「ASKAって誰?」を掲げた大規模ツアー開催に向けて示す「これがASKAだ」

ASKAが9月から年またぎの全国ツアー「ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA!?-」を開催する。9月から2025年1月にかけて合計29公演が決まっているこのツアー。ASKAのツアーとしては近年稀に見る公演数だが、その本数からもASKAが今ライブに向ける思いの強さが伝わってくる。

音楽ナタリーでは、そんなASKAの思いに触れるべく、本人を直撃。ロングツアーを開催するに至った経緯や、いちアーティストとしてライブに込める思い、ツアータイトル「Who is ASKA!?」のゆえんなどについて語ってもらった。会話の中からは、これまでの経験値を生かしたASKAの発想力、合理的な物事の捉え方などが見えてくる。また自身が今取り組んでいる新曲の構想などについても言及しているので、インタビューを最後までチェックしてみてほしい。

取材・文 / 秦野邦彦撮影 / 岡田貴之

ツアー日程

Travel TV presents ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA!?-

  • 2024年9月21日(土)東京都 J:COMホール八王子
  • 2024年9月25日(水)大阪府 オリックス劇場
  • 2024年9月26日(木)大阪府 オリックス劇場
  • 2024年10月3日(木)福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
  • 2024年10月4日(金)熊本県 熊本城ホール メインホール
  • 2024年10月6日(日)鹿児島県 川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1ホール
  • 2024年10月19日(土)神奈川県 神奈川県民ホール
  • 2024年10月24日(木)岩手県 盛岡市民文化ホール
  • 2024年10月26日(土)山形県 やまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)
  • 2024年11月4日(月・振休)北海道 札幌文化芸術劇場hitaru
  • 2024年11月8日(金)岡山県 倉敷市民会館
  • 2024年11月10日(日)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2024年11月15日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2024年11月16日(土)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2024年11月23日(土)島根県 島根県芸術文化センター グラントワ 大ホール
  • 2024年11月24日(日)山口県 周南市文化会館
  • 2024年11月29日(金)新潟県 新潟県民会館 大ホール
  • 2024年12月1日(日)石川県 本多の森 北電ホール
  • 2024年12月8日(日)静岡県 静岡市民文化会館 大ホール
  • 2024年12月13日(金)青森県 リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
  • 2024年12月15日(日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2024年12月20日(金)兵庫県 アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)
  • 2024年12月21日(土)大阪府 箕面市立文化芸能劇場
  • 2025年1月11日(土)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2025年1月12日(日)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
  • 2025年1月17日(金)沖縄県 那覇文化芸術劇場 なはーと
  • 2025年1月18日(土)沖縄県 那覇文化芸術劇場 なはーと
  • 2025年1月25日(土)香川県 サンポートホール高松
  • 2025年1月27日(月)大阪府 フェスティバルホール

詳細はこちら

ASKAって誰だよ

──今年デビュー45周年を迎えるASKAさんの全国ツアー「ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA!?-」の開催が決定しました。国内は9月21日の東京・八王子公演を皮切りに2025年1月27日の大阪公演まで29公演が決まっているほか、そのあとにはアジアツアーも予定されているということで。ここまで本数が多いツアーはひさしぶりですし、そうなったのもASKAさんたっての希望だそうですね。

そうですね。さらに追加で東京の会場をあたってもらっていて、うまくいければあと1、2本増やせるかなという感じです。僕たち昭和世代のアーティストは、ツアーといえば60本、70本が普通だったんです。それが音楽のライブの見せ方としてアリーナ主体になってからは一気に本数が減ってしまって。だけど僕はツアーというのは1つの作品を持って回るものだと思っているので、10数カ所で終わるのは忍びないし、やっぱりたくさん楽曲を披露したいから前回のステージ中に「次のツアーはもっとやるから」と伝えたんですね。この齢になってどういうわけか、声がどんどん出るようになってきたので、それを忘れないうちにやろうと思って。

ASKA

──今回のツアーはソロで初めて行かれる県や、かなりひさしぶりに行かれる場所もあります。

島根、山口はソロだと初めてですね。鹿児島も20年ぶりぐらいですか。東北はどうしても仙台に集約されて近隣県の方が仙台に来なきゃいけなかったんですけど、今回は自ら足を運ぼうということで東北の公演を増やしてます。岩手は15年ぶりですし、山形はソロだと初めてになります。僕の感覚では「ツアーってこんなもん」ですね。友人のスタレビ(スターダスト☆レビュー)なんてだいたい2年くらいかけたツアーを今まさにやってますから。

──1970、80年代あたりは特にフォークシンガーの方が年間100本以上コンサートをされていた頃のようですね。

さだまさしさんもそれぐらいされてましたよね。僕もデビューした1979年頃は学生で、家族もないし、「1年中出ててもいいや」と思って、それくらいの本数をやってましたから。そういう時代だったんです。

──このツアーのタイトルが「Who is ASKA!?」になった理由は?

僕は本当に憧れているミュージシャンが少ない中、デイヴィッド・フォスターという大プロデューサーと知り合いになれて、昨年一緒にステージをやることができたんです。そのデイヴィッドが今年1月、ロスからのオンライン中継で僕の番組(TOKYO FM / JFN系「ASKA Terminal Melody」)に出てくれて。パーソナリティの方と打ち合わせが終わって、さあ収録しようかというときに彼が「Who is ASKA!?(で、ASKAって誰!?)」って言ったもんだから、スタッフが固まったわけです(笑)。すかさずデヴィッドは「ジョーク、ジョーク! ごめんね」って言ったんだけど、それが本当に面白くて。

──その冗談に何かを感じた?

ちょっと待てよと。これはデイヴィッドの軽いジョークですけどね。今、若い世代が90年代の音楽を聴くようになって、僕はサブスクやってないですけど、それでも知ってくれている人たちが求めてくれている中、それ以外の若い世代でASKAが何をやってるか知らない人がたくさんいるわけです。そういう人たちに向けて「Who is ASKA!?」というタイトルは面白いなと思って、そのまま使わせてもらいました。

──それで今回、中学生・高校生向けのチケットを用意されたんですね(※公演当日に会場にて学生証提示でキャッシュバックあり)。

そうです。学生チケットは前回のツアーからやってるんですけれども、もともとこれはポール・マッカートニーがやってたんです。彼が約半世紀ぶりに日本武道館(2015年4月28日)で公演をしたとき、僕ら大人はアリーナ席で10万円を払って観たわけです。だけどポールもThe Beatlesのことをまったく知らない世代は1500円で観ることができた(25歳以下限定で、1966年のThe Beatles武道館公演と同じ金額で販売)。自分の価値を知ってくれてる人には10万円のチケットを。でも、まったく世代が違うのに観に行きたいと思ってくれた人には逆に「ありがとうね。気付いてくれて」という気持ちからの1500円チケットというね。

ライブ撮影の自由

──学生向けの割引のほか、これまでの経験を踏まえて行う取り組みはありますか?

前回のツアーの途中から話が出ていたんですけど、そろそろライブ中の写真や動画撮影をOKにしてもいいんじゃないかって。海外では先に撮影OKの方向に舵を切ってますけど、日本だってカメラ機能が付いたガラケーが普及した頃から実はもう止められないものだったと思うんです。一時期は本当にチェックを厳しくして、スタッフがスマホを取り上げる時代もありましたよね? だけど今はスマホで動画も手軽に撮れるし、そういうところにスタッフの労力を割きたくないと思って、前のツアーの最終日に「撮っていいよ。Webにアップしてもいいよ」ってことを試しにやってみて、その結果を踏まえての今回ということです。スマホでも前の席のほうがよく撮れるわけだから、前方はS席にしつつ、学生割引も用意して。そういう意味では昔に戻った感じですね。昔はS席がなくてA席とB席。C席まであった気がするな。ただその意味合いが違うだけで。

ASKA

──いいですね。それも自信があるからこそできることだと思います。

時代ですよね。どれだけいいスマホで、いい席から撮ったとしても、ちゃんと僕らが作品にした映像、音に敵うわけがないんですから。それもあって自由にしてもらおうと思いました。

──アリーナやドームができて1、2万人収容が当たり前になってくると、ライブのあり方も変わってきます。ASKAさんがCHAGE and ASKA時代、国立代々木競技場第一体育館を初めてコンサート会場として使ったのが1983年9月のことです(当時はチャゲ&飛鳥名義)。

昔のコンサートは歌を歌うためのもので、素舞台にミキサーとスピーカー、照明、マイクがあれば成立してましたけど、ステージセットを含めエンタテインメント性を追求するようになってから、ライブの本数はやっぱり少なくなってきましたよね。仕込みの時間とか考えるとたくさんやるのは難しいですから。

──前回の取材(参照:今振り返るデイヴィッド・フォスターとの夢の共演)で、「アリーナクラスの会場における一番の演出は会場のお客さんだ」とおっしゃっていましたね。

そうですね。ホールにおいては僕らステージ側に委ねられることが多いですけど、アリーナとかになると演出はお客さんですよね。というのは自分の目に映る景色が人、人、人……というものすごい数のお客さんの中の自分なわけです。この絶景を見て、僕は最終的にお客さんが演出するものだと思ってますから。やっぱりひとつになった瞬間の、なんとも言えないパワーってあるでしょう? あれはお客さん同士の演出です。ホールはそこまでじゃないです。ステージに立つフロントマンがナビゲートして、お客さんを入り口から出口まで連れて行くという。そういう意味でも僕はライブを作品だと思ってます。