ナタリー PowerPush - class with Battle Cry

あの夏から20年、カバーをやる意味

「ロード」をいかにバンドアレンジするか

──susumu-kさんや長谷川さんは、この曲のラインナップについてどう思いましたか?

susumu-k 僕はちょうど1993年に青春期くらいの世代なんですよ。全曲知ってるんで、レコーディングしながら楽曲がBattle Cryのサウンドにどんどん近付いていくのが楽しかったですね。全曲カラオケで歌ってた世代なんで、驚きもありました。

長谷川浩二(Dr)

長谷川浩二 僕は「全部サビは知ってる」くらいの感じでした。それもあって、レコーディング時は今さんのアレンジのすごさを痛感しながら叩いてました。本当にちっちゃいニュアンスの音の表現の仕方やダイナミクスの付け方など、ものすごい神経使って。それは個人的に本当にかなりのチャレンジでしたね。今仕事でやってるのってだいたいもう「ドッパンドッパンドッパン」ばっかりなんです。それとは真逆というか(笑)。とにかく本作のレコーディングはものすごく楽しかったし、勉強になりました。

ko 「島唄」のとき、長谷川は相当居残り特訓させられてたよね(笑)。

長谷川 「島唄」のレコーディングには3~4日かかりました。いや大変でした。僕にないものがかなり要求されるので(笑)。

ko 長谷川のドラムはどちらかというと、速い、軽い。それがやっぱり、ちょっと本作の何曲かはやっぱり速い、スピーディだけじゃないニュアンスをすごい必要としてる曲もいくつかあるので。そういう意味では大変だったんじゃないかな。

長谷川 そうです。皆さんの出す音、1音1音が血の通ってる音なんですよね。僕が今まで仕事でやってきたのって、だいたいコンピュータで打ち込んだ音を生ドラムに差し替えて……みたいな作業が多かったりしたんですけど。そういうときって血が通ってないじゃないですか。縦線がスパスパスパスパンってくる中にハメていくというか。さらにドラムもエッジを立たせないとコンピュータの音に負けるので、思いっきり叩いていくし、あとスピード感も要求される。それとはまったく違うところでもう、音1つひとつがものすごくまろやかだったりとか、血の通ってる音たちの集合の中でドラムをどう出していくかっていう。今までやってるのと違うやり方をしてったので、楽しかったです。

──ほかの皆さんは、レコーディングやアレンジはいかがでしたか?

 音楽的にはとにかくなんか、普通にカバーっていうじゃなくて、やっぱり自分たちの感じも出したかった。だからアレンジは相当こだわってます。凝りまくって、原曲と違う感じになってると思います。そこにいくまでがなんかこう……けっこう大変でした。

──特にどの曲が大変でしたか?

 「ロード」とかかな? 「ロード」のアレンジはどうしようかと3日ぐらい考えてましたね。原曲はピアノとハーモニカと歌しかないので。

──それをいかにバンドアレンジしていくか?

 そうそうそう。あとはなんだろう。「TRUE LOVE」も2度目のアレンジだったからけっこう大変と言えば大変でしたし、あとは「Get Along Together ~愛を贈りたいから~」ですかね。原曲とは曲の仕組み自体を変えています。

susumu-k 僕は「ロード」に関してはびっくりしましたね。もう原曲の印象が強いじゃないですか。ハーモニカで「ぱらららー」って。それが、へたすればサビにまで「ロード」のカバーだってわからないような作りになっていて。イントロからBattle Cryっぽいサウンドに一番近いようなアレンジになって。

「ひと晩じゅう泣いて泣いて……」っていう歌詞ですから

──koさんは?

ko 僕が一番苦労したのは「島唄」でしたね。最初ちょっとオリジナルに近い感じで歌ってみたんだけど「どうも自分じゃないな」って。

 ブース入ってカーテン閉めちゃうんだもん(笑)。歌いながら踊り始めて(笑)。

ko 体を動かさないとあの感じで歌えなくてね、最初。恥ずかしいからブースのカーテン閉めてやって。で、できあがったの聴いたら「やっぱり違うな。じゃあ、ちょっとポップスっぽく歌おうかな」って。だけど「いや、これでもないな。あー。今はこの曲やめよう」ってなって(笑)。今に「普通にロックっぽく歌えばいいじゃん」って言われて、それで歌ってみたら「あっ、なるほどね。こういうハマり方あるんだ」と思って今の形に落ち着いたんです。だから一番それが苦労しましたかね。あとやっぱり、工藤静香さんの「慟哭」もやっぱり女性の歌ってことで苦労したかな……やっぱり歌詞がね。あんまり考えて歌っちゃうと、少し照れくさくなっちゃうんで。だからあまり詞のイメージを考えずに、バンドのスピード感についていく感じで歌っていきました。

susumu-k(G, Cho)

susumu-k 「ひと晩じゅう泣いて泣いて……」っていう歌詞ですからね(笑)。

──例えば原曲との違いがわかりやすいから「ヘビメタ風にアレンジしました」とか「テクノ風にアレンジしました」ってカバーアルバムって意外と多いと思うんです。でも、本作はそういった作品ではないですね? すごく真っ当な大人のロックにアレンジしてあって。それが逆にフレッシュな感じがしました。なぜこういったサウンドデザインにしようと?

 うーん、やっぱり一番始めに考えるのは、koの声に合うサウンドにするということ。で、僕らがやりたくないサウンドにはやっぱりしたくないだけで、やってて楽しい、気持ちいい、カッコいいって思えるようなサウンドに仕上げていった感じですね。だから打ち込みも入ってないですからね。

ko あげくの果てに今は長谷川に「カホン叩け」なんて言い出して(笑)。長谷川も慌てて楽器屋でカホン買ってきて(笑)。

──とは言っても、腕利きが集まるとやったことない楽器を弾いてもちゃんとするっていう(笑)。

長谷川 ちゃんとしてんのかどうかわかんないですけどね(笑)。まあ、今さんのディレクションは厳しかったですね。

 今回はコード進行からアレンジを始めるっていうのにすごいこだわったんです。原曲とかなり違う感じにはなってると思うんですけど、そこに時間かかりましたね。フレーズが出てくるかどうかみたいなところで迷うことはなかったけど。

ニューアルバム「1993」 [CD2枚組] 2013年8月21日発売 / 1993円 / Battle Cry Sound / BCS-58012~3
ニューアルバム「1993」
収録曲
  1. ロード
  2. 慟哭
  3. 時の扉
  4. このまま君だけを奪い去りたい
  5. すれ違いの純情
  6. MELODY
  7. 島唄
  8. Get Along Together~愛を贈りたいから~
  9. TRUE LOVE
  10. 夏の日の1993

※CD2枚組で、全楽曲のカラオケバージョンも収録。

Battle Cry(ばとるくらい)

2008年よりボーカルデュオclassに加入したボーカリストのkoと、日本を代表するギタリストである今剛を中心に結成されたロックバンド。小島良喜(Key)、松原秀樹(B)、長谷川浩二(Dr)、susumu-k(G, Cho)といった実力派のミュージシャンが参加している。2013年8月にclassの代表曲「夏の日の1993」の発売20周年を記念して、class with Battle Cry名義でカバーアルバム「1993」をリリース。「夏の日の1993」をはじめ、1993年のヒットナンバーを独自のアレンジでカバーして話題を集めている。