Czecho No Republic「DREAM SHOWER 2025」特集|SUPER BEAVER、go!go!vanillas、sumikaのフロントマンとサシで語り合う (2/3)

武井優心(Czecho No Republic)×牧達弥(go!go!vanillas)

独自の世界を作ることを目指した同志

武井 go!go!vanillasとは、10年くらい前から対バンしていました。最初はいつだったかな?

牧達弥(go!go!vanillas) スペシャのイベントじゃない? 僕、大学生のときにVeni Vidi Vicious(※武井がチェコ結成前に組んでいたバンド)を聴いてたんですよ。Veni Vidi Viciousのベースが武井さんだってあとから知って、チェコと出会ったときに「えっ、マジで?」と思いました。

左から武井優心(Czecho No Republic)、牧達弥(go!go!vanillas)。

左から武井優心(Czecho No Republic)、牧達弥(go!go!vanillas)。

武井 へえ、そうだったんだ!

 当然チェコも俺の好きなジャンルのバンドだったので。すぐ打ち解けましたよね?

武井 うん。俺もバニラズがドンピシャだったし、最初からシンパシーを感じていました。どんな音楽が好きなのかって、鳴らしてる音とか服、佇まいを見ればわかるじゃないですか。それで実際に話してみたら「やっぱりそうだよね」という感じで。

 イベントとかで一緒になった同世代のバンドと音楽の話をしても、好きな音楽が微妙に違ったりするんですよ。だけど武井さんとは、僕らの好きなUKロックなどのルーツミュージックのコアな部分について自然にしゃべることができる。音楽の話ができる兄さんって感じでした。当時僕たちは、自分たちがやりたい音楽と世の中が求めているものとの垣根をどうにか越えたいと考えていたんですよ。

武井 バニラズは、思いっきりJ-ROCKをやってるわけじゃないからね。洋楽から受けた影響をJ-ROCKに落とし込んでるというか。

 チェコもそういうバンドですよね。日本のロックシーンの中で、僕らは独自の世界を作ることを目指した同志だったのかなと思います。そういう存在に出会えると……なんだかホッとしますよね。

武井 うん。確かに共鳴している感じはありました。それにバンドがきっかけで出会ったけど、シンプルに友達のノリだったし。うちに来てSEを作ってたこともあったよね? あのセッションファイル、うちのパソコンにまだあるよ。

 ははは! 当時、めっちゃ遊んだり飲んだりしてましたもんね。

武井優心(Czecho No Republic)

武井優心(Czecho No Republic)

牧達弥(go!go!vanillas)

牧達弥(go!go!vanillas)

──対バンをする機会がなかったここ数年は、お互いの活動をどう見ていましたか?

武井 バニラズはマジで最高っすね。特に「平安」はちょっとズルい。音源で聴いてもカッコいいけど、ライブで観たときにさらにカッコいいなと思いました。あの曲を歌ってるときの牧くんは、身長15mくらいに見える。

 覇気がある?

武井 そうそう。あと、会っていないうちに、牧くんの笑顔がすごくよくなったなと思いました。昔はいろいろなことに怒ってたけど、今は怒りを手放した人の笑顔だなって思う。笑うこと、増えた?

 それはあるかもしれないです。楽しいからね。今は独立して1年経ったところですけど、昨年作ったアルバムも、1stアルバムのような感覚で作ったから。1周回って「バンド楽しい」に戻ってきた感じがします。

武井 それで笑顔がかわいくなったんだね。俺らがベストアルバムを出したときに、牧くんがコメントくれたじゃない?

 うん。

武井 あのあと俺は心が折れて、しばらくバンドができなくなっちゃったんですよ。その間もバニラズは怒涛の勢いで活動してたので、やっぱり直視できない感じはありました。「俺がバンドをちゃんとやらないと恥ずかしくて会えないな」って。

 なんとなく感じてました。僕らって、バンドとしていろいろなことを知る多感な時期に出会ったじゃないですか。メジャーデビューして、初めてフェスに出て、ケータリングエリアで他愛もない話をして、みたいな。

武井 そうだね。

 そういう濃い時間を共有している仲間だから、常に一緒にいる必要もないのかなと思っていて。みんなそれぞれに悩むことがあるだろうし、本当に大事な存在なのであれば、どこかでまたつながるだろうし。

武井 うん。

 もちろん落ち込むこともあるだろうけど、自分とちゃんと向き合わずに中途半端に戻ってくるのが一番ダサい。僕は年齢的に武井さんの後輩だから、強い言葉は言わないけど、武井さんが悩んでいる姿を見てはいましたね。いろいろと考え込むところが、武井さんのダメなところであり、いいところ。「どう戻ってくるんだろう?」と思っていたし、戻ってきたときにはフロントマンとして、音楽家としてさらに進化しているだろうと感じていました。

「おめでとう」みたいな空気にはしたくない

──悩みの時期もありましたが、チェコはライブ活動を中心に自分たちの持ち味を取り戻し、昨年11月に4年ぶりのアルバム「Mirage Album」をリリースしました。牧さんはこのアルバムを聴いて、どんなことを感じましたか?

 自分たちの世界観、作品に対する自信と覚悟を感じました。あと、武井さんは考え方がフラットになっている気がする。バンドメンバーには適材適所の能力があると僕は思っているんですけど、チェコの場合、マイちゃん(タカハシマイ)も歌うじゃないですか。

牧達弥(go!go!vanillas)

牧達弥(go!go!vanillas)

武井 うん。

 昔の武井さんは「ボーカリストとして」「フロントマンとして」みたいな部分をけっこう気にしていたけど、今は「ここは俺が歌いたい」じゃなくて「この音楽に本当に必要なものってなんだろう?」という音楽にフォーカスして選択しているような……フィルターが1つ外れて、ピュアな創作の境地に入っているんだろうなと感じました。だからチェコの世界観を、より解像度高く表現できるようになったんだと思う。

武井 なるほど。作品を出すごとにどう変化しているのか自分では客観視できないので、牧くんにそんなふうに言ってもらえてありがたいですね。

 なんか原点回帰じゃないですか? 武井さんのベースにあるドリームポップ的な要素、ポップの世界で深層心理をどう表現するかというカラーを自信を持って打ち出している感じがする。

武井 それはちょっと意識しました。ひさしぶりに出すアルバムだったから「チェコをやろう」って。……今話しながら思い出したんですけど、「よし、アルバム制作に取りかかろう」「バンドに戻らないと死ぬ」と思っていた時期に、バニラズの「DREAMS TOUR 2023-2024」に行ったんですよ。ライブがヤバくて、家に帰ってすぐ曲を書いた。そう考えると、バニラズからはすごく刺激を受けてますね。

──そして10月5日の「DREAM SHOWER 2025」で、ひさびさの対バンが実現します。

 武井さんと僕はどこか似ている部分があって、言わなくても「こう思ってるんだろうな」ってなんとなくわかるんですよ。それで僕なりに「じゃあなぜ今呼んでもらえたんだろう?」といろいろ考えたんですけど……僕らもずっとバンドをやってきて、プリティ(長谷川プリティ敬祐)が事故にあったり、ピンチに陥った時期もありました。そういう経験を経て、今がある。チェコは今がピンチを経験して戻ってきたタイミングで、そういうときのバンドは全力だから、覚悟を決めて今回のイベントを企画したんじゃないかと思いました。

武井 本当にその通り。後ろめたい時期とかもあったので、最初は悩んだんですよ。本当に声をかけていいのか。でもやっぱり、俺はバニラズが大好きだから。牧くんやバニラズのメンバーに「今のチェコ、カッコいいですね」と言ってもらいたい。もちろん、バニラズに出てもらえたらライブを観に来てくれる人も楽しいだろうなという思いもありましたし、声をかけた理由にはいろんな要素が含まれているんですけど、その中心に「バニラズが好き」というシンプルな気持ちがありました。

 全力を出さないとやる意味のないライブというか。メンツもすごいですよね。ライブバンドばかりじゃないですか。

武井優心(Czecho No Republic)

武井優心(Czecho No Republic)

武井 そう。我ながら狂ってる(笑)。

 当日は、チェコが「週刊少年ジャンプ」の主人公になれるかどうかを見れるのかなと思っていて。go!go!vanillasも全力でやりますし、チェコが「ステージに上がるの嫌だ」と思うくらいのライブをします。僕は「おめでとう」「これからも一緒にやろうね」みたいな空気にはしたくない。きっとほかのバンドもそういうライブをするだろうし、お客さんもチェコのカッコよさがソリッドに見える瞬間を期待しているんじゃないかな。当日、楽しみにしてます!