ナタリー PowerPush - class with Battle Cry
あの夏から20年、カバーをやる意味
売れる曲なんてできねえよ
──そもそも、皆さんはどういったリスナーを想定して本作を作ったんですか?
ko 1993年当時に高校生や20代半ばぐらいだった人たちに、もう一度青春時代っていうか、ヤンチャしてた時代を思い出して聴いてもらいたいっていうのはありますね。あと、今回は全曲カラオケバージョンも収録していて。ぜひ当時を思い出しながら歌ってもらいたいなって。もしくは1993年頃に子供が産まれたりして、息子とか娘に「あんたが産まれた年、こういう曲が流行ってたんだよ」っていう形でプレゼントなんかして、そういう20歳の記念に聴いてもらえればなっていう気もしますし。
──もちろんそういうニーズもあるとは思うんですけど、単に懐メロ的に聴かれるだけだともったいない作品ではありますよね。もうちょっとがっちり“ロックのアルバム”として聴かせようっていう意図もあるんじゃないかなって。「俺らがやるとちょっとこんなに変わるし、こんなにカッコよくなるんだぜ、この曲」って。
今 そんなのまったく考えてなかったね。
ko 全然考えてないですね。
今 とにかく自分たちの音にするっていうか、どうやってもなっちゃうっていう(笑)。
──カッコいいものになっちゃうんですね。
ko いやね、カッコいいかどうかは聴く人が判断することだと思うので。まあ我々はこれからもずっと音楽をこのバンドでやってこうと思ってるので、自分たちが納得したものを出してくしかないんですよね。
──売れる、売れないというのはなく。
ko 今ってやっぱり“アニメソング時代”とか言われたり、いろんなアイドルグループとかがいる中で、「今の時代こういう感じのこういうサウンドが売れるんじゃない?」とかっていうことはあんまり考えていないんですよね……あんまりというかまったく考えてない。僕から今に「ちょっとは考えてよ」って言っても、「そんなのできねえよ」ってタバコをプカーっと吸い出すので(笑)。まあ今、小島っていう、自分たちのサウンドで死ぬまでずっとやっていくんだろうなっていう濃いプレイヤーがバンドに2人もいるので、音楽的にはわりと成すがままな感じなんです(笑)。この2人に関しては、「こうやったら売れるんじゃない?」とか「時代はこうだぜ」っていうことはまったく頭にない。多少僕が「こうしてくんない?」って思うときがあってそれを相談したりはするけど、それでもダメだね。今までやってきた何十年の経験に基づいて「こういうのが男のギターだぜ」とか「男のキーボードだぜ」っていうプレイをするんで。今や小島とは3~4年くらいそういう議論をして戦ってもみたけど、ここはもう仕方ないね。まあそれで僕とあわなくなったら解散するしかないなという(笑)。
──逆にアニメソングやアイドルソングみたいなジャンルに対するアンチテーゼというわけでもなく……。
ko もう、我が道はこれだ。これしかないって。
ナタリーの取材があったし、フリオ・イグレシアスのカバーやるぞ
──リリースに関するインタビューなのでちょっと気の早い話なのかもしれないですけど、本作の発売後はどんな活動を?
ko 僕、血液型がO型なので計画性がないんです(笑)。だから今回も「なんか『夏の日の1993』ハタチだなあ。今、ちょっとやろうよ」からスタートしてこういうふうになってるので、今後もたぶん行き当たりばったりですね。これができたからこれを土台になんかしようっていうことより……僕らって肉食ってワインやシャンパンを飲んでみたいなところで「ちょっとこういうのやんない?」みたいな話をしてことを運ぶという形なんで。まあ商売とかビジネスで考えると最低なバンドかもしれませんね(笑)。
今 でも、最初に音楽を始めたときってそういう気持ちだったんじゃないの?
ko そうそうそうそう。
今 で、やってくうちになんか売れたいとか、そういう気持ちが芽生えてきたんじゃないのかな。それが芽生えないまま……(笑)。
ko 芽生えないままやりたいことしかやらない? その通りですね(笑)。
──せっかく、J-POPの名曲を本格的にロックアレンジする機会だったわけで……ある意味こんな機会を商売に生かさないって、端から見てるとけっこう「もったいねーなー」っていう気もしますけどね(笑)。
ko そうですか? 僕の場合、今日はナタリーのインタビューだったから、今夜あたり「今、フリオ・イグレシアスの『Nathalie』ちょっとアレンジしてくれ。カバーするぞ」みたいなこと言い出すかもしれない(笑)。音楽って、そういうノリでやるものですよ。
──ダジャレみたいなものじゃないですか(笑)。
susumu-k だけど本当に言い出すかもしれない(笑)。
ko 本当に8~9割がそんな感じだからね(笑)。俺、今日朝から「♪ナタリー」って10回ぐらい歌ってるよね? なんか音楽ってそれでいいんじゃないかって思うんですけど。もちろん心のどこかに「売れたい」って思いはみんなあると思うんだけど……いや、やっぱりあんまりないかな。ただライブやると「人来るかな」っていう心配はありますね。「3~5人の前ではやりたくないよね」って。
──でも、例えば今さんはもう何十年と売れっ子ギタリストとして活動していますよね。基本そういう調子というか、スタンスでここまできたんですか?
ko たぶんね、自分がこうだっていう芯を崩さず、やっぱりミュージシャンとして生きてきたから今の今剛があるんだと思うし、それは小島や松原にしてもそう。こういう言い方は失礼かもしれないけど、途中でブレるミュージシャンはダメなんじゃないですか。この人たち、ブレないもんね。何言っても。だから今があるんじゃないかなと思う。このバンドでは今が絶対的権力の持ち主なので、たぶんこのバンドもブレないでずっとこのままいて、たぶん売れないよ(笑)。
今 ははは(笑)。
──リリースを盛り上げましょうっていうインタビューのオチがそれはどうかと思うんですけど(笑)。
ko それが事実なので。そもそも「いい曲できましたから買ってください、聴いてください」っていうスタンスじゃない。「聴きたいやつ聴いてくれよ」っていう。でしょ?
今 うん。
ko ほら、「うん」って言ってる(笑)。わかんないやつはわかんなくていいよっていうスタンスだから。だよね?
今 まあ、でもそういう意味では今回は曲がね。
ko わかりやすい。
今 曲がカバーしてくれる。
ko 我々がカバーしたんじゃなくて、曲がカバーしてくれる、我々を(笑)。
1993 - class with Battle Cry (8/21発売)
収録曲
- ロード
- 慟哭
- 時の扉
- このまま君だけを奪い去りたい
- すれ違いの純情
- MELODY
- 島唄
- Get Along Together~愛を贈りたいから~
- TRUE LOVE
- 夏の日の1993
※CD2枚組で、全楽曲のカラオケバージョンも収録。
Battle Cry(ばとるくらい)
2008年よりボーカルデュオclassに加入したボーカリストのkoと、日本を代表するギタリストである今剛を中心に結成されたロックバンド。小島良喜(Key)、松原秀樹(B)、長谷川浩二(Dr)、susumu-k(G, Cho)といった実力派のミュージシャンが参加している。2013年8月にclassの代表曲「夏の日の1993」の発売20周年を記念して、class with Battle Cry名義でカバーアルバム「1993」をリリース。「夏の日の1993」をはじめ、1993年のヒットナンバーを独自のアレンジでカバーして話題を集めている。