THE ROOSTERS、NUMBER GIRL、MO'SOME TONEBENDERなど、数々のバンドを生み出してきた博多のロックシーン。そこで今熱い注目を浴びている4人組バンドがAttractionsだ。地元・福岡のアパレルショップ「BINGOBONGO」グループが立ち上げた音楽レーベル「GIMMICK-MAGIC」で作品をリリースしてきた彼らは、「SXSW」や「SUMMER SONIC 2018」に参加するなど国内外で活躍を見せている。そしてこの夏、2ndアルバムにして最新作「POST PULP」でメジャーデビューを飾る。
UKロック、R&B、エレクトロなどさまざまなジャンルを呑み込んだサウンドで、2020年代のロックシーンを見据えて作り上げた本作。“PULP”とは彼らが提唱する新しいジャンルであり、そこに世界を目指すAttractionsの意気込みが伝わってくる。インドネシアで生まれ育ち、ネイティブな英語で歌うボーカリストのTARO。そしてソングライティングを担当するギターのTAKEに話を聞いた。
取材・文 / 村尾泰郎 撮影 / 草場雄介
きっかけはクリスマスパーティのOasis
──お二人はAttractionsの前身バンド、JENNIFER ISOLATIONから一緒にバンドをやっていたんですよね。どんなふうに出会ったのでしょうか。
TAKE(G) 高校生のときに遊びに行った学校合同のクリスマスパーティで、TAROがOasisの「(What's The Story)Morning Glory?」を歌っていたんです。それを聴いて、「うまいなあ」と思って。共通の友達に「あれ、誰?」って聞いたら、TAROがちょうど僕が受験しようと思っていた大学に入学がすることを知って、「僕もそこ受けるから、合格したらよろしく」って挨拶したんです。それで合格が決まったときに「バンドやらない?」とメッセージを送りました。
TARO(Vo) 俺は大学では映研に入ろうと思っていて、音楽をやるつもりはなかったんです。でも大学に入ったばかりで友達もいなかったし、心細いじゃないですか(笑)。それにバンドって面白そうだから、ちょっとやってみようかなと思って。
──それまではどんな音楽を聴いていたんですか?
TARO 11歳までインドネシアで暮らしていたんですけど、母親がThe Beatlesが大好きで、小さい頃から一緒に聴いてましたね。それでブリットポップが好きになって、ロビー・ウィリアムスにめちゃくちゃハマってた時期がありました。日本に来てからは、高校生の頃に通っていた塾の先生に誘われて一緒にコピーバンドをやったり。アメリカ人と日本人のミックスの先生で、初めてやった曲がBlurの「Song 2」でした。
──それはだいぶファンキーな先生ですね(笑)。TAKEさんはどんな音楽を聴いていたんですか?
TAKE 中学生の頃に仲がよかったいとこのお兄ちゃんから、いろんなCDを借りていたんです。その中にミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)とかモーサム(MO'SOME TONEBENDER)があって、そこからロックにハマっていきました。15歳くらいのときに音楽の趣味が合う友達ができてバンドを組んだんです。当時はNirvanaとか聴いていましたね。
TAKEは曲をすごく作り込んでくる
──そんな2人が結成したJENNIFER ISOLATIONはどんなサウンドだったのでしょうか?
TAKE ファンクロックというか、例えばRed Hot Chili Peppersだったり、Rage Against the Machineなんかにかなり影響を受けてました。
TARO グランジっぽい曲もやっていて、けっこうUS寄りでしたね。Attractionsはクールめでダンス寄りですけど、JENNIFER ISOLATIONは激しくて男臭かった。
TAKE 「頭振る!」みたいなね(笑)。
──JENNIFER ISOLATIONが解散したのはどうしてだったんですか?
TAKE きっかけはメンバーの脱退だったんですけど、バンドをやっているうちにみんなが聴く音楽が変わってきたし、メンバーが脱退したのをきっかけに「新しい音楽をやりたいね」っていう話になったんです。その頃はけっこうR&Bを聴いていて。
──ダンスミュージックの影響が強くなっていた?
TAKE 前のバンドも最後のあたりはブラックミュージックのグルーヴをかなり取り入れていましたね。Attractionsになって特に変わったのはエレクトロの要素です。シンセを実験的に使うようになった。JENNIFERのときに鍵盤のメンバーが欲しかったので、Attractionsをスタートしたときに入れたんですけど、その後脱退してしまって。今は僕が打ち込みで鍵盤のパートを入れています。あと、DAWで曲を作るようになったのも大きな変化です。
──主に曲を書いているのはTAKEさん?
TAKE そうです。だいたいの構成は僕が考えています。
TARO そこまで作らなくていいよって毎回言ってるんですけど、すごい作り込んでくるんです。
TAKE JENNIFERのときは、鼻歌で作ったメロディをもとにみんなでセッションして作っていたんです。でもAttractionsではシンセを使うので緻密に曲を作ろうと思って、PCで曲を作り始めたらハマってしまったんですよね。音が波形になって曲の構成が視覚化されるのが面白くて。
TARO それである程度できた段階で僕に見せてくるんですよ。「ヤバくない?」って(笑)。でも、こっちはそんなにテンションが上がるタイプじゃないから「めちゃいいと思うけど、試しにここ減らしてみたら?」って冷静に言ったりして。
TAKE ある程度デモができるとメンバーに渡して、それぞれ好きに肉付けしてもらうんです。歌詞はTAROに任せています。
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