音楽ナタリー Power Push - 「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」植松伸夫インタビュー&東京公演ライブレポート

ゲーム音楽をもっと自由に、もっと楽しく

母校の甲子園を観ている感じ

──植松さんにとって「ファイナルファンタジー」は今どういう存在ですか?

植松伸夫

そうですねえ。強いて言うなら母校の野球部が甲子園でどこまでやれるかを観ている感じですね(笑)。スクウェア(現スクウェア・エニックス)は僕の母校みたいなものなんです。音楽の勉強をしていたわけでもない僕を入れてくれて、自由に音楽を作らせてもらったわけですから。僕は最近の「ファイナルファンタジー」の曲は書いていないので、今更何をするわけでもないんですけど、「がんばれ!」とか叱咤激励を心の中で送りつつやっぱり気にしている、みたいな。

──来年は「ファイナルファンタジー」が誕生してから30周年のアニバーサリーイヤーですから、“卒業生”的な立ち位置にいる植松さんにもいろいろと動きがあるのではないですか?

スクエニさんとは「何かでっかいことをやりたいね」って話しているところなんだけど、具体的にはまだ何も決まっていませんね(笑)。これまで何度かやってきた海外公演をもう1度やりたいし、30周年だからこれまでとは違った曲を演奏してもらいたいなあとか、今は構想を練ってるところです。

植松伸夫

──そういえば先ほどスタッフの方に「BRA★BRA」コンサートのツアー後半では、披露する曲が増えるという話を伺いました。

そうなんですよ! 2度目の東京公演も控えていますし、人によってはすべてのコンサートに来てくれる人もいますからね。そういう人にも楽しんでもらいたいからなるべく新しいものを見せてあげたいんです。もちろん会場に足を運んだことのないお客さんにも、1度この「BRA★BRA」を体験してみてほしいですね。プロの演奏を堪能できるのはもちろん、楽器を持ってくればステージにも上がれるし、きっと経験したことのないコンサートが繰り広げられているはずですから。なんとなく知識で知っているのと、体で実際に感じたものは全然違いますから、まずは来てみて、どんなものか体験してもらいたいです。その上で積極的に楽しんでもらえたら、至福の2時間を味わえると思います。

5月7日(土)東京・東京文化会館 大ホール 昼公演 ライブレポート

5月7日に東京・東京文化会館 大ホールにて、全国ツアー「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」の東京公演が実施された。本稿ではこの日のコンサートのうち、昼公演の模様をレポートする。

左から山下まみ、植松伸夫。

コンサートは、本公演の制作総指揮を担当した植松伸夫とツアーのMCを務める山下まみの2人による前説からスタート。植松は、コンサート中に率先して「ブラボー!」と声を上げる“ブラボー係”を観客の中から指名するため、客席から立候補者を募る。彼は客席の通路を右へ左へ駆けて行き、ブラボー係の印である「ブラボーバッジ」を観客に手渡していた。

シエナ・ウインド・オーケストラのメンバーがステージに現れ準備が整ったところで、彼らは「ファイナルファンタジー」シリーズのバトルソングをつないだ「FFバトル2メドレー」を演奏し始める。シリーズおなじみの「勝利のファンファーレ」のフレーズでメドレーが締めくくられると、客席からは盛大な「ブラボー!」の声が上がった。その後はユーフォニアムのソロからスタートする「星降る峡谷」、木管楽器を中心にしたサウンドが印象的な「FFI / II / III フィールド・メドレー」など、「FF」シリーズの新旧楽曲が矢継ぎ早に届けられ、ゲームファンの心をわしづかみにした。

5月7日に行われた「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」東京・東京文化会館 大ホール公演の様子。

「FFモーグリのテーマ」の演奏前にはティンパニ奏者の荻原松美が“モーグリおじさん”として登場し、オーディエンスにボディパーカッションを指導。演奏中には指揮者の栗田博文が観客に向けて指揮棒を振り、会場内には息の合ったボディパーカッションの音が響いた。「ゴールドソーサー」の演奏では吹奏楽団員全員が楽器をリコーダーに持ち替えて、軽快なメロディをリコーダーの音色だけで届ける。またコンサート開催前に観客の参加が呼びかけられていた「FFメインテーマ」では、客席の有志たちがリコーダーで吹奏楽団の演奏に参加。一体感のあるパフォーマンスが展開された。

5月7日に行われた「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」東京・東京文化会館 大ホール公演の様子。 5月7日に行われた「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」東京・東京文化会館 大ホール公演の様子。 5月7日に行われた「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」東京・東京文化会館 大ホール公演の様子。

コンサート後半には小編成で「魔導士ケフカ」「ザナルカンドにて」「Fragments of Memories」の3曲が披露された。またコンサート前に集計していた「『FF』シリーズでの思い出の曲」にまつわるアンケートを植松と山下が読み上げるコーナーでは、なぜか失恋のエピソードばかりが集まってしまい、植松は複雑な表情を浮かべながらもアンケート回答者たちにエールを送っていた。終盤には「シーモアバトル」「片翼の天使」と人気のバトルソング2曲が届けられ、コンサート本編は幕を閉じた。

アンコールの「マンボ de チョコボ」演奏前には、会場に楽器を持ち寄ったオーディエンスが植松の呼びかけに応えてステージに上がる。金管楽器や木管楽器のほか、物販で配布されていた楽器のオモチャなどを手にした観客がステージ上にそろうと「マンボ de チョコボ」の演奏がスタート。客席のオーディエンスも手拍子で演奏に参加し、会場内が一丸となったところで、コンサートは大団円を迎えた。

5月7日に行われた「BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra」東京・東京文化会館 大ホール公演の様子。
BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2016 with Siena Wind Orchestra ツアー情報(※終了分は割愛)
  • 2016年6月4日(土)東京都 東京文化会館 大ホール
  • 2016年6月5日(日)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2016年6月11日(土)秋田県 秋田県民会館
  • 2016年6月12日(日)青森県 リンクステーションホール青森
  • 2016年6月18日(土)香川県 レクザムホール
  • 2016年6月19日(日)高知県 高知県立県民文化ホール オレンジホール
  • 2016年6月24日(金)北海道 札幌コンサートホールKitara 大ホール
  • 2016年6月26日(日)北海道 函館市民会館
  • 2016年7月3日(日)石川県 本多の森ホール
  • 2016年7月15日(金)台湾 Taiwan National Concert Hall
  • 2016年7月18日(月・祝)福島県 郡山市民文化センター 大ホール
  • 2016年7月23日(土)兵庫県 神戸国際会館
  • 2016年7月30日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
植松伸夫(ウエマツノブオ)

作曲家。ロールプレインゲーム「ファイナルファンタジー」シリーズをはじめ、数多くのゲーム音楽を手がける。2001年5月発行の「Time」誌にて"Time 100: The Next Wave - Music"の音楽における革新者の1人として紹介されるなど、世界的な評価を獲得している。2011年からは自身がリーダーを務めるバンド・EARTHBOUND PAPASを始動。「ファイナルファンタジー」をはじめとしたゲーム音楽のオーケストラコンサートのみならず、バンドとしてもワールドツアーを開催している。