踏切を人力で表現するっていう
──ではここからは「Why don't you 超特急?」の話を。前作のEP「Just like 超特急」のリリースから約1年。今作には「さらに加速、進化していく超特急を詰め込んだ作品」というキャッチフレーズが掲げられています。超特急の加速と進化、この1年間さまざまな場面で感じることができましたが、皆さんの体感としてはいかがでしょう?
マサヒロ ありがたいことにInstagramのフォロワー数が増えたり、数字で変化を目の当たりにする機会はあるんですが、実感で言うとあまりないのが正直なところかもしれないです。超特急に入ってから、自分のやることは何も変わっていないし。ただ、そんな中で変化を一番感じられるのはライブですね。2桁号車(シューヤ、マサヒロ、アロハ、ハル)が入った2022年の年末ツアーではアリーナで2公演をやらせてもらって、次の年が4公演、今回やった「Joker」ツアーが8公演。そして春夏のツアーもアリーナの規模になって。
リョウガ そうだね。僕も同じく実感はあまりないんですが、テレビ出演や個人の活動でグループが多くの人の目に留まる機会が増えていることは感じていて。うん。そうやって機会が増えたことで、例えば「Steal a Kiss」(「Just like 超特急」リード曲)でカッコいい印象を与えておいたその次に「ジュブナイラー」(「Just like 超特急」収録曲)で大暴れして、「え、同じグループなの?」とギャップに驚いてもらえたらいいよね、みたいな……そう考えていた僕らの目的は実行できたんじゃないかな?くらいの感じですね。
──多くの人の目に触れる機会が増えたことで、その都度違った姿を見せられるようになり、「超特急ってこんなに多彩な表現ができるグループなんだ」という魅力が周知されつつある感じは確かにありますね。新作EPの収録曲も本当にジャンルレスで……まず1曲目の「踊ライナー」は、TeddyLoidさんとtepeさん作曲、tepeさん作詞のパワフルなエレクトロダンスナンバーです。曲の入りから驚かされましたが、冒頭の電車の通過音はタカシさんの声ですか?
タカシ そうです。「ヒューン」という、電車の走行音を連想させるような歌い方ですね。
──そこから続けざまにシューヤさんのハイトーンで「カンカンカンカンカン!」と踏切の警告音が聞こえてきて。
タカシ はい。踏切の音を人力で表現するっていう。
リョウガ なんなんだよ(笑)。
タカシ これはプロデューサー(新井弘毅)さんのアイデアで。当初はなかったものなんです。
リョウガ そうなんだ。ぶっ飛んでんなあ(笑)。
タカシ 「踊ライナー」は、本当にキャラクターの作りがいがある曲でした。作曲と編曲をしてくださったTeddyLoidさんはAdoさんの「踊」の作曲者でもありますし、「これは思いっ切り歌わないと」という思いもあって。“味付け”をいっぱいしていって、濃くなりすぎちゃったら薄めて……みたいなレコーディング作業でした。
──現場でボーカルのアイデアをどんどん試していった感じ。
タカシ そうですね。事前に自分の中で考えた“200%のプラン”を実際に試して、そこから減らしたり変えたり。僕は歌入れのときにいろんなキャラクターを持っていくのが好きだから、すごくやりがいがあったし、ライブで披露するのも楽しみな曲です。
──レコーディングを進める中で、自分の表現が特にハマったな、盛り上がったなと感じたパートはありますか?
タカシ 2サビ前の「騒げ走馬灯史上無敵の記憶がNOW NOW NOW!!!」かな。レコーディングではAメロ、Bメロ、サビと頭から順々に録っていくことが多いんですが、これは僕の中の“あるある”で、なぜかわからないけど2Aまで進んだあたりから“つかんだ”感覚になるんです。だから、2Bの終わりが一番気持ちが高揚したというか。ギアがぐんぐん上がっていって、気持ちが高まった中で歌った記憶がありますね。その結果「2番の仕上がりが最高だから、1コーラス目を録り直したいです」みたいなことも、たまに起きる(笑)。
リョウガ へえー、そうなんだ。
僕も歌うのは好きなんで
──「踊ライナー」はアロハさんのラップパートがあるのも特徴的ですね。
マサヒロ この曲はアロハのセンター曲だからですね。
タカシ アロはラップが好きで、実際うまいしね。こういう場所でやるのもアリなんじゃないか?ということだと思います。
マサヒロ ホントにうまいですよね。いい声してます。もともと歌えるっていうのもあるけど向いてると思うから、今後も増えるんじゃないですか? アロハがラップで参加する曲。
──歌がうまいダンサーメンバーはアロハさんに限らずで、ハルさんも上手ですよね。
ハル 僕も歌うのは好きなんで。(スタッフに向けて)いつかぜひ。
スタッフ かしこまりました。
リョウガ かしこまった(笑)。
──歌詞に関して、リョウガさんはよく「超特急の曲は一見ハチャメチャでも実はいいことを言ってる」とおっしゃいますが、この曲も例に漏れずでしょうか?
リョウガ 「踊ライナー」ですか? 「踊ライナー」はまだちょっと、めちゃくちゃなイメージしかないです(笑)。どんな曲なんですか? この曲。
タカシ なんで逆に聞いとるんや(笑)。
──いや、今の超特急の勢いがそのまま現れたような曲だなと思いながら聴いていました。
リョウガ なるほど、今の僕たちの勢いをね。そういうことかあ。
──特にラストの「まだ未来光ってんだHead Up Bullet」という終わり方が、メッセージ性含めカッコよくてグッときました。
タカシ うん、そうですね。
マサヒロ 感じ取ってもらったものが正解ですから。
リョウガ 1番のこことか意味わかんないですけどね。「ニンニン二度寝しちゃって乙」「ササ皿洗い超めんどぅ」……?
タカシ 作詞のtepeさんはボーカロイドの曲をたくさん作られている方だから、語呂遊びが多いんよ。それも楽しかったです。
──歌ったときの語感がいいですね。
タカシ そう、語感がいいからアクセントも付けやすくて。すごく楽しかったです。
──ちなみにパフォーマンスはどんな感じになりそうですか?
マサヒロ まだ内容は決まっていなくて。でもコレオはKAITAくんにお願いします。今回のEPでは「メタルなかよし」もKAITAくんにお願いしたんですけど……。
──あとでしっかりお話を聞ければと思いますが、「メタルなかよし」のコレオがKAITAさんだと知ったときは驚きました。
マサヒロ ですよね。「踊ライナー」はカッコいい曲なので、いつも通りのイケてるKAITAくんコレオが見られると思います。今頃きっと、腕をブンブン回してくれているはずです(笑)。
超特急に“招待”するリード曲
──2曲目がリード曲の「キャラメルハート」です。華やかなサウンドと洒脱なメロディが印象的なポップスですが、この曲のような純然たるラブソングがリードトラックになるのは珍しい気がします。
タカシ 普段の僕らの作品だったらリードになりづらい曲ですよね。これは個人的な見解なんですが、超特急は音楽番組やいろんなメディアに少しずつ進出できているけど、まだちょっとおちゃらけたパフォーマンスや変顔みたいなイメージが先行している部分が大きいのかなと。そういったイメージで“食わず嫌い”をされている方も少なからずいらっしゃるのかな?と感じていて。「キャラメルハート」は超特急のことを詳しく知らない人でも入りやすい、聴いていて楽しく軽やかな気持ちになる曲だから、この曲をリードとして届けることで「超特急してみない?」と……まさに「Why don't you 超特急?」と“招待”している立ち位置なのかなと思っています。で、「超特急の曲いいなあ。次の曲も聴いてみようか」と進んだ先の3曲目「メタルなかよし」で深みに落とすという……(笑)。
ハル 僕この曲、このEPの中で一番好きです! 気付いたら口ずさんじゃいますし、歌いやすさもあって、カラオケで普通に歌いたいレベルでお気に入りです。メロディも歌詞も1度聴いたら忘れられない曲なので、みんなにもいっぱいカラオケで歌ってほしいなと思ってます。
リョウガ (深みのある声で)あとはやっぱり、この曲はタクヤのセリフが推しポイントですね、ええ。あえて2番のAメロに突然出てくるのが。
ハル いいですよね。
リョウガ しかも何? あの言い方。
ハル 甘い感じね。
マサヒロ 振付も、そこはタクヤくんがちゃんとフィーチャーされてるんですよ。
リョウガ (落ち着いたトーンで)そうね。やっぱそこじゃないですか? ポイントは……。
ハル さっきからそのテンション何?(笑)
リョウガ やっぱ“キャラメル”だから。ほろ苦くいこうかなと。
挑戦であり信頼
──この曲の振付はどなたが担当されたんですか?
リョウガ えんどぅさんですね。
──お! そうなんですね。
ハル 「お!」ってなりますよね。僕らも最初に聞いたとき、そうなりました。「メタルなかよし」といい、今回は曲と振付師さんの組み合わせに意外性があると思うんですけど、そこにはユーキくんの考えがあって。
リョウガ これは振付の裏テーマと言えるものかもしれないのですが、今回は“逆”でお願いしてみようと。
──なるほど。曲のイメージに合ったおなじみの振付師さんではない方にお願いしてみたと。
リョウガ そうなんです。あえて“逆”にすることで、新しい化学反応を期待するという。
ハル これは挑戦であり、えんどぅさんやKAITAくんへの信頼でもあります。
タカシ でも面白いです。ブラスやストリングスが入っているタイプのバンドサウンドとえんどぅさんのコレオって、意外と親和性が高いんですよ。これは経験上。
リョウガ そうそうそう。
ハル 「Lesson II」とかもそうですよね。自然で踊りやすい。
マサヒロ ホントにそう。めっちゃいい。
タカシ えんどぅさんは、何っ回も聞かないとわからないような細かい音まで拾って振りを付けるから。
──バックトラックが複雑かつ有機的なサウンドになればなるほど、真価が発揮されるんですね。
マサヒロ 1番のAメロからかなりがっつり、見入ってしまうくらいの振り数があって。途中には「Lesson II」の2番のように、少人数で魅せる場面もあるんです。タクヤくんとハルをしっかりセンターで見せつつ、その周りに7人がいるからこそよりよく見える構成になっているので見応えがあると思います。すごくキャッチーな振付ですし、「Sweet sweet」と歌うところなんかはみんなもマネして、一緒に盛り上がれるんじゃないかなって。
──「キャラメルハート」はタクヤさんとハルさんがセンターなんですね。
マサヒロ はい。基本ずっと2人が真ん中にいる感じです。あと、この曲はミュージックビデオとライブパフォーマンスの振付で、立ち位置が全然違うんですよ。MVではMVだけの特別なパフォーマンス、ライブではライブだけの特別なパフォーマンスになっているので、そこも楽しんでもらえたらと思います。
愛が巨人になるんです
──MVについても聞かせていただけますか?
マサヒロ この曲のMVは“恋してるメンズたち”って感じっすよね。
リョウガ そうね。ストーリー性のある感じで。
ハル ちゃんと撮りました。
タカシ ざっくりとストーリーを説明すると、僕たちは街のいろんな場所でそれぞれ過ごしているんですが、ある1人の女性にみんなが恋するんです。で、その女性をみんなが追いかけます。追いかけて、でも思いは届かなくて、9人は集合します。そこで「みんなの愛を1つにしよう」と。すると、でっかいハートができる。でっかいハートができると、それがやがて、9人の顔が重なった巨人になる。
マサヒロ もう、ここから意味がわからないです(笑)。
タカシ 愛が巨人になるんです。
ハル よいしょー!
リョウガ タカシが今日見た夢の話とかじゃないですよ?
タカシ 「超特急が巨人になります」というストーリーですね。
リョウガ なんで? なんで巨人作った? マジで(笑)。
──おふざけなしでこのストーリーですか?
リョウガ おふざけはしてないですね。
タカシ おふざけは「メタルなかよし」のMVで完全に消化しちゃったので(笑)。
ハル ちょっとだけファンタジーというか、アニメっぽいというか。なので、キャラクターテイストの役作りをしました。シュールさはあります。
──公開が楽しみです。撮影はいかがでしたか?
リョウガ 今回は、福島に泊まり込みで行ってきましたね。
マサヒロ 結婚式場で撮りました。
タカシ ダンスシーンの撮影のときがびっくりするほど寒くて、東北を感じました(笑)。
マサヒロ ラストのサビのシーンだけ夜に撮ったので冷えがすごくて。でも、ライトアップしてすごくきれいでしたよね。
ハル 楽しかったです。完成が楽しみですね。
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お風呂に浸かりながら「デスボ やり方」とか調べて