港町ぎんぢろうとバスエのキャバレーズのニューアルバム「ウォンチュー!」が6月2日にリリースされる。これに先駆け、5月14日に各音楽配信サイトおよびストリーミングサービスにてアルバム楽曲の配信がスタートした。
港町ぎんぢろうとバスエのキャバレーズは、ボーカルの港町ぎんぢろうが率いる7人組バンド。1970年代のテレビドラマを想起させるハードボイルドかつコミカルな世界観、ロック、ソウル、R&B、ヒップホップ、ロカビリー、歌謡曲などの多彩なジャンルを織り交ぜた音楽性、凄腕のミュージシャンたちによる演奏が持ち味だ。2017年発表の「スマッシュ イット」に続く2作目のアルバム「ウォンチュー!」でも、その魅力をふんだんに味わうことができる。音楽ナタリーではメンバーのうち、港町、ジミー岩崎(Key)、鳴海克泰(B)、阿部一仁(Dr)、森秀輝(Dr, Per)の5人にインタビューし、バンドの成り立ちやアルバムについて話を聞いた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 池田博美
70年代のドラマの雰囲気を表現したい
──港町ぎんぢろうとバスエのキャバレーズはハードボイルドでコミカルな歌詞、ジャンルを超えた音楽性など、とても個性的なスタイルを持ったバンドだと思いますが、まずその成り立ちについて教えてもらえますか?
港町ぎんぢろう(Vo) 僕はもともと曲を作るのが趣味で。仕事しながら曲を作り続けてたんですけど、あるとき「レコーディングしたい」と思い、高校の同級生だったドラムの阿部に声をかけたんです。阿部はプロのドラマーで、いろんなミュージシャンと知り合いだったので。彼や、ほかにも僕の友人でドラマーの熊田俊彦やギタリストの松田肇にも声をかけてメンバーを集めてもらったのが始まりですね。
阿部一仁(Dr) ぎんぢろうとは高校時代にもバンドをやってたんですが、25年ぶりくらいにまた一緒にやることになりました(笑)。
港町 パーカッションの森くんは阿部の教え子で、さらに彼が紹介してくれたのがジミー岩崎です。ベースの鳴海くんは、知り合いに「ジャコパス(ジャコ・パストリアス)みたいなベーシストいない?」と聞いて紹介してもらって。こうしてバンドが結成されました。自分の曲を自分で聴きたかっただけなんですけどね、最初は(笑)。
──70年代の刑事ドラマ、探偵ドラマを想起させる歌詞もこのバンドの特徴だと思いますが、それも当初からのコンセプトなんですか?
港町 最初から決めていたわけではないんですけど、幼少期に観たドラマがずっと記憶にあって、今も好きなんですよ。「傷だらけの天使」とか、「探偵物語」とか。
阿部 夕方4時からよく再放送してましたよね(笑)。
港町 あとは「刑事コロンボ」も好きで。そういうドラマの雰囲気や、そこで流れていた音楽を表現したいという気持ちはありましたね。1stアルバムの「スマッシュ イット」を聴いた年配の方からSHOGUN(ドラマ「俺たちは天使だ!」「探偵物語」などの楽曲を手がけたロックバンド)みたいだと言われたこともあります(笑)。
──メンバーの皆さんも70年代ドラマの影響を受けてるんですか?
森秀輝(Dr, Per) 7つ上の姉がいるので、再放送でよく観てましたね。時代がちょっと違いますが「ビー・バップ・ハイスクール」みたいな不良モノも好きだったし(笑)。
鳴海克泰(B) 僕は音大に行っていたんですが、絵に描いたような場末の店で演奏してたこともあって。クレイジーケンバンドとか、キャラが立ってるバンドも大好きなので、このバンドで楽しくやらせてもらってます。
森 歌詞はユニークだし、音楽のジャンルの幅も広いし、演奏してて楽しいんですよ。
ぎんぢろうが描こうとしている歌の世界をどう料理するか
──楽曲のアレンジを手がけているジミーさんも、70年代ドラマの音楽になじみがあるんでしょうか?
ジミー岩崎(Key) いや、僕は全然通ってなくて(笑)。実はロックもあまり聴いてこなかったんですが、このバンドはすごくやり甲斐がありますね。まず、ぎんぢろうの歌詞がとにかくおかしくて……もちろんいい意味で、ですけど。
阿部 念を押したね(笑)。
岩崎 (笑)。制作のときは、ぎんぢろうが描こうとしている歌の世界をどう料理するか、どうすれば世に伝えられるかを考えていて。楽しいですけど、かなり大変ですね(笑)。
──普通のバンドとは違う発想が求められますよね。
岩崎 そうなんですよ。
港町 レコーディング中にアレンジが変わることも多いからね。メンバーみんなでスタジオに集まって録るんですけど、僕がいきなり「ここにギターを入れたい」と言い出したりするので。
岩崎 それもこのバンドの特徴だと思います。あらかじめアレンジを作り込むのではなくて、演奏しながら作っていくっていう。リズムも「せーの」で録ってますからね。
──バンドらしいやり方ですね。ぎんぢろうさんも、演奏はメンバーに任せてる部分があるんですか?
港町 アレンジに関しては基本、ジミーちゃんに任せてます。メロディとコード進行は自分でシビアにやってますけど、あとは好きなようにやってもらって。歌にもそこまでこだわってないんですよ。早く録り終わらないとみんなに悪いなと思ってるくらいで(笑)。
──面白いバランスですね。「港町ぎんぢろうとバスエのキャバレーズ」というバンド名についてはどう決めたんですか?
港町 それもかなり適当です。昔レコーディングしていたときに「アーティスト名どうする?」という話になり、その場でパッと決めたので。内山田洋とクールファイブみたいなイメージですね(笑)。
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「ぎんぢろう物語」という映画を撮りたい