かわいらしさと本気度のギャップ

渡邊忍（ASPARAGUS）　僕はアイドルに対して免疫がないと言うか、アイドルに曲書くのって初めてだったんですけど、みんなはアイドルと仕事をしたことってあります？

松田“CHABE”岳二（LEARNERS）　僕はさくら学院（帰宅部 sleepiece「走れ正直者」）の編曲くらいで、曲を書いたことはないですね。

小野武正（KEYTALK、Alaska Jam）　僕は昔に矢野晶裕（→SCHOOL←）さんと共同でナト☆キャンというアイドルに1曲だけ楽曲提供をしたことがあります。アイドルに曲を書くのはそれ以来、4年ぶりですね。

4106xxx（SCAFULL KING、BRAZILIANSIZE）　俺はあゆみくりかまきの楽曲でレコーディングに参加させてもらってるし、ライブでもベースを弾かせてもらってるよ。でも曲を書くのはばってん少女隊が初めて。

渡邊　みんなそういう感じだったんだね。僕がばってん少女隊に会った頃ってまだ一番年下のメンバー（星野蒼良）が小6だったんですよ。若いのにすごくプロ志向で、かわいさも幼さももちろんあるけど、何より気合いの入り方が違って、自分を恥じましたね（笑）。で、「スターダストプロモーション100年に1組の逸材 ばってん少女隊、ダー！」って自己紹介をしてくれるじゃない？ あれに完璧にやられました。そういうのをお客さんにだけじゃなく、うちらみたいな人間にもしっかりやるところがすごいなって。

松田　僕もおんなじ感じだった。歌入れのときに初めて会ったんだけど、みんなかわいいしがんばってるしですごいなって。で、急にあの自己紹介されて、二日酔いの俺、ビビるみたいな（笑）。

小野　あはは（笑）。僕は「よかよかダンス」のリリースくらいのときに、山口の「WILD BUNCH FEST.」ってイベントで一緒になって初めてライブを観たんですよ。そのときはリーダーの上田理子ちゃんが体調崩して5人のステージだったんですけど、完全体じゃないにしても5人での勢いに圧倒されたのを覚えてます。

4106xxx　僕は「すぺしゃるでい」のMV撮影の現場で初めて会ったんです。みんなの本気度に僕も恥ずかしさを感じました。

差別化するための人選

渡邊　僕、武正の「よかよかダンス」を聴いたときに、転調しまくってて「今っぽいな」「これはアイドルソングを熟知した作り方してるな」と思ったんだよね。僕はアイドルソングを全然知らなかったから、このお話をもらってからアイドルソングをすごい勉強したんです。結局1周回って自分らしくやるしかねえってなったけど、最初ディグり始めたときはアイドルソングは進化がすごいって思った。

4106xxx　よくできてるもんね。

渡邊　そうそう。欲しいところにいい音が来るから興奮するんだよね。もうね、勉強しててアイドルソングが最強説あるなと思っちゃったもん（笑）。メロの乗せ方もエグいし、ほかのアーティストのオマージュの仕方がうまい。しかもムカつかないオマージュなんですよね。オマージュされた側もあれならうれしいと思いますよ。

松田　武正もThe Specialsのリフを入れてたもんね。

小野　はい、入れました（笑）。

渡邊　それをバンドがやると、「パクリじゃねえの？」ってなっちゃうけど、アイドルだと「何やってもオッス！ オッケー！」になっちゃう（笑）。

松田　わかる。嫌味がないんだよね。

渡邊　そうそう。あと今回のアルバムを聴いていて思ったんだけど、AKIRASTARさんみたいな作家さんはすごい。無駄がなく無駄を入れるのがさすがだなって。そういう方がいる中で、僕みたいな、いい意味でズレてるヤツを入れてもらえてうれしいなと思いましたね。スタッフさんの意向で、完璧さを壊しにきてるのかなって。

松田　アイドルって数も多いじゃない。僕らが呼ばれたのも、例えばスカとかロカビリーとか、ジャンルミュージックを入れることで、ほかと差別化していくためなのかなって思った。

小野　そうですね。グループのカラーが見えやすくなるから。

渡邊　しかも僕なんかは“鬼のスカ軍団”ではないじゃないですか。

4106xxx　鬼のスカ軍団って誰よ（笑）。

渡邊　例えばスカパラとかさ。チャーベくんもようちゃん（4106xxx）もスカを熟知してるから呼ばれる理由がわかるんだけど、僕なんてスチャスチャ裏打ちでギターを弾いたことが一番少ないギタリストだと思うし。そういう僕を起用していただけるっていうのは、「ど真ん中のスカじゃなくていいんです」って言ってくれた気がしたんですよね。で、完成したアルバムを聴かせていただいて、結果的にそれで合ってたんだって僕は解釈をしました。

博多弁の歌詞の魅力

──アルバムの中からご自身が作った曲についてそれぞれ語っていただきたいです。渡邊さんは「おっしょい！」と「but-show TiME」を手がけています。「おっしょい！」はメジャー1stシングルで、ある意味ばってん少女隊の1つのカラーを決める大きなポジションだったわけですよね。

渡邊　そうなんですよ。僕がもらったオーダーは「スカコア」「歌詞は博多弁」。その2つで「よろしくどうぞ」って（笑）。

一同　あはは（笑）。

渡邊　もうね「どうしよう？」って考えてたらお腹が痛くなっちゃって、だんだん口が臭くなっちゃって大変でしたよ（笑）。歌詞の語尾ってメロとの引っ掛かりが付くからけっこう大事なんです。そこが標準語じゃなく博多弁が入ることで、引っ掛けずらかったり、逆にやりやすかったりっていうのは勉強になりました。

松田　「おっしょい！」があることで、僕は歌詞書きやすかった。歌詞書くときにしのっぴーにメールしたよね。「『おっしょい！』の歌詞どうやって書いたの？」って。

渡邊　そうそう。僕はね、福岡の友達に聞いたり、自分でも調べたりしました。

松田　僕はそのアドバイスを受けて、まず標準語で書いて、博多の友達に語尾を全部直してもらった。

渡邊　そうだったんだ。僕はコテコテの博多弁を入れたかったので、あえて古めの方言も入れました。内容としては自己紹介的な歌詞なんですけど、僕から彼女たちに向けてのメッセージっていう感覚ありきで書いていきました。サビはこれから大変なこともあるだろうけど、それに負けないで6人でがんばっていってもらいたいっていう僕から彼女たちへの応援の気持ちが入っています。でも歌うのはばってん少女隊だから、聴く人からしたら自分への応援ソングになるんですよ。あとこれは余談なんですけど、最初にメンバーに会ったときに「この曲はみんなの応援ソングだから」って言おうと思ったけど、自己紹介の“ダー！”にやられ、しかもこんな40過ぎのおっさんがそんなこと言ったらただのいやらしい人かなと思ったので言わず、今ここで言いました（笑）。「but-show TiME」はライブのときに使うSEを作ってほしいというリクエストを受けて「おっしょい！」をオマージュして作ったんです。己で己のオマージュをしました（笑）。

──小野さんは2ndシングルの「よかよかダンス」を提供しています。フジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマとしても話題を集めたナンバーです。

小野　この曲は最初、とんこつラーメンの歌だったんですよ。「ダンスをするとお腹が空いて、お腹が空くとご飯がおいしくなる」って内容で。曲を渡してから「ドラゴンボール超」のタイアップが決まって、サビの「よかよかダンス」ってところだけを残して、歌詞をすべて書き換えました。博多弁の添削は大学の後輩の博多の子にしてもらって、「ダンスしてると笑顔になるね」って方向に変えたんです。

渡邊　とんこつラーメンの曲からこんなに「ドラゴンボール」に寄せた内容に変わるんだって、武正はすごいなと思ったね。あと、NARASAKIさんのアレンジもいいね。

小野　NARASAKIさんは、KEYTALKのメジャー2ndシングルをプロデュースしてもらってからずっとお世話になっていて。エンディングテーマ用にBPMを10くらい上げたんですけど、そこはNARASAKIさんと密にやりとりしました。あと、さっき話に出たThe Specialsのオマージュなんですけど、僕The Specialsが大好きで、2コードのオクターブのベースラインはいろんなところでオマージュしてるんです。「よかよかダンス」のお話をもらったときも、真っ先にそれをどう入れようか考えました（笑）。