僕の課題
──「ラックマン」「LONELY HOPE」「クライマー」は前作に続いて、jamさんとの共作詞ですね。
jamさんが僕の歌詞を「成長したね」って褒めてくれたのがうれしかったです。視点や角度の変え方みたいなものを前作以降一緒に作業する中で自分なりに感じ取らせてもらってきたので、歌詞を書くのがどんどん楽しくなってるんですよね。「ラックマン」なら、「君が感じた気持ちは加工しないでいいから」も写真の修正と掛けてたり、「また他人の幸福を羨んでハートつけた」でSNSをイメージさせたり。そういう表現を通して、伝えたいことをうまく伝えられるようになってきた気がします。
──jamさんのアドバイスで印象に残ってるものはありますか?
「クライマー」はjamさんのおかげで歌詞がガラッと変わりましたね。メジャーのフィールドで戦っていく覚悟を歌った曲なんですけど、もともとのタイトルが「予感」で。最初はすごくストレートな言葉で表現してて、情景描写もほとんどなかったんですよ。そこにjamさんが「情景描写を1つ入れようよ」「山を登る感覚で考えるのはどう?」と提案してくれて。
──発想の転換というか。
そうそう。これからメジャーの世界で1つずつ確実にチャンスをつかんでいくということが、山を1歩ずつ登っていく感覚に似ていて、すごくいい視点だなと思いました。あと、jamさんが面白いのはヒント以外は何も教えてくれないんです。肝心なところは僕に考えさせるのが刺激的で、やっぱりとても勉強になりますね。実際に歌詞を書き直してみたら、すごく伝わりやすい曲になったし。伝えたい内容はそのままなのに、1つ映像が浮かぶテーマを入れるだけでこんなに聞こえ方が変わるのかと。
──ちなみに冨塚さんの声質からBOYS END SWING GIRLはさわやかな印象を持たれがちだと思うんですけど、そこに対するコンプレックスみたいなものはありますか? 今作は孤独がテーマなので、従来のイメージを払拭したいような部分も出ていた気がして。
今すごく痛いところを突かれてるんですが、めちゃくちゃコンプレックスがあるんですよ。どんなに「いいね」と褒めてもらおうが、童顔で声がさわやかなのは自分にとってはマイナスなんですよね。ひねくれているからなのか、なぜかそう思っちゃう。そこは僕の課題というか、ちゃんと認めなくちゃいけない側面なんでしょうけど。
──課題と言うほどの感覚なんですね。
そうなんです(笑)。どうしても「本当の自分を見てくれよ」ってなっちゃうんですよね。「さわやか」という言葉は怪物やバケモノくらいに思っていて、気を抜くとそれに食い殺されちゃうみたいな。
──その感じは歌詞にもじわっと出ていると思います。
僕はメッセージを発したいので、「表面的なところじゃなくて深層にたどり着いてくれ」という思いが強いんでしょうね。「ラックマン」「LONELY HOPE」「毒を喰らわば」と頭からダークな曲を並べたのは、これまでとは違う印象を与えたい気持ちも入っているんです。
──心の奥底に抱えたグツグツした思い、泥臭さや骨っぽさこそ、BOYS END SWING GIRLの魅力ですからね。
そこをもっと伝えていきたいですね。「実はこういうメッセージを発してるんだな」とか、今わかって話してもらえてるのが本当にうれしいんです。
──例えば「LONELY HOPE」の「『君は大丈夫だよ』なんて耳につく流行歌が僕をひとりなんだと気づかせようとする」という歌詞は、バンドの性格がわかりやすく出ている箇所だなと思いました。
わー、確かに(笑)。こういう言い回しはさわやかな人だったらしないですよね。繰り返しになりますけど、深い部分をちゃんと読み取ってもらってお話できるのがすごくうれしいです。楽しくてしょうがない!
「人生には負けはない」
──アレンジ面で気に入ってるポイントも教えてください。
「ラックマン」と「LONELY HOPE」は永野大輔(CHOCOLATE MIX)さんと一緒にアレンジしたんですけど、アコギをうまく使ってカッコよく仕上げられましたね。「ラックマン」はイントロで逆再生やオリエンタルなギターを入れて、インドっぽいというか、The Beatlesの「Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band」の雰囲気も感じるようなミディアムバラードにできたり。「LONELY HOPE」はミシェル・ブランチとか、2000年代前半のUSのシンガーソングライターがアコギを弾いてるイメージで作りました。
──白澤さんが編曲した「毒を喰らわば」はどうですか?
「こんなふうに作ってくるんだ」「やっぱり面白いな」と思いましたね。もともとはギターロックな感じでバンドで合わせてた曲なんですけど、白澤のアレンジがアルバムに1曲欲しかったから、「好きに作り直しちゃってよ」って任せたんです。そしたら、ガラッと変わったものになりました。デモのギターも白澤が作ってきたんで、僕と隼じゃ絶対に出てこないノリがあったり。間奏もLed ZeppelinとかRed Hot Chili Peppersとか、いろんな要素が混ざったようなテイストでいいですよね。
──jamさんのヒントで歌詞が変わった「クライマー」のアレンジも面白いです。
特にドラムがお気に入りですね。昇平じゃなかったらこの感じは出せないんじゃないかな。僕が作ったデモではシンプルな8ビートだったんですけど、昇平が持ってきたドラムはキックの位置を含めて広がりのあるアレンジになってて。最初は「どうなんだろう……」と思ったものの、合わせてみたらすごくハマってびっくりしました。
──隼さんのギターフレーズも随所で冴えわたってますね。
隼の演奏が一番輝いてるのは、やっぱり「スタンドアローン」かな。特に好きな曲だと思うし、音もこだわって作ってました。メロディアスな歌えるギターソロも最高ですよね。
──インディーズ時代の「スノウドロップ」を収録した理由は?
この曲は作った当初から「冬にリリースするアルバムに入れたい」という話をしてたんですよ。今回はリミックスバージョンになってて、ピアノの音を少し変えたり、打ち込みを足したりしてるので、冬の季節に改めて聴いてみてほしいです。
──いい作品ができましたね。
本当にそう思います。歌詞にしてもサウンドにしても新しい面が打ち出せましたし、ミニアルバムながらもスケールの大きい1枚ができました。あと、「スタンドアローン」の最後で「人生には負けはない」って歌ってるんですけど、やっぱりそう言い続けることが大事なんじゃないかな。だからこそ、この新作が生まれたわけだし。当時は強がりだったかもしれない「人生には負けはない 泣け、笑うために」という言葉に、今すごく勇気をもらえてたりしますから。
──1月26日にはリリースを記念した、地元(千葉・成田市文化芸術センター スカイタウンホール)での初のホールワンマンも控えています。
ホールはずっとやってみたかったし、しかも地元・成田での開催とあって、本当に念願のワンマンですね。ホールコンサートでしかやれないことを考えてるので、ぜひ遊びに来てほしいです! ずっと地元を大切に活動してきたBOYS END SWING GIRLらしい、スペシャルな日にできればと思ってます。
──そういえば、うなりくん(千葉県成田市の公式キャラクター)のテーマソングも制作されるとか。
そうなんですよ(笑)。これはバンドじゃなくてソロなんですけど、ちょうど昨日今日でデモが作り終わったところで、めっちゃいいのができたので、ゆるキャラ・うなりくんのテーマソングも楽しみにしててください!