BE:FIRST、ジャンルレスな自分たちを音楽で証明する1stアルバム完成|「BE:1」全曲解説インタビュー

この1年間、BE:FIRSTが音楽界にもたらした衝撃はとても大きいものだった。

2021年にSKY-HIが「日本の音楽界を変えたい」と私費1億円を投じて行ったオーディション「THE FIRST」。そこから選ばれた7人で構成されたダンス&ボーカルグループBE:FIRSTは輝かしい才能と音楽への深い愛情を発揮し、リリースする楽曲は軒並みヒットチャートの上位に。この夏は大型フェスに引っ張りだこで、イギリスのDJプロデューサー、ジョナス・ブルーとのコラボ楽曲を披露するなど、すでにワールドワイドに活躍する未来の片鱗も見せている。

そんな彼らがついに完成させた1stアルバムが「BE:1」だ。プレデビュー曲「Shining One」やデビュー曲「Gifted.」、ヒットを記録し続けている「Bye-Good-Bye」などの既発曲はもちろん、初のユニット曲を含む新曲8曲が収められた、結成からわずか1年とは思えないほど充実の1枚に仕上がっている。音楽ナタリーでは記念すべきこの1stアルバムの音楽的魅力をしっかりと掘り下げるべく、メンバー全員に全曲解説をしてもらった。ヒップホップ、R&B、ロック、ポップス……ジャンルレスに広がる彼らの音楽世界を、本人たちの言葉とともに堪能してほしい。また特集の最後には、アルバムに参加したプロデューサー陣からのコメントも掲載している。

取材・文 / 岸野恵加撮影 / 曽我美芽

BE:FIRSTメンバーによるアルバム全曲解説

1年前は想像もできなかった今

──グループ結成とプレデビューからもうすぐ1年が経とうとしています(取材は8月初頭に実施)。わずか1年とは思えないほど、素晴らしい楽曲を次々に発表して、輝かしい記録を残してきた大充実の年でしたね。

SOTA こんなふうになるとは1年前は想像していなかったというか。こんなにたくさんのことが経験できるようになんて、思ってもみなかったです。

SHUNTO 振り返るとすごく早い1年だったよね。毎日違うことをしているから長いようにも感じるけど、短かった気もする。

──ライブイベントへの出演も精力的に行いつつ、4月からは冠バラエティ番組「BE:FIRST TV」の放送が始まったりと活動の幅も広がり、多忙さは増す一方だったと思いますが、アルバムの制作はいつ頃始まったんでしょうか?

LEO けっこう近々でしたね。5月末くらいかな?

MANATO SKY-HIさんの頭の中にはもっと前からあったのかもしれないですけど、僕たちが動き出したのはそのくらいでした。

RYOKI そこからかなりぎゅうぎゅう詰めで録った感覚があります。

SOTA 新曲8曲のレコーディングのスパンの短さは半端なかったですね(笑)。

LEO 1週間に1曲は必ず録っていたようなスピード感でした。

──アルバムの制作にあたって、コンセプトやテーマはありましたか?

RYOKI コンセプトはなかったですね。ただ、BE:FIRSTはジャンルレスなグループだとよく言っていて、その言葉通り僕たち7人の音楽性やポテンシャル、どんな角度でも取り組めるような柔軟性を最大限に証明できるアルバムになっていると思います。そんな作品をこの段階で作らせていただけるのはすごくありがたいよね、と、メンバーみんなで話していました。

──“ジャンルレス”という言葉が、このアルバムを初めて聴かせていただいたときに抱いた感覚にぴったりと重なりました。本当に振れ幅の広い1枚だなと感じたんです。では1曲ずつ、じっくりとお話を聞かせてください。

01. BF is...

作詞:SOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、RYOKI、LEO、SKY-HI
作曲:Ryosuke "Dr.R" Sakai、SOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、RYOKI、LEO、SKY-HI
プロデュース:Ryosuke "Dr.R" Sakai

──冒頭を飾るのは、アンセム感あるロックナンバー「BF is...」です。この曲は4月30日に「VIVA LA ROCK 2022」のステージで突如披露されて話題になりましたが、現時点ではそれ以降ライブでやっていないんですよね?

MANATO パフォーマンスしたのはそのときだけですね。

JUNON 「VIVA LA ROCK」でパフォーマンスするために作った曲です。

──明確にそうした目的で生まれたナンバーだったんですね。なぜ制作することに?

JUNON 「VIVA LA ROCK」にダンス&ボーカルのボーイズグループが出させていただけるのは僕たちが初めてだったそうで、また僕たち自身もロックフェスに出るのが初めてだったんです。なので、僕たちを全然知らないお客さんの心にも刺さるような曲を作りたいというところから始まりました。

JUNON

JUNON

RYOKI BE:FIRSTを知らない人たちを惹き付けるために、1発目に攻撃力の高い楽曲を提示したかったんです。「アイドルみたいな若いボーイズグループが出てきたな」で終わらせず、「なんか楽曲カッコいいな」「初手からこんな曲ブチかましてくるんだ?」って思わせるのが狙いだったし、まっすぐ刺すリリックを全員で書いて“攻め100”の姿勢を見せる曲ですね。

──なるほど。「ロックのフィールドに切り込んでいくぞ」という気概が込められていたんですね。作詞にはSKY-HIさんと皆さんの名前がクレジットされています。

SOTA 自己紹介みたいな曲ですね。ラフなトラックが先にあって、すでにフックもできていた状態から、自分のパートのヴァースをそれぞれで考えました。

LEO SKY-HIさんと共作した人もいれば、自分だけで書いた人もいます。

──歌詞も歌唱も、全員完全に攻めのモードですよね。特に気に入っているヴァースはありますか?

SHUNTO 自分のところで言うと「Winner, loser 正義、悪じゃない」の言い回しは好きですね。自分はこのメンバーに出会って「勝ち負けが正義や悪ではない」ということをしっかり実感するようになったので、SKY-HIさんに相談しつつ、そういう自分の感覚も交えて書いていきました。キー的に張って出すところなので、自分が歌うときにも作ったときのその感覚を思い出します。

SHUNTO

SHUNTO

──「VIVA LA ROCK」はいわゆるアウェーのステージだったかと思いますが、実際に立ってみてどうでしたか?

RYUHEI 本当にたくさんのお客さんがいて緊張していたんですけど、この曲を1曲目に持ってこれてよかったなと思いました。このメンバーと一緒にステージでパフォーマンスしていることが誇らしく思えたというか。みんなのヴァースを聴いていて勇気付けられるんです。

02. Gifted.

作詞:SKY-HI
作曲:Ryosuke "Dr.R" Sakai、Carlo Redl、SKY-HI
プロデュース:Ryosuke "Dr.R" Sakai

──キャッチーなプレデビュー曲「Shining One」の真逆と言っても過言ではない重厚な楽曲「Gifted.」でデビューを飾ることは、受け止めるリスナー側にも驚きがありましたし、皆さんもリリース当時「最初はびっくりした」とお話しされていましたよね。でもデビューから9カ月が経って、この曲がデビュー曲であることの意義を感じる機会も多いんじゃないですか?

MANATO アルバムをみんなで通して聴いたときに、「やっぱり『Gifted.』は安心するね」と話していました。これがデビュー曲でよかったと心から思っていますし、そういう曲があることはすごく心強いですね。自分たち的には「Shining One」のあとにこれを出せたからこそすごく意味があると感じていますし、デビューじゃないタイミングで出していたらまた違った感覚を持っていたんだろうなと思います。

SOTA この曲は一番カッコいいですね。アルバムの中には「R&Bっぽい」とか「ヒップホップ寄り」とかいろんなジャンルの曲があるけど、「一番BE:FIRSTらしい音楽って何?」って聞かれたら「Gifted.」になるなって。僕たちの音楽が一定のジャンルに属さないというのは、この曲が土台にあるというか。

SOTA

SOTA

──ある意味、実家感がある?

SOTA はい。これが育った故郷です(笑)。

──この曲は歌割りをメンバーで決めたそうですね。

LEO 「Gifted.」はみんなで決めたね。

MANATO 俺だけリモートでミーティングに参加したときだよね。

RYOKI ああ、盲腸のときだっけ?

MANATO いや、ワクチン打ったとき。盲腸なったことないわ!(笑)

RYOKI そっか、ごめんごめん(笑)。

MANATO 歌詞をSKY-HIさんとみんなで見ながら、「ここは誰々っぽいよね」「ここは自分が歌いたい」って意見を出して決めました。自分の「指先触れる度に溶ける命」というのも、希望を出して決まったパートです。

MANATO

MANATO

──パート分けは、そういうふうにほかの曲でも同じように自分たちでやるんですか?

RYOKI ほぼ毎回やるよね。SKY-HIさんの頭の中にはだいたいのイメージがあるみたいなんですけど、それを伏せて「どこを歌いたい?」って聞いてくれたりします。曲によってはSKY-HIさんのイメージ通りに進めることもありますけど、シングル曲は任せてくれることが多いです。

──「Gifted.」は世界観をしっかり表現することが必要とされる曲ですよね。「BE:FIRST TV」ではINIさんがカバーパフォーマンスを披露したり、YouTubeなどでもさまざまな方がカバーしたりしていますが、そうしたほかの方の表現を見て改めて「これが自分たちの個性なんだな」と実感した部分はありますか?

SOTA 皆さんそれぞれにすごくいい表現をしていただいてるなと思います。比べるものではないですけど、「Gifted.」はBE:FIRSTの音楽として生かすために作られた曲なので、本質は僕らだからこそ出せるようでありたいな、と改めて思いましたね。

03. Scream

作詞・作曲:Tiyon "TC" Mack、Tesung Kim、Maxx Song、SUNNY BOY、SKY-HI
プロデュース:Maxx Song、SUNNY BOY

──これまでになくダークでホラーなテイストで非常にインパクトの強い楽曲ですが、これをアルバムのリード曲に据えたのはどういう意図からですか?

RYOKI 印象に残りやすい曲にしたかったというのはもちろん、リード曲では惜しむことなく全部出したいという気持ちがあって。バーンと抜けるボーカルがきたかと思ったら急にR&Bみたいになったり、歌唱もダンスも全部含めて、BE:FIRSTだからこそ最大限に表現できる要素が「Scream」には詰まっていると思います。

──なるほど。ミュージックビデオ公開直前の配信では、「この曲はレコーディングが大変だった」と口々におっしゃっていましたね。

RYUHEI すごく大変でした。ハモりが異様に多かったんです。何本も何本もテイクを録った記憶がありますね。多いところだと3、4本重ねて、またそれをダブルトリプルで録る、というように。今までで一番レコーディングに時間がかかったと思います。

RYUHEI

RYUHEI

JUNON 最後のフェイクもすごく難しいです。俺とRYOKIでやってるんですけど、踊りながらだともっと難しくて、試練だと感じてます。

──コレオグラフは「Move On」も担当したs**t kingzのkazukiさんです。エイリアンのように脱力した動きがあったり、緩急の付け方が非常にポイントになる振付なのかなと思いました。

SOTA はい。とにかくパワーのある曲なので振付にも力が入ってしまいがちで、引き算が難しいですね。「Bye-Good-Bye」は曲調がキャッチーだから、僕たちがドスを効かせれば効かせるほど曲と引き合えたんですけど、「Scream」はパワフルで大きな振りなので、緩急のバランスの付け方にはめちゃくちゃ苦労しました。

──kazukiさんがご自身のYouTubeチャンネルでこの曲の振付について解説されていて、「フォーメーションチェンジも多くて難度が高い」とお話しされていたんですが、自分たちではどう感じていますか?

SOTA うーん、それで言うと「Shining One」が一番キツかったですけどね。

JUNON 確かに。移動がめちゃくちゃ多いからね。

SOTA 歌割りが細かければ細かいほど、フォーメーションもめまぐるしく変わるので。それで言うと、最近のBE:FIRSTは1人が歌うパートが長くなりつつあるんですよ。歌う人が真ん中にいる時間が長ければ長いほど消費カロリーは少なくなりますから。

──ミュージックビデオも迫力がありますよね。RYOKIさんが「Hahaha…」と不敵に笑うところの表情はすごく怖さがあって、しばらく頭から離れなかったです。

RYOKI 本当ですか? 光栄でございます(笑)。あれは、急に「寄りも撮りまーす」ってなって撮ったんですよ。僕的には、連れ去りに来たエイリアンが頭の中にいたんだと思います。憑依されてたんでしょうね。ここでカッコつけたら一番ダサいなと思ったので、思い切りやりました。

RYOKI

RYOKI

──さすが俳優としても活躍しているRYOKIさんの演技力だなと思いました。そして1番サビあとの急にR&Bなムードになるパートでは、RYUHEIさんの色気が炸裂しています。

RYUHEI 僕はこの曲の中で2回も叫ぶところがあるんですけど、叫んだあとのサビで激しく踊った直後に曲の雰囲気がすごく変わるので、丁寧に歌わないと雑な感じになっちゃうし、けっこうハードなんです。あそこは地声から声を変えて歌ってるので、そういうところもけっこう考えながらがんばってます。

──LEOさんのボーカルは柔らかい印象が強かったので、「侮りな」の部分のがなるようなボーカルは新鮮でした。

LEO ライブでは「Brave Generation」とかでがなって歌うこともあったんですけど、確かに音源では丁寧に歌うことが多かったですね。でも“叫ぶ”を意味する「Scream」という曲ですし、この曲を録ったのが「VIVA LA ROCK」に出て音楽への探究心が増したりレッスンで新しい感覚が開放されたような時期だったので、それが反映されたのかもしれません。自分は声のバリエーションが「Scream」から増えている感じがしますね。

LEO

LEO

──ちなみに「最高が何なのか証明しよう」という歌詞は、SKY-HIさんの楽曲「Snatchaway」の歌詞「最高が何か証明しよう」との連関を感じさせますが……。

MANATO おっ。それはですね……。

SHUNTO 本人に聞いてください(笑)。僕らにはわからないんです。

──皆さんも、意図するところは聞かされていないんですか?

SHUNTO いつも楽曲やビジュアルにいろんな伏線が張ってあるみたいなんですけど、SKY-HIさんだけが持っている設定や裏テーマは僕たちには隠されていることが多いですね。

──そうなんですね。このアルバムはトラックリストが発表された際にBESTY(BE:FIRSTファンの呼称)の皆さんがさまざまな考察を繰り広げていましたよね。レーベル名の「B」「S」「M」「G」が7個ずつトラックリストに入っている、など……。

SOTA あ、そのあたりの話は聞きました。でもその奥にまだ何かあるのかは僕たちもわからないです。

SHUNTO いろいろと仕掛けを考えなきゃいけないプレッシャーが、SKY-HIさん的にはあるらしいです(笑)。

2022年8月29日更新