ナタリー PowerPush - class with Battle Cry
あの夏から20年、カバーをやる意味
ko(Vo)、今剛(G)を中心に活動するロックバンドBattle Cryが、class with Battle Cry名義で1993年のヒット曲のカバーを収めたアルバム「1993」をリリースした。
本作はkoが2008年から参加しているユニットclassの「夏の日の1993」が発売20周年を迎えたことを記念し制作されたアルバムで、「ロード」「TRUE LOVE」「時の扉」といった1993年を彩った大ヒット曲のカバーを全10曲収録している。
この発売を記念し、ナタリーではバンドを代表してko、今、susumu-k(G, Cho)、長谷川浩二(Dr)の4人にインタビューを実施。class with Battle Cryという名義の意図や本作を作った理由、そしてBattle Cryというバンドのスタンスまでを聞いた。
取材 / 成松哲 文 / 加藤一陽 インタビュー撮影 / 八島崇
classのメンバーとして、この曲の20歳の記念にって
──まず一番気になるのは、なぜ今回はclass with Battle Cryという名義でのリリースになったのかというところなんですが。
ko やはり、僕がclassのメンバーであるというのがありますね。でも、2009年10月にclassの相方の津久井(克行)が他界してしまって。それからいろいろ考えて、classは解散はさせずに、“休止”という形にしていたんですね。さらにオリジナルの「夏の日の1993」でギターを弾いていたのが、今剛だったんです。僕がclassに参加した2008年の時点では僕と今は面識がなかったんですけど、津久井が「髪の長いすげえギタリストがいるんで、レコーディングに呼んでいいか?」って言って今を連れてきて、そのときに初めて会ったんです。それでレコーディングが終わって食事をする機会があっていろいろ話していたら、なんと今は僕と同じ釧路出身で、僕の中学校の先輩だったという(笑)。その後津久井が他界したタイミングで僕は音楽活動を休止しようとも考えていたんですけど、今が「なんかやろうぜ」って声をかけてくれて。
──それがBattle Cryを結成するきっかけだったんですね。
ko はい。さらに同じ事務所にドラマーの長谷川浩二がいたり、松原秀樹(B)や小島良喜(Key)が入ってきてくれて。だからBattle Cryでも曲は作っているんですね。でも、そんな中で今年「夏の日の1993」がリリースからちょうど20年を迎えた。それで今に、「津久井のためにも、ちょっと『夏の日の1993』をアレンジしてみてくれない? 20歳の記念みたいな感じで」って持ちかけたんです。それがclassの曲をBattle Cryでやるきっかけになったというか……それでできあがってきたものを聴いたら、「すげえいいじゃん! 1曲じゃちょっと物足りないから、これを機になんかやらない?」って話になって。で、1993年って、日本の音楽シーンでもヒット曲がワーっと出てきた年だったと思ったので、「じゃあ、『夏の日の1993』にちなんで、1993年にリリースされたヒット曲をカバーしようか」って。それが4月だっけ?
今剛 4月。中旬くらいかな。
──じゃあこの企画が持ち上がったのは、本当に最近というか。
ko そうなんですよ。たまたま4月ぐらいに僕も今もけっこうスケジュール空いていたんです。「ちょっと『夏の日の1993』の20歳の記念に」っていう話から、こんなんなっちゃいました(笑)。
──とはいえこの企画自体、けっこう勇気のいる話だった気もするんです。classはもともとビッグヒットがあるグループで、さらにメンバーの他界がきっかけになって活動を停止しているという状態で。今回の作品自体は本当によいものができたなと感じる反面、ちょっと企画自体をネガティブに捉える人がいたりもするんじゃないかっていう……邪推なのかもしれないですけど。
ko 「夏の日の1993」は津久井と前メンバーだった日浦(孝則)さんの2人で発表した曲ではありますけど、僕はとにかく津久井のことがすごく好きだし、僕自身もclassのメンバーとして、本当にこの曲の20歳の記念にと思って。まあ「ちょっとアレンジ変えてやってみたいな」っていうことから、こんな大きな話になってしまって。
──選曲の基準は?「1993年のヒット曲」っていう縛りが1つあるにせよ、その年にはもっとヒット曲はたくさんあるわけで。koさんがclassのメンバーということで「夏の日の1993」が収録されているのはわかりますけど、残りの9曲はどういう基準の選曲になっているんですか?
ko やっぱりあの……けっこう僕、見かけのわりに甘ったるい声なんで。だから、まあ……。
今 サウンドやメロディに声があうかあわないかを考えて。
ko 今が「これいいんじゃない?」っていう感じで決めてくれて。
今 逆に「この曲は歌わせらんないだろう」っていうのもありましたし。これは歌わせたら恥ずかしいよねみたいなのもあるし。
──「好きな曲を集めてカバーしました」というアルバムではなくて、Battle Cryのサウンドデザインにハマるかハマらないかという点をシビアに選んでいったという。もっと言えば、曲に思い入れもないし、好きで聴いてたわけではない曲の集まりかもしれないということですよね?
ko でも藤井フミヤさんがアコギ弾き語りで歌っている「TRUE LOVE」は好きでした。それで今に「アレンジやってよ」って頼んでアコギでレコーディングやったんですよ。ほかの曲も並行してやりながらの中で、アルバム自体も8~9割完成しているときでしたね。
今 いやいや、もう完パケだったよ。そんな中、一度オリジナルに近いアレンジで録ってみたんですよ。
ko そしたら今が「これじゃちょっと俺らの音じゃないよね」って。
今 で、もう1回アレンジをやり直しました。僕はオリジナルの「夏の日の1993」のレコーディングはやっていますけど、ほかの曲は全然知らなかった。だから固定観念とか先入観みたいなのがまったくなかったので……どの曲も、初めて聴く曲をアレンジする感覚でやっていきましたね。
ko ウチのバンドの中で一番こういう音楽を知らないよね(笑)。ここまで知らないのによくこれだけいろいろな人のサポートギタリストをできるよねっていう(笑)。
収録曲
- ロード
- 慟哭
- 時の扉
- このまま君だけを奪い去りたい
- すれ違いの純情
- MELODY
- 島唄
- Get Along Together~愛を贈りたいから~
- TRUE LOVE
- 夏の日の1993
※CD2枚組で、全楽曲のカラオケバージョンも収録。
Battle Cry(ばとるくらい)
2008年よりボーカルデュオclassに加入したボーカリストのkoと、日本を代表するギタリストである今剛を中心に結成されたロックバンド。小島良喜(Key)、松原秀樹(B)、長谷川浩二(Dr)、susumu-k(G, Cho)といった実力派のミュージシャンが参加している。2013年8月にclassの代表曲「夏の日の1993」の発売20周年を記念して、class with Battle Cry名義でカバーアルバム「1993」をリリース。「夏の日の1993」をはじめ、1993年のヒットナンバーを独自のアレンジでカバーして話題を集めている。