ナタリー PowerPush - Czecho No Republic
移動式遊園地「DINOSAUR」
カラフルな音色と洒落っ気のあるメロディで、独自のファンタジックなシンセポップを鳴らす4人組、Czecho No Republic(チェコノーリパブリック)。昨年10月にリリースした1stアルバム「Maminka」がCDショップ大賞2012にノミネートされるなど、注目を増している彼らが、2ndミニアルバム「DINOSAUR」を完成させた。
今回ナタリーでは作詞作曲を手がける武井優心(Vo, B)へのインタビューを実施。キュートな新世代ポップを生み出す彼のセンスの根っこにあるものを探った。
取材・文 / 柴那典
逆ギレですね、もう
──新作はメロディもポップだし、ノリもいいし、チェコの魅力をいろんな切り口からふくらませたような作品になっていると思います。制作はどういうところから始まったんでしょうか?
前の「Maminka」は1曲1曲フルスイングで作ったアルバムだったんですよね。すごくいい作品だと自分でも思うんですけど「ちょっとしつこかったかな」という意見もあって。じゃあ次は軽くシンプルな感じでいこうって話になったんで、まずは「魔法」とか「ウッドストック」みたいなわかりやすい曲を作ってたんですよ。そしたら今度は「チェコってこんなシンプルでいいの?」みたいなことを言われて(笑)。で、頭にきて「幽霊船」みたいなしつこい曲を作ったり。わりと、行ったり来たりしながら曲を作ってました。
──ちなみに、前にナタリーでやったインタビューでは「次の作品は壮大で大陸的な感じ」と言っていましたよね。そのイメージはこの「DINOSAUR」につながるものだったんですか?
いや、つながらなかった(笑)。実際に何曲か作ったりもしたんですけど、それは入ってないですね。1枚目から急にガラッと変えるのはどうなんだろうってことも言われたし、確かにそうだよなって思ったんで。前のアルバムで知った人にとっては、次がいきなり違う感じだったら確かに面白くはないだろうなっていう。2枚目って、ちょっとリスキーな感じもするんですよ。試されるというか。「前は良かったのにね」って言われたくない気持ちもあったし。
──1曲目はアルバムの表題曲でもある「ダイナソー」という曲ですが、これはいつできた曲なんでしょうか。
これはもう、最後ですね。
──ということは、行ったり来たりしながら曲を作っていた中で、この曲ができたときに決め手になった感覚があった?
ありましたね。「Maminka」はそれまでの集大成だったんですけれど、今回は短時間でイチから曲を作り上げるという初めての体験をしていて。その中で、「あと1曲欲しいなあ」というのをずっと言われていたんですよ。強くてデカくて、パンチのあるやつっていう。で、結構悩んだし、追い詰められてて。「強くてデカいって、なんやねん」みたいな(笑)。そうしたら、ある日突然「ダイナソー」が、ポンとできた。
──なるほど。逆ギレに近い感じだったんだ。
うん。逆ギレですね、もう。
──でも結果的に、捨て曲のないアルバムになったと思いますよ。
ほんとですか? ありがとうございます。
コンセプトは「移動式遊園地」
──このアルバムって、チェコのポップさが、いい意味で子供っぽい感覚として出てる感じがあるんですよね。まず「ABCD Song」だったり「魔法」だったり、タイトルが童謡っぽい。
うん、確かに。
──そういうファンタジックなイメージがあったんですか?
そのへんはほんとにいつも狙ってないので、あとで気付くところではあるんですけど。ただ、曲が出揃ってきてアルバムの構想を練ってたときに、「次は移動式遊園地みたいな感じのコンセプトでいきたい」というのが、ある日パッと出てきたんですよ。で、メンバーに「『Maminka』は母の愛だったけど、次は移動式遊園地みたいな感じで」ってメールを送って。そしたら「移動式遊園地なんて行ったことないし、ぶっちゃけどういうこと?」って言われたんですけど(笑)。
──移動式遊園地っていうのはどういうイメージだったんですか?
まあ、テーマパーク感がある曲調というか。なんか、曲中にいろいろな人の感情が詰まってると思うんですよ。で、移動式遊園地っていうのは、勝手なイメージなんですけど、いろんな街にやってきて、人を楽しませてはいなくなるみたいな感じ。キラキラしつつちょっと寂しいみたいな。昼間の楽しい感じじゃなくて、夜のイメージですね。とても楽しそうな空間なんだけど、「ああ、もう今日で終わりか、明日は移動しちゃうんだ」みたいな。そういうのは、一切メンバーには伝わってなかったですけど(笑)。
──普通の遊園地じゃなくて「移動式」というのが大きいんですよね。「いつかこのお祭りは終わる」ってわかっていながら楽しんでいるみたいな感覚。
そうですね。建物のひとつひとつが、しっかり地面に刺さってないですからね。
Czecho No Republic
(ちぇこのーりぱぶりっく)
武井優心(Vo, B)、山崎正太郎(Dr, Cho)の2人を中心に2010年3月結成。その後吉田アディム(G, Syn, Cho)、八木類(G, Syn, Cho)を加え、4人編成となる。2010年11月にタワーレコード限定でリリースした「erectionary」が高い評価を受け、The Mirraz全国ツアーのオープニングアクトを担当。2011年6月発売の1stシングル「Casually」が話題を集め、同年10月に初のフルアルバム「Maminka」をリリース。2012年6月には2ndミニアルバム「DINOSAUR」を発表した。