ナタリー PowerPush - COMEBACK MY DAUGHTERS
メンバーチェンジが引き出したバンドの本質「Mira」
キーボーディスト不在をなんとか乗り切れた
──松原さんにとっては、COMEBACK MY DAUGHTERSでの初レコーディングが今回のニューヨークということになるんですよね?
そうですね。もちろん、初めての海外録音で音楽的な部分での刺激はあったんですけど、メンバーとの関わり方に限りがあった僕としては、今回みんなで一緒に生活をしながら音を出せたことがすごい大きくて。そうやってメンバーとの関係性を深めることができたのは一番の収穫ですね。
──ただ、今回は渡米前に曲を固める段階で小坂さんがバンドを離脱したことで、バンドは危うい状況に置かれてしまったと思うんです。
戸川 すでにアレンジを固めた曲、半分くらい固めた曲、これから固めようと思ってた曲……進行度合いの違う曲が混沌とした状況で。
高本 キーボードのアレンジに関しては、小坂がすべてを放り出したのでほぼ0%ですよね(笑)。それを補おうにも、残されたメンバーはそれぞれのパートをまず固める必要があったので、キーボードに関しては現地で考えることになったんです。結局キーボードは僕と松原が担当したんですけど、録音自体は以前にも経験があったのでそこまで問題ではなかったものの、キーボーディストが不在のまま全体で練習せざるを得なかったり、本来キーボーディストが担う細かい音色の決定をやらなければならなかったりして。そういう問題に直面して不安を感じることはありましたけど、なんとか乗り切ることができたと思います。
「COMEBACK MY DAUGHTERSのよさってこういうことなんじゃない?」
──完成した今回のアルバムを聴いた印象として、ルーツロックを土台にドゥーワップやオールディーズポップスの要素があるかと思えば、ミニマル音楽やプログレッシブな要素も含まれていたり、音楽性がよりフリーフォームに広がったように思ったんですね。今回、レコーディングに臨んだ時点でアルバムの青写真はあったんですか?
戸川 これがねえ、青写真はまったくなかったんですよ(笑)。
高本 うん、今回はマジでなかったですね。このアルバムに限った話かもしれないですけど、メンバーがいなくなったことで青写真を描くという発想がなくなったんですよ。でも「COMEBACK MY DAUGHTERSのよさってこういうことなんじゃない?」っていう話は今まで以上にあったかもしれないですね。
戸川 だから、自分たちの気持ちが赴くままに1曲1曲を詰めていく作業に集中して、アルバム制作を進めていく中で全体像が見えてきた感じですね。
必要最小限のフレーズ、実験的なアイデア
──では、それぞれのプレイヤーとしてはいかがですか? 例えばCHUN2だったら、前回はギターのリバーブ感だったり、空間的な鳴りを意識していましたよね。
CHUN2 今回はニューヨークで買ったバンジョーとラップスティールギターというオーセンティックな楽器を使ったところが特徴ですね。あと、以前はいろんなフレーズを弾いて入れるスタイルだったんですけど、今回は手数を減らして必要最小限のフレーズだけにしようと心がけました。
──かたや、戸川さんは作曲を担当したインスト曲「sciolism」をはじめ、プログレッシブなアプローチが際立っていますね。
高本 まあ、見た目そのままですね(笑)。
戸川 そうですね(笑)。今回のアルバムに限らず僕が意識しているのは、例えばPINK FLOYDだったらエコーの音、THE BEATLESだったら逆回転とか、そういう自分が好きなロッククラシックのプログレッシブなギミックだったりするんですけど。今回はそういう要素がより似合うんじゃないかと思ったんですね。「sciolism」ではペリエの瓶に水を入れてその音を録って使ったり、そういう面白い実験的なアイデアをできる限り提案しました。
──それに音のよさを求めてニューヨークに行っただけあって、松原さんのドラムはシンバルの残響音だったり、スネアドラムの皮がしなる音だったり、そういう立体的な鳴りを意識したプレイに加えて、大太鼓のような鳴りのバスドラムを多用しているところが今回の大きな特徴ですよね。
そうですね。ただ、自分の中に音のイメージはあっても、実際に叩いてみるとイメージとは違う音が出ることもあって。メンバーとエンジニアが協力して、叩き方、鳴らし方からいろいろ試しながら音作りをしました。ドラムを録ったあとにバスドラムをオーバーダブしたんです。
高本 あの音をライブで再現するために日本に帰ってからバスドラムを買いましたからね(笑)。
戸川 Yahooオークションで見つけたんですよ(笑)。ニューヨークでは音作りでいろいろ悩んだのに、そのバスドラムでは求める音がすぐに出ました(笑)。
収録曲
- Cold Audiences
- 21 years old
- Please, Please, Please
- No One Knows
- Meatpacking
- Steal her lips
- Alone in the dark
- Tornado
- sciolism
- Just leave me be
- Cherry blossoms
- El Dorado
COMEBACK MY DAUGHTERS緊急Ust生特番「カウントダウンSP」
配信日時:2013年7月3日(水)21:00~23:00(予定)
配信URL:CBMD0703 @ Ustream.TV - . 無料ライブ配信
ハッシュタグ:#cbmd_ust
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / 加藤ひさし(THE COLLECTORS)
MC:ネルソン・バビンコイ
「Mira Tour」
- 2013年9月5日(木)東京都 東京キネマ倶楽部(ワンマン)
- 2013年9月12日(木)愛知県 名古屋APOLLO THEATER(ワンマン)
- 2013年9月13日(金)大阪府 世界館(ワンマン)
- 2013年11月1日(金)宮城県 仙台CLUB JUNK BOX
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / FRONTIER BACKYARD - 2013年11月2日(土)岩手県 盛岡CLUB CHANGE
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / FRONTIER BACKYARD - 2013年11月9日(土)栃木県 宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-2
<出演者>
COMEBACK MY DAUGHTERS / FRONTIER BACKYARD
COMEBACK MY DAUGHTERS
(かむばっくまいどーたーず)
1998年結成。2000年8月に初音源となるアナログ盤「HOME OF THE SUN」を自主レーベルからリリースし、自主企画イベントも積極的に開催。2004年4月に1stアルバム「SPITTING KISSES」をリリースし、琴線に触れるメロディと強固なアンサンブルが幅広い層の支持を集める。2013年7月3日、古巣のPIZZA OF DEATH RECORDSを離れて日本コロムビアより通算5枚目のニューアルバム「Mira」を発表。メンバー脱退や加入を経て、現在は高本和英(Vo, G)、CHUN2(G)、戸川琢磨(B)、松原圭甫(Dr)の4名で活動している。