最近、周りの声に振り回されることが多いから。

ぷにぷに電機 でも、私は「自己責任」って冷たい言葉だと感じるんです。もちろん横山さんの言いたいこともわかるんですけど、「みんなが好きなことをただやればいい」ということではなくて、提示されたルールがなぜあるのか考えるべきだと思います。1人ひとりが把握できることには限りがあるし、例えば医療従事者の方々や各分野それぞれの苦労があって、それを想像することが大切なんじゃないかと。その中で音楽家としてできることがあるはずだし、お互いを守るために必要なことを探っていきたいんです。それから周りを気にすることも悪いことではないし、「どうしてこの意見が気になったんだろう」と自分の内面を省みることもできるので。

櫻木 本質を理解するきっかけなんだ。

横山 でも、僕は周りの声を聞くことで、自分が壊れちゃうというか……正直、しんどい情報が多すぎて。「まずは自分を守って整えなくちゃ、何もできないな」というところもあるんです。

ぷにぷに電機 ああ……それはすごくわかります。

横山 医療従事者の方々だからこその生活があるし、僕らにもミュージシャンだからこその生活がある。それをちゃんと認識していきたいというか。

──お二人とも、実はかなり近い話をしているように思いますね。

櫻木 すごく必要な議論だと思う。初対面なのに、こんな真剣に意見交換ができるのはビールの力ですよ。シラフなら無理。

ぷにぷに電機 えっ、酔ってなくてもできますよ!

櫻木 あれ、そう? じゃあ人によるのか(笑)。

田中 こんなふうにスタンスの違う人が集まって意見を交わすことができる場を提供するのが、フェスやライブハウス、飲食店の役割だと思うんですよね。今後もこういう場所を作り続けていきたいです。

左から櫻木大悟(D.A.N.)、ぷにぷに電機、田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)、MAKOTO(THE LOCAL PINTS)、
横山優也(KOTORI)。

左から櫻木大悟(D.A.N.)、ぷにぷに電機、田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)、MAKOTO(THE LOCAL PINTS)、 横山優也(KOTORI)。

プロフィール

田中徹(タナカトオル)

株式会社ステディワークスの代表取締役社長。クラフトビールの魅力を伝える飲食店「クラフトビアマーケット」「立飲みビールボーイ」や音楽とクラフトビールのカルチャーをサポートする「CRAFTROCK BREWPUB&LIVE」、ビール醸造所「CRAFTROCK BREWING」を展開。フェス「CRAFTROCK FESTIVAL」やサーキットイベント「CRAFTROCK CIRCUIT」では主催を務めている。2022年にはロックバンド・THE LOCAL PINTSを結成し、ベーシストとしての活動を開始した。

MAKOTO(マコト)

ロックバンド・THE LOCAL PINTSのギタリスト。過去にはHER NAME IN BLOODに所属し、Slipknotが主催するフェス「KNOTFEST」への出演をはじめ海外での活動も行っていた。THE LOCAL PINTSでは多彩な音楽的バックグラウンドを生かし、楽曲のアレンジを手がけている。

櫻木大悟(サクラギダイゴ)

ロックバンド・D.A.N.でギターおよびシンセサイザーの演奏、ボーカルを担当。2014年に市川仁也(B)、川上輝(Dr)とともにD.A.N.を結成し、2016年4月に1stフルアルバム「D.A.N.」を発表した。2017年11月には初の海外公演を行い、これまでジェイムス・ブレイクやThe xxの来日公演でオープニングアクトを担当。2021年10月には3枚目のフルアルバム「NO MOON」をリリースした。

ぷにぷに電機(プニプニデンキ)

インターネットを中心に活動を行っているシンガー / 音楽プロデューサー。ジャズやボサノバ、ラテンをルーツとしたオリジナル曲を発表しつつ、MACROSS 82-99やNight Tempo、Moe Shopら数々の海外アーティストとコラボ。国内では冨田ラボ、DÉ DÉ MOUSE、Kan Sano、80KIDZ、パソコン音楽クラブらとともに楽曲を制作している。

横山優也(ヨコヤマユウヤ)

ロックバンド・KOTORIのギタリスト / ボーカリスト。2014年から活動を開始し、2017年に1stフルアルバム「kike」を発表。2019年からはバンド主催企画「TORI ROCK FESTIVAL」をスタートさせ、2021年5月には3rdフルアルバム「We Are The Future」をリリースした。ソロ名義でも活動中で、2019年にはカバーアルバム「HITORI」を発売している。