田中徹、D.A.N.櫻木、ぷにぷに電機、KOTORI横山、THE LOCAL PINTS・MAKOTOが語る「CRAFTROCK FES」

4月16、17日に東京・立川ステージガーデンで行われる「CRAFTROCK FESTIVAL'22」。“音楽とクラフトビールのフェス”を掲げ、ビールを愛するさまざまなアーティストが一堂に会する2日間だ。

今回はこのフェスの主催者の田中徹と、出演アーティストである櫻木大悟(D.A.N.)、ぷにぷに電機、横山優也(KOTORI)、そして田中も参加するバンド・THE LOCAL PINTSのMAKOTOの5名に集まってもらい、クラフトビールへの愛、ハマったきっかけ、フェスへの意気込みなどを語ってもらった。

いろいろな種類のクラフトビールを飲みながら進んだ座談会は、まるで盛り上がったライブの打ち上げのよう。ほとんど初対面にも関わらず、つらい局面が多すぎる現在において音楽が、フェスが、ビールがどういった役割を果たせるのかという本質的な対話が深まっていった。

取材・文 / 張江浩司撮影 / 塚本弦汰取材協力 / 立飲みビールボーイ 中目黒店

クラフトビールにハマるのは、音楽をディグる感覚

──田中さんがクラフトビールと音楽をコラボレートさせたイベントを始めたきっかけは?

田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS) 僕はお酒と音楽が好きで、むしろそれ以外はあんまり興味ないんです(笑)。飲食店を経営するかたわら、2014年から「CRAFTROCK FESTIVAL」(※2019~2021年は「CRAFTROCK CIRCUIT」)を始めて、2019年に「CRAFTROCK BREWING」というブリュワリー(ビール醸造所)を作りました。好きなことを突き詰めたり、つなげていったら、イベントやブリュワリーとして形になったという感じです。

──出演しているアーティストは毎年ジャンルがバラバラですが、どういった基準で声をかけているんですか?

田中 純粋に、僕がそのとき聴きたい音楽をやっている人たちをリストアップして、制作の方々にオファーしてもらってます。僕自身、どんなジャンルの音楽も聴くので。

櫻木大悟(D.A.N.) 光栄です。

ぷにぷに電機 ありがとうございます!

左から櫻木大悟(D.A.N.)、ぷにぷに電機、田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)、MAKOTO(THE LOCAL PINTS)、
横山優也(KOTORI)。

左から櫻木大悟(D.A.N.)、ぷにぷに電機、田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)、MAKOTO(THE LOCAL PINTS)、 横山優也(KOTORI)。

──あえて言うなら共通点はありますか?

田中 僕はどちらかというと根暗な人間なので(笑)、「Yeah!」みたいな感じよりもじっくり聴けるほうが好きなんです。なので、そういう深みのある音楽性のアーティストさんが多いのかなと。

──「ビールとフェス」という組み合わせだと、もっとアッパーなイベントをイメージする人も多そうです。

田中 そうなんですよね。でも、クラフトビールが好きな人はこだわりが強かったり、その奥深い世界を探究したりする方が多くて。それって音楽を深掘りしていく感覚と似てると思うんです。

──出演者の皆さんは普段からクラフトビールを飲まれますか?

ぷにぷに電機 飲みます!

櫻木 大好きです。

横山優也(KOTORI) 僕は……全然飲んだことがないです(笑)。ビールそのものは好きです。

MAKOTO(THE LOCAL PINTS) 今日で沼にハマりましょうよ。僕は機材よりクラフトビールにお金を使ってます。

ぷにぷに電機 私もかなり使ってるかも(笑)。セッションIPA(※低めのアルコール度数やライトな喉ごしを特徴とするビール。IPAとはホップを大量に使用したビールのこと)を中心にいろいろなクラフトビールを飲んでいるんですけど、各ブリュワリーの理念にも興味があるんです。最初にハマったのはスコットランドのブリュワリー、ブリュードッグの「パンクIPA」で。去年ブリュードッグは「配達用のトラックを全部電気自動車にします」というステートメントを出していて、カッコよくて惚れ直しました。新しい会社だから環境への取り組みも早くて、もう「新作出たら絶対飲みます!」って感じです。

左からぷにぷに電機、櫻木大悟(D.A.N.)。

左からぷにぷに電機、櫻木大悟(D.A.N.)。

──「新譜が出たら絶対聴きます!」みたいな。

ぷにぷに電機 そうですそうです! ほかにはデンマークのトゥ・オールも好きで、そこは今年フェスを主催するみたいなんですよ。もう絶対デンマークに行きたい! 完全に沼ってます(笑)。

櫻木 僕はIPAが好きで、苦味とパンチがあるのが好みで。こういう系統の味を追い求めてますね。そもそもイギリスのパブの雰囲気が好きで、そういうカルチャーに触れることでクラフトビールを知りました。

──D.A.N.はイギリスツアーにも行かれてますもんね。

櫻木 D.A.N.はイギリスのカルチャーに強く影響を受けているバンドなんです。やっぱりブリティッシュパブのあの感じというか、友達とサッカーを観ながらビールを飲んでいる光景は好きです。

櫻木大悟(D.A.N.)

櫻木大悟(D.A.N.)

MAKOTO 僕はTHE LOCAL PINTSの前にHER NAME IN BLOODに所属していて、カリフォルニアで行われたSlipknotの主催フェス「KNOTFEST」に出演したことがあるんです。そのときに「Stone IPA」というクラフトビールに出会ったんですが、ラベルに悪魔の絵が描いてあって。「なんだこれは!」と飲んでみたら、今まで味わったことがない重たいテイストで、それがクラフトビールに興味を持ったきっかけですね。初めて音楽を好きになったときと同じで、あの衝撃を今も追い求めている感じです。

ジャケ買い失敗も思い出になる

横山 皆さんは何歳くらいでクラフトビールにハマったんですか?

MAKOTO 27歳くらいかな?

櫻木 僕も同じくらいですね。

横山 僕は今26歳なんで、じゃあこれから来るってことですかね。

MAKOTO 確実に来ます。

横山 みんなマニアックに語ってるから、「敷居が高いのかな」と思っちゃいました。

横山優也(KOTORI)

横山優也(KOTORI)

ぷにぷに電機 全然そんなことないですよ! おいしそうなものを飲んでるだけです。

櫻木 そうそう、めちゃくちゃゆるいですよ(笑)。

田中 昔に比べると、クラフトビールを飲める機会は増えましたよね。今はコンビニやスーパーでも買えますから。

横山 飲むときは一晩中ビールだけなんですけど、クラフトビールはいろんな銘柄があるわけですもんね。ハマったらやばいな……。

ぷにぷに電機 クラフトビールはラベルもカッコいいんですよ。味がわからなくてもジャケ買いしちゃいます。しかもレコードより安いですから!

MAKOTO 買う予定のないものまで買っちゃって、それがいい出会いになったりしますよね。

櫻木 うまいビールを作ってたら、やばいジャケにしたくなるんだろうね。

──いい音源ができたらアートワークもこだわりたくなるのと同じというか。クラフトビールのジャケ買いで失敗したこともありますか?

櫻木 思ってたのと違うってことはありますね。「酸っぱい! そういう方向か」みたいな。

MAKOTO でも、そういうビールのほうが覚えていたりしますよね。

クラフトビールには職人のメッセージが宿る

ぷにぷに電機 私はフェスやビールの定義を、「CRAFTROCK FES」でもっと広げていければいいなと思うんです。今はノンアルコール飲料専門のバーもあるくらいだから、必ずしも「ビール=お酒」じゃなくていいんじゃないかなって。お酒が苦手な人でも、ノンアルコールのクラフトビールをおいしいと感じてもらえる可能性があるし。フェスも同じように好きになってもらえるかもしれない。

MAKOTO 確かに、クラフトビールはアルコールとしての楽しさだけじゃなく、純粋に「おいしい」という魅力がありますね。

横山 クラフトビールへの愛がすごいっすね……!

ぷにぷに電機 私は味がおいしいから飲んでいて、できれば酔いたくないんです。まあ、だいたい気付いたらベロベロになってるんですけど(笑)。

田中 お酒と音楽は昔から密接で、レイヴカルチャーなんかもそうですよね。アルコールで気持ちよくなって、大きい音で音楽を聴いて最高!みたいな。「CRAFTROCK FES」のお客さんは、そういったフィジカルな反応よりも精神的・感覚的な部分で感動し合っているように思いますね。

田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)

田中徹(CRAFTROCK BREWING、THE LOCAL PINTS)

──アルコールのドラッギーな要素だけで昂っているわけではない、ということですね。

田中 いい音楽を聴くと感動するのと同じように、おいしいビールを飲むと感動するんですよ。もちろん、酔ってるとさらに感動しちゃうってことはありますけどね(笑)。過去に開催したイベントでも、お客さんが酔いすぎて大騒ぎするようなトラブルは一度もありませんでした。出演してくれたアーティストやお客さんの意識、クラフトビールを楽しむためのコンセプトが一致している結果なんだと思います。

MAKOTO そもそもクラフトビールはガバガバ飲んで酔っ払うためのものじゃないもんね。たしなむものというか。

ぷにぷに電機 「クラフト」という言葉には「職人の技」みたいな意味も含まれていると思うんです。大量生産されたものではなくて、職人さんのメッセージが具現化されたものだから、飲んでてそれが伝わってくるし、楽しいんですよね。

櫻木 めちゃくちゃいいこと言うなあ。僕もそういう気持ちで飲みます(と言いながらビールをおかわりする)。