Awesome City Club|慎重かつ大胆に、新体制で迎える5周年

いかにブレずにいられるか

──昨年後半は、新体制でライブも行っていますよね。調子はどうですか?

PORIN 一緒に演奏するメンバーが変わったことはライブをするうえでめっちゃ大きい変化ですね。年末のツーマンツアー( 「Awesome talks -Nice Buddy Tour 2019」)では、Kenshiroさんという、Tempalayやiriちゃんとも一緒にやっているベーシストにサポートで入ってもらって。

ユキエ(Dr)

ユキエ リズム隊としては新鮮な感動と同時に、これまでずっと同じベーシストと合わせていたので戸惑いもありました。でも、シンプルに「あ、もっとドラムをうまくなろう」と思えたというか。外部からの刺激のおかげで、プレイヤーとしての意識もまた一段上げてもらったなと。それにツーマンツアーの前はライブごとにベーシストが変わっていたので、そこで自分がいかにブレずにいられるかについても考えました。日々勉強させてもらっています。

──今後、新たにベーシストを入れることも視野に入れてます?

atagi これは僕の意見ですが、必ずしも必要とは今は思ってないです。4人でやってみたら「思いのほか、できるんや」という気持ちもあるし……ぶっちゃけ、どっちでもいいかな(笑)。

PORIN 今って「この人、サポートだったんだ?」というサポートメンバーがいるバンドが多いじゃないですか。すごく自由度が高くて、プレイヤーがそれぞれ独立している感じが素敵だし、そういうスタンスでもいいのかなと私も思っています。

──ファンの方たちの反応はどうですか?

atagi 4人体制になってツアーを回ってみて1つ気付いたのは、僕ら身内よりもさらにファンの人たちが受けたショックが大きかったんだなということでした。ファンの方から「実は本当にショックで『オーサム大丈夫かな』って心配してたんだけど、曲を聴いて安心しました」みたいな言葉ももらって。僕らはずっと話し合いを続けて円満にことを進めていたわけじゃないですか。でも、お客さんはそういう僕らのプロセスをもちろん知らないまま、結果の事実だけを聞かされるわけだから無理もないと思うんですけど……最初は面食らいましたね(笑)。

──ライブを観て今のオーサムに安心したからこそ、思っていたことを口にできたのかも知れないですね。

atagi うん、そんな感じでした。

この4人だからこそできる音楽もできない音楽もある

──ここからは新曲「アンビバレンス」についてお聞きします。アレンジャーにエズミ・モリさんを起用したのはどんな経緯だったのでしょうか。

atagi(Vo, G)

atagi 僕、実はアレンジャーさんと仕事するのが今まであまり得意じゃなかったんですよ(笑)。それは自分のミュージシャンとしてのプライドが高かったせいだと思うんですけど。「アレンジャーさん、今度入れてみようか」とか提案されるのも悔しかったですし。でも、モリさんがiriちゃんに提供しているトラックとか、実際に僕らのために作ってくださったアレンジとかを聴いて、「アレンジャーになりたいなんて思わなくてよかったな」と痛感しましたね(笑)。それっぽいことは僕にもできるけど、そのレベルで終わってしまうし。クオリティの差をすごく感じました。あと、トラックメイカーさんにとっても、バンドもののアレンジを手がけるのって面倒くさい案件だと思うんですよ。“バンド”という制約もあるし「このバンドはどこまでトラックに寄せても大丈夫なのかな?」「ギターは入れないとダメ出しされるかな」とか考えるだろうし(笑)。でも、モリさんはその部分でもすごく果敢にチャレンジしてくれて。世代も感性も近いので、すごく楽しかったですね。

──オーサムとしての軸がしっかりできたからこそ、外部の人を入れることに抵抗がなくなったのもありますかね。

atagi 本当にそうだと思います。例えば、今回は生ドラムを入れてないんです。それはドラムが必要ないとかそういう次元の話ではなく、自分たちが作りたい音像に対して一切妥協しなかった結果なんですけど。ただ、そこはけっこうチャレンジングな試みではありました。

ユキエ もしかしたら、傍から見ると「それってバンドなの?」という意見もあるかなと思うし、自分自身もプレイヤーとしてモヤッとした瞬間は正直あったんです。

──それは、レコーディングでドラムを叩いていないことへの葛藤?

ユキエ そうです。そういうことは初めてだったので、そこに対してどう折り合いをつけたらいいのか最初は考えました。でも、この4人になって思ったのは、バンドというのはメンバーとしてそこに存在していること自体がクリエイティブな行為なんです。マツザカがいた5人だからできていた音楽、できなかった音楽があったように、この4人だからこそできる音楽も、できない音楽もあるんですよね。

──なるほど。

ユキエ そういう意味で今回の新曲は、5人だったら生まれてなかったと思う。この4人だからこそ生まれた曲ということは、それだけで私自身もクリエイティブの一員なのだなと。あとはライブでどれだけカッコよく聴かせられるかだと思うので、そこで自分の本能的欲求を満たす感じですかね。

atagi 僕らがほかのバンドと違うのは、打ち込みのトラックとバンドサウンドを乳化させる作業をしているところなんです。そこで自分たちのうまみとかエグみとかが乗るんだと思うんですよね。だから僕らのライブはいつも面白いなと思っています。女の子がドラマーで、男女ツインボーカルで……というビジュアルも含め、ライブで実際に聴いてくれたら絶対にカッコいいと思ってもらえるだろうことを踏まえて曲を作るから、どれも的外れでちぐはぐなようで、ちゃんと密接につながっているんですよね。