チェコと対バンしているときのsumikaは、いつもエンジンがかかってる
──これがラストの対談になります。「DREAM SHOWER 2025」に関するお話はここまでの2本の対談でも多く語っていただいたので、お二人にはまずお互いに質問したいこと、話したいことなどを自由に語り合ってもらえたらと思います。
武井 俺、今日健ちゃんに聞きたかったことがあって。例えばこの前のさいたまスーパーアリーナとか、とんでもない場所でライブをやった翌日はどういう気持ちになるの?
片岡健太(sumika) 「洗濯しなきゃ」とか? ライブの翌日は基本的に家事をしているので。大事なシャツを手洗いしたり。
武井 あんなに人を沸かしたあとにすぐに日常に戻れるの、すごいな。俺だったら全部捨てちゃうと思う。洗ってらんねえ!って
片岡 本当? やっぱり優心くんはロックスターだね!
武井 じゃあ、お酒をいっぱい飲んでしまうこともなく?
片岡 いや、今回のツアーはファイナルだけ打ち上げがあって、朝の9時まで飲みました。最終的にメンバーがうちに来て、おがりん(小川貴之)がソファでコクンとなった瞬間に「はい、終わりー」って帰らせたんですけど。だからさいたまの翌日は、宅飲みの片付けをして、換気して、洗濯して……みたいな感じでしたね。
武井 へえー。ライブが終わった直後って、幸せの絶頂じゃないですか。打ち上げの喧騒の中で、ふと怖くなることはない?
片岡 どういうこと?
武井 すごいライブをしたあとって、十字架がまた増えるわけじゃないですか。「未来の俺は、この夜を超えられるのだろうか?」と思ったり、「幸せすぎて怖い」と感じたりする瞬間はないのかなって。
片岡 それはありますね。毎回「これが最高到達点だ」「もうこれ以上のものはできない」と思う。そんなときは「そんなことない」と信じて、歯を食いしばって寝るしかない(笑)。
武井 あはは! それ、めっちゃ大事かもね。
片岡 過去を思い出して、「でも、あのあとライブを更新できたし」という安心材料にする。チェコもsumikaもキャリアが長くなってきたけど、過去を振り返って「たぶん次も乗り越えられるわ」という気持ちになれるのは、バンドを続けてきたからこそですよね。
──2組はsumikaの前身バンド時代に対バンしていると、過去のインタビューでおっしゃっていましたね(参照:「LIVE EGG BUDOKAN ~shibuya eggman 35周年 大感謝祭~」開催記念 チェコ×ビーバー×sumika座談会)。
片岡 そうですね。なので、2011、12年くらいからの付き合いですね。
武井 たぶんこういう表現されると本人は嫌だと思うんですけど、健ちゃんって、俺からしたら完璧なんですよ。ボーカルとしてのパフォーマンスはもちろん、すべてにおいて「ああ、俺ができないことを全部100点でやっていくな」と思う。俺、sumikaにけっこう心を折られまくってきたんですよ。「この世に新しいバンドが増えないでほしい」っていまだに思ってるけど、sumikaの登場は本当にセンセーショナルでした。しかも同じ事務所に入ると聞いて……。
片岡 ホラー体験みたいにしゃべるじゃないですか(笑)。
武井 いや、冗談じゃなくて本当に怖かったの。俺は基本的にあっち行ったりこっち行ったりするタイプなんですよ。それに比べてsumikaは迷いがないように見えた。バチーンとまっすぐで、ライブを観ていたら、メンバーも完全に腹をくくっているんだろうなとわかったし。
片岡 迷いがないように見えたというのは、本当にその通り。僕らはsumikaを組んだ時点で、新しいバンドを組むにしてはちょっと遅い年齢だったから、「2年以内に思うような結果が出なければ、バンドは趣味にシフトしよう」と決めて活動をスタートさせたんですよ。だから本当に腹を決めてたし、エッグマンに加入したのはちょうど「2年という制約を守れそうだな」「これでバンド1本で迷いなく続けられる」というタイミングだった。しかも僕らは「チェコが引っ張っている事務所に入れてもらった」という意識があったから、「尊敬している先輩には自分たちのベストしか見せたくない」という特別な感情を常に持っていたんですよ。チェコと対バンしたり絡んだりしているときのsumikaは、いつもエンジンがかかってる。だからそういうふうに見えたんじゃないかと思います。
武井 こっちも毎度エンジンかかってる状態でしたけどね。ただ俺の場合、意識しすぎるがあまり自分の流派じゃない戦い方になっちゃっていたときもきっとあったと思います。でも実際にやってみると、「俺この戦い方はできないわ」ってやっぱりわかる。対バンしたあとはいつも「sumikaになれないな」と落ち込んでました。
チェコにすごく恩義を感じている
──そんなsumikaを今回誘った理由を教えてください。
武井 俺らはバンドをうまく転がせない時期を経て、「またやろう」と戻ってきたタイミング。もちろん今もエンジンがめっちゃかかってるんだけど、現在の等身大のチェコでsumikaと対バンできたら、それはすごく素敵だなと思ったんですよね。きっとあの頃とは違う夜を迎えられるだろうし、そんな俺を健ちゃんに見てほしい。それによって、過去の俺が成仏して未来に行ける気がする。……だいぶ勝手な気持ちも乗せてますけど、sumikaとの対バンは1つのトラウマになっているので、俺はこれを乗り越えないといけないんです。
──以前は自分の流派を崩してしまったり、変ながんばり方をしていたりしたけど、今は等身大でライブができるはずだと。その心境の変化について、もう少し詳しく聞かせていただけますか?
武井 言ってしまえば、チェコは1回死んでるんです。コロナ禍以降、バンドの活動をだいぶ減らして。やめる勇気がなかっただけで、やめているのと変わらないような期間が長くあった。そう考えると、今はボーナスタイムというか。死後の世界だと思えばなんでもできるという感じで、吹っ切れているんです。でも、やけっぱちというわけではなく、ポップに楽しく舞い戻れているような。
──なるほど。片岡さんはひさびさにチェコに誘われて、どんな気持ちになりましたか?
片岡 とってもうれしかったです。「DREAM SHOWER」はsumikaにとっても思い入れのあるイベントですし、チェコから「DREAM SHOWER」に誘ってもらえたのがきっかけで仲よくなれた。バニラズと初めて対バンしたのも「DREAM SHOWER」でした。バニラズともビーバーとも最近対バンしていなかったから、僕らとしてもやりたいなと思ってたんですけど、それをつないでくれたのがチェコということにも運命めいたものを感じていて。
武井 そうなの?
片岡 僕らは事務所の先輩であるチェコにすごく恩義を感じているんです。チェコが活動してくれていたおかげで、僕らを含め後進のアーティストが音楽をしやすい環境が生まれたと思っているので。そういうバンドがもう一度仲間のバンドを集めてくれた。そこがとてもチェコらしいなと。以前から応援してくださっているファンの方にも、対バンできていない期間にそれぞれのバンドを新たに知ってくださった方にも、「DREAM SHOWER」を観てもらえるのは純粋にワクワクします。僕らは全力でライブをやって、また新しいトラウマを植え付けたいですね(笑)。
武井 再び死ぬかもな……?
片岡 僕もバンドマンですし、対バンは倒し合いなので。バチバチとやり合っている様をみんなに見てもらいたいですね。
武井 本当にとんでもないバンドが集まってくれて、おそらく全員殺しにかかってくると思うんですけど(笑)。昔の自分だったら、きっと怯えて「こんなのできねえよ」と思っていたはず。だけどようやく、この状況さえも楽しめるんじゃないかなと思える状態になりつつあります。知名度で言ったら俺らが一番低いので、「チェコは知らないけど、この3バンドが観たい」という方もいると思います。そういう方に伝えたいのは「最後まで帰らないで……!」ってこと。
片岡 あはは!
武井 1回死んでる人間がこんなに輝けるんだぞという姿をぜひ見てほしいですね。ドキュメンタリーとしてきっと面白いので。
公演情報
DREAM SHOWER 2025
2025年10月5日(日)東京都 豊洲PIT
<出演者>
Czecho No Republic / go!go!vanillas / sumika / SUPER BEAVER
プロフィール
Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)
武井優心(Vo, G)、山崎正太郎(Dr, Cho)、タカハシマイ(G, Syn, Vo)、砂川一黄(G)からなるバンド。2010年11月に初のCD作品「erectionary」、2011年10月に初のフルアルバム「Maminka」をリリース。2013年10月に2ndアルバム「NEVERLAND」で日本コロムビアよりメジャーデビューした。2015年9月に3rdアルバム「Santa Fe」、2016年7月に4thアルバム「DREAMS」、2018年3月に5thアルバム「旅に出る準備」を発表。2019年4月にmurffin discs / mini muff recordsよりEP「Odyssey」をリリースした。同年7月には武井優心とタカハシマイが結婚。コロナ禍を経て、2024年11月に9thアルバム「Mirage Album」を発表した。2025年に結成15周年を迎え、1年を通して15本のスペシャル企画を行う「15のお楽しみ」を展開。その一環として10月に東京・豊洲PITでライブイベント「DREAM SHOWER 2025」を開催する。10月3日に最新曲「Day by Day」を配信リリース。11月からは15周年の集大成として「15周年記念オールタイムベスト・リクエストツアー」を全国7都市8公演、ワンマンライブとして開催する。
Czecho No Republic (@cnr_official) | X
Czecho No Republic (@czechonorepublic) | Instagram
SUPER BEAVER(スーパービーバー)
渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“37才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成されたロックバンド。2009年6月にEPICレコードジャパンよりメジャーデビュー。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタートさせた。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと契約を結んだことを発表。映画「東京リベンジャーズ」「水上のフライト」やドラマ「マルス-ゼロの革命-」「あのときキスしておけば」、テレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー!! TO THE TOP」などさまざまな作品にテーマソングを提供している。またこれまでに埼玉・さいたまスーパーアリーナ公演や東京・日本武道館3DAYS公演などを開催。結成20周年イヤーである2025年の6月には千葉・千葉・ZOZOマリンスタジアムでの2DAYSワンマンを成功させた。9月より全国ホールツアー「都会のラクダ TOUR 2025 ~ ラクダトゥギャザー ~」を開催中。2026年1月からはアリーナツアー「都会のラクダ TOUR 2026 ~ ラクダトゥインクルー ~」を控えている。
SUPER BEAVER (@super_beaver) | X
SUPER BEAVER official YouTube channel | YouTube
go!go!vanillas(ゴーゴーバニラズ)
牧達弥(Vo, G)、柳沢進太郎(G)、長谷川プリティ敬祐(B)、ジェットセイヤ(Dr)による4人組バンド。2013年1月に7inchシングル「人間讃歌 / アクロス ザ ユニバーシティ」、7月に1stアルバム「SHAKE」をSEEZ RECORDSよりリリースした。2014年11月にはビクターエンタテインメント内のレーベルGetting Betterよりメジャーデビューアルバム「Magic Number」、2015年4月にメジャー1stシングル「バイリンガール」を発表。2020年11月にはツアー「ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020」を開催し、最終公演で東京・日本武道館のステージに立った。2024年1月にポニーキャニオン内のレーベル・IRORI Recordsに移籍し、11月にアルバム「Lab.」を発表。2025年9月にテレビアニメ「SAKAMOTO DAYS」のエンディングテーマ「ダンデライオン」を含むEP「SCARY MONSTERS EP」をリリース。10月から過去最大規模の全国ツアー「SCARY MONSTERS TOUR 2025-2026」を開催する。
go!go!vanillas (@go_go_vanillas) | X
go!go!vanillas (@go_go_vanillas_official) | Instagram
sumika(スミカ)
2013年5月に結成されたバンド。2017年に初のフルアルバム「Familia」をリリースし、2018年には東京・日本武道館公演3DAYSを含むホールツアーを開催。その後も映画「君の膵臓をたべたい」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」「ぐらんぶる」、テレビドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」、テレビアニメ「ヲタクに恋は難しい」「MIX」「美少年探偵団」「カッコウの許嫁」など、数々のタイアップソングを手がけてお茶の間に自分たちの音楽を広げた。2022年に結成10周年を迎え、2023年5月に神奈川・横浜スタジアムでアニバーサリーライブを開催。2025年3月にアルバム「Vermillion's」をリリースした。同月より全33公演の全国ツアー「sumika Live Tour 2025『Vermilion’s』」を行い、6月に埼玉・さいたまスーパーアリーナでファイナルを迎えた。