ギャップがすごく好き
──お二人はJENIFFERの頃から、韓国やアメリカなど海外でライブをしていますよね。海外での活動は常に視野に入れていたのでしょうか?
TARO インドネシアから日本に来て思ったんですけど、なぜか日本はアジアの中で孤立している気がするんですよ。こんな素晴らしい音楽があるんだから、もっと海外で聴かれてもいいんじゃないかと思って、「俺らで行けるとこまで行こう!」と決めたんです。
TAKE JENIFFERのときは韓国のロックフェスに出させてもらったんですけど、お客さんはオープンに僕らのことを受け入れてくれて、すごく盛り上がったんです。Attractionsで「SXSW」に出演したときは主催者側からカバー曲もやってほしいとリクエストされて、チャイルディッシュ・ガンビーノとかDaft Punkをやったりしました。
──歌詞が英語というのも海外では強みですね。主にどんなことを題材にしているのでしょうか?
TARO 「DISTANCE」の頃は自分の体験をもとにしながら、みんなに向けたメッセージを込めていたんですけど、今回のアルバムは内面的なことが多いですね。自然とそんなふうになりました。
──内面的な歌詞をダンサブルなロックに乗せるというのも海外のロックに通じるところがありますね。
TARO 例えばPixiesとかThe Cureの曲って、明るい曲でも歌詞が暗かったりする。そういうギャップがすごく好きなんです。明るい曲に明るい歌詞を書くのって、あんまり好きじゃない。そこに隠し味が必要だと思うんですよね。
──光と影があることで曲に奥行きが生まれますよね。TAROさんのボーカルも、ロックの激しさだけではなくソウルフルな艶やかさを併せ持っているところが魅力的だし。
TARO ありがとうございます。ソウル系もめちゃくちゃ聴いていて、マーヴィン・ゲイとか大好きなんです。あと、デヴィッド・ボウイ。カメレオンみたいというか、いろんなキャラクターを使い分けて歌うじゃないですか。そういうのを目指しているところもありますね。
TAKE TAROは意外と器用なんですよ。聴いている音楽の幅が広いからだと思うんですけど。だからこっちがジャンルを意識せずに曲を書いても歌いこなせる。今回はラップだったりソウルフルだったり、パンチのある歌が多かったので、TAROのおいしい部分を引き出せる曲としてバラードというか、歌モノとしてガッツリ楽しめる曲を作りたいと思って「Blood Pressure」を書きました。
誰にも真似できないサウンド
──最後にアルバムタイトルについて教えてください。
TARO 僕たちが生まれた90年代って、ポップカルチャーが最高点に達してしまったと思っていて。ロックというジャンル1つを取っても、アメリカでオルタナが盛り上がって、その中にグランジとかいろんなスタイルの音楽がドロドロに混ざり合っていた。今の時代も同じことが起こっていると思うんですよ。というのも、ストリーミングの影響でみんないろんなジャンルの音楽を聴いているじゃないですか。そんな中でイギリスやアメリカのカルチャーを超えた、日本独自に進化した新しいサウンドが、今生まれてるような気がしていて。それで、直訳すると“ドロドロしたもの” “低俗なもの”という意味を持つ“PULP”を新しい音楽ジャンルと捉えて「POST PULP」というタイトルをつけたんです。
──ジャンルに囚われないAttractionsは、“PULP”な状況の中だからこそ生まれたバンドと言えるかもしれないですね。
TAKE TempalayとかKing Gnuを聴いていても、すごく日本らしいというか、世界にないサウンドを作っていると思います。「彼ら自体が新しいジャンルじゃん!」って。自分たちの曲も誰にも真似できないし、世界のどこにもないサウンドだという自信はある。限りなく洋楽に近いと思うんですけど、僕らは日本に軸を置いて活動しているので、日本のリスナーにどうやったらなじんでもらえるかということをかなり意識しています。それがメロディなのか、言葉なのか、フレーズなのか、どこを意識しているのかは曲によって違うけど。だからまず日本のリスナーにこのアルバムを聴いてもらいたいですね。