ナタリー PowerPush - burn World DJ CONTEST 2013

このDJコンテストが日本を変える!☆Taku審査員インタビュー

「burn STUDIOS RESIDENCY」はエナジードリンク「burn」の主催によりスペイン・イビサ島で開催される世界規模のDJコンテスト。各国から凄腕DJたちがエントリーし、その中から選ばれた3人のDJにはイビサ屈指のクラブで夏の間レジデントDJを務めるというチャンスが与えられる。

そして今年、この大会に日本からもDJを送り込むべく日本代表決定戦「burn World DJ CONTEST 2013 supported by block.fm」が開催されることが決定。日本代表となった1名が参加できるイビサ島でのブートキャンプのメンターには、世界的DJであるAVICIIの参加も決まっている。

ナタリーではこれを受けて、日本戦の審査員を務める☆Taku Takahashi(Tachytelic、m-flo)にインタビューを実施し、大会への思いなどを語ってもらった。

取材・文 / 橋本尚平 撮影 / 上山陽介

「burn WORLD DJ CONTEST 2013 JAPAN FINAL」レポートはこちら!

大会が盛り上がることが成功なわけじゃない

──今回のDJコンテストはどういう経緯で開催されることになったんですか?

☆Taku Takahashi

もともとblock.fmで、若手DJの皆さんを多くの人に知ってもらう機会を作りたくてDJバトルを企画してたんです。で、よくクラブに遊びに来てくれる「burn」の担当者の方が、そのDJバトルを観て「すごく面白いね」「いつか一緒にこういうことをやりたいね」って言ってくれて。そんな中、本国のコカ・コーラ社から世界的なDJコンテストをやるって話があったんです。ちょうど「burn」と何かやろうって言っていたタイミングだし、「burn」はコカ・コーラ社の商品だし、日本の未来のためにも意義があるから絶対やったほうがいいと思って。

──気持ちが盛り上がってる最中に、まさにピッタリの話がきてよかったですね。

でもまだ「よかった」って言っちゃいけないです。大会をやって盛り上がることが成功じゃなくて、参加者たちの将来に何かプラスになるものを与えられたら成功だと思っています。若手がしっかり育って新しいスターが生まれるのは、クラブ業界にとってすごく重要なこと。そしてそれはクラブ業界だけでなく、広告代理店やさまざまな産業にとっても重要なことなんです。「カルチャーファースト、ビジネスセカンド」っていう発想もありますけど、どっちもファーストにしていかないといけないと思うんです。生活水準が下がるよりは国が潤うほうがいい。かといって、お金を優先してカルチャーを後回しにしてもなかなかうまくいきません。カルチャーへの投資をしっかりしたうえで最終的にみんながハッピーになるべき。それをほかの国は実践してるけど、まだ日本ではなかなかうまくいってません。

──そうですね。

そのために何より大事なのは、新しい人たちに機会を与えること。しかも日本のみならず外国でも活躍できるように。日本にはそれができる才能はいっぱいあふれてるのに、歯車が合ってない状況なんですよ。でも、そこをしっかりとやればいろんなことにプラスが生まれてくる。その子たちだけじゃなく自分らにも返ってくるし、さらに言えばダンスミュージックが好きじゃない人たちにも波及するすごく重要なことになると思うんです。

──日本から世界的なスターが現れることで、社会全体に影響があると。

これまで世界で戦える人が日本にいなかったわけではないんです。「海外で勝負する」って意識が薄かっただけで。でも今の若い子たちって才能がすごく成熟してきてるし、日本の素晴らしい先輩たちもいっぱい見てきているんで、しっかりやってくれるんじゃないかと思う。海外でリリースしている日本人にいろいろ会ってみて感じるのは、みんなアーティストとしてリスペクトされるところまではいくんですけど、それで大きな結果を出した人はまだほとんどいないなってこと。何をもって成功なのかは人によっていろいろ考え方がありますけど、海外で稼げる人がもっと出てきていいと思う。

世界的に見ても日本だけ乗り遅れている

──なるほど、そういう問題意識を持って企画したコンテストだったんですね。☆Takuさんは日本の現状を見て、次の世代が育っていないと感じているんですか?

というか、若い層が育たないと音楽業界自体がどんどんどんどん細くなっていっちゃいますからね。海外ではFATBOY SLIMが20年くらい第一線で活躍してて、何万人も集めて「BIG BEACH BOUTIQUE」とかいろんな国でやってますよね。でも、もう50歳を超えたおじさんがなんでいまだにそんな集客ができるか考えたことってあります? 彼はリリースもろくにしてないんですよ?

──してないですね(笑)。

☆Taku Takahashi

もちろん彼が素晴らしいからというのが一番の理由ですが、下のジェネレーションがしっかりと育っていて、その中でのメインキャストになっているというのが大きいと思うんです。次のFATBOY SLIMになりえてる人々が多くいるからこそ、FATBOY SLIMそのものがカルチャーの芯になっている。

──その結果、ベテランも若手も成功を手にすることができると。

クラブシーンはヨーロッパをはじめさまざまな国でものすごい巨大産業になってるんですが、世界的に見ても日本だけそうなってないんです。アジアの中でも日本だけ乗り遅れちゃってる。その責任は我々クリエイターにも、メディアにも、企業にもあると思います。でも確かなのは、他の国では成功しているんだから、日本にだってその可能性はあるってこと。

──もともと日本はテクノミュージックに関して先進国だったはずですしね。

そうですよね。それに僕は外国人のDJを日本に呼んだり、ラジオでお話したりして価値観をシェアする機会が多くあるんですが、皆さん口を揃えて「なんで日本のDJたちはこんなにうまいんだ?」って言うんですよ。

──へえー!

もったいないじゃないですか。そんなふうに言われる子たちがいっぱいいるのに、この国の中だけに留めておくだなんて。

バーン エナジードリンク(burn ENERGY DRINK)

「すべてを忘れるくらい心から何かに熱中する人たちを応援するクリエイティブエナジー飲料ブランド」をコンセプトにした日本コカ・コーラの製品。2013年3月11日にパッケージを一新し、黒の背景にミックスベリーを想起させる赤いグラデーションを上下に配した新デザインで、リニューアル発売された。3月13日からは新テレビCM「KEEP burnING」編のオンエアがスタート。世界規模のDJコンテスト「burn STUDIOS RESIDENCY」に日本代表として参加するDJを決定するための「burn World DJ CONTEST 2013 supported by block.fm」において、アイコンとなっているDJブースを備えた特別仕様車「burn エナジーモービル」が登場する。

「Isle of MTV Miyakojima」レポート

block.fm

block.fmは日本を代表するトップDJやアーティスト、そして世界を舞台に活躍する海外勢に加え、これからのシーンを担うべき若きDJやクリエイターらがさまざまな切り口でバラエティに富んだ音楽を発信する日本発のインターネットラジオメディア。新譜情報のほか、注目アーティストのインタビューやエクスクルーシブなDJミックス、チャート番組、そしてパーティ情報の紹介など、多種多様な番組を毎夜生放送している。

☆Taku Takahashi(Tachytelic, m-flo)
(たく たかはし)

DJ、プロデューサー。1998年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやリミックス制作を行う。「Incoming... TAKU Remix」でbeatportの音楽賞「beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS」を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。2010年にはアニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックも監修する。またソロ名義「THE SUITBOYS」としてミックスCD「AFTER 5 VOL.1」を発表。国内外のDJが最先端の音と情報を発信するインターネットラジオ「block.fm」を設立し、注目を集めている。2012年にはm-floとしての約5年ぶりのオリジナルアルバム「SQUARE ONE」を発表。さらに2013年3月にニューアルバム「NEVEN」をリリースした。


2013年6月7日更新