アルスマグナ|なんでもやれる僕らのベスト

もしケント先生がいなかったら

九瓏ケント

──では、ケント先生は皆さんから見てどんな存在ですか?

アキラ 僕らの中で一番の大人ですけど、その大人が「やりたくない!」ってひと言を最初に言ってくれるんでラクですね。やっぱり僕らは先生の第一声を待つんで、何を始めるにしてもやらないにしても先生が決めてくれる。そういう存在が、例えば遅刻してくれたりすると僕らも急がなくて済むんです。でも、大体集合時間の30分前には現場にいるんですよ……イヤだなって思います。

一同 (笑)。

 ナタリーさんの力を借りて、不満を言う流れになってますね(笑)。

アキラ そういうことが言いたかったわけではないんですけど(笑)、いいことも悪いことも最初に責任を負うのは先生なんです。作品を1つ作るにしてもね、僕らが「いいダンスできたね」「いい動画ができたね」と言っても、どこかで必ず否定的な言葉って出てくるもので、それを受け止める比重も先生が一番大きい。先生は自分が音を見つけてきて、自分が作って……というところからやっているので、メンタル的な負担はデカいと思うんですよ。それでもどんどん次に向かっていくので、そのバイタリティはすごいなと思います。感心しますよ。「折れないんだ?」「負けないんだ?」って。

──先生がいなければ、こうしてベストアルバムをリリースできるほどのキャリアも積めなかったかもしれない?

アキラ そう思います。それどころか、デビューもできていないんじゃないですかね。先生の熱があって、それに対してみんなが負けていたら、たぶん僕らが最初に注目された“踊ってみた”の動画(「【アルスマグナ】男5人で ギガンティックO.T.N 熱く踊ってみた」)すらできていないんじゃないかなって思いますね。今は昔話や思い出話をさせていただけるようにもなりましたけど、グループを組んだ当初はずっと何かと戦っていた気がする。その見えない敵と最初に戦っていた人。何をするにしても最初の一歩って怖いですから。そこを踏み込んでくれたから、今こうしてベストアルバムまでたどり着くことができた。

ウィト 僕たちの誰よりもアルスマグナへの愛が深い方だと思う。アルスマグナを愛しているから僕たちのこともここまで考えてくれて、次から次へと新たな方向性を示してくれているんだろうし、僕たちやメイトの皆さんも含めてアルスマグナを愛しているからいろんなことが思いつくんだろうなって。だから女性にモテるんだろうなって。そういう姿を見て先生のことを好きになる人も多いだろうし、うらやましいなって思います。

 「人生において感謝したい人は誰ですか?」と聞かれたら、間違いなくその1人。先生がここまで熱を持ってくれていたからこそ今のアルスマグナがあって、自分がここにいられているというのは確かなことで。それこそ「武道館へ行きたい」と言い出したときは「何を言ってるんだろう? この人は」と思いましたけど、先生がそう言ってくれたことによって俺らもそこへ行きたいという気持ちが芽生えましたし、実際に武道館に立ってステージからの景色を見せてもらえた。本当に成長させてもらいましたし、心から感謝しています。

タツキ 僕も感謝しかないんですよ。「エグいくらい超マグナ」のMV撮影のときも、僕がNGを何度も出して落ち込んでいたところを優しい言葉で立て直してくれたんです。救ってくれたんです。できあがった作品を観て「すごくよかったよ」と声をかけてくれましたし、僕がつぶれずにこうして活動できているのは先生のおかげなので、日々感謝してもしきれないですね。

──「エグいくらい超マグナ」はMVも曲もインパクト大の作品になっていますが、こちらはどんなイメージを膨らませながら作っていった曲なんでしょう?

アキラ 最初に先生と作詞作曲を担当するmiyake(mihimaru GT)さんと一緒に打ち合わせをしたんです。そこで先生が「オタ芸っていいよね」と。さらに「日本の文化ってなんだろうね」みたいな話からmiyakeさんが「いろんな土地を回ろうか」と提案してくれて。2020年には東京五輪もあるし、海外の人たちがこのMVを観て「おお、浅草!」みたいな感じで面白がってくれるんじゃないかと思ったんです。僕らにとって思い入れがある池袋だったり、オタ芸の文化を育てた秋葉原だったり、そういう土地を回って型破りなMVを完成させました。

僕らを知ってほしい

──5人の魅力を掘り下げていただきましたが、そんなアルスマグナの歴史が詰まったベストアルバム「ARS THE BEST」をどんなふうに楽しんでほしいと思いますか?

神生アキラ

アキラ はじめましての方には一番手っ取り早く僕らの音楽を知ってもらえる作品だと思うんですけど、僕らのことをデビュー曲から知っている方は、もしかしたらシングルを全部持っているかもしれない。でも、それだけずっとアルスマグナを追いかけてくれた人たちが、誰かに一番薦めやすいのはベストアルバムなのかなって。これを機に僕らのことを広めてくれたらうれしいなと思います。僕らもベストアルバムが出たからゴールというわけではまったくなく、ここからどうやってもっと多くの人に知ってもらうか。そういうフェーズに入っていくと思うので、そのためのベストアルバムな気がしているんです

──なるほど。

アキラ アルスマグナって最初はよくわかんないと思うんですよ。5人組で、ぬいぐるみもいて、それで「ダンスすごいんだよ」と言っても「なんなんだろう?」となると思うし。だからこそベストアルバムを出して「今までこんな歌をやってきて、こんなダンスをやってきて、こんなライブをしてきたんだよ」と。それを知ってもらえたらいいなと思っています。

──これから先のアルスマグナはどうなっていくと思いますか?

ケント アルスマグナはダンスで歌に絵を付けるグループなんですよ。毎回「この曲ってこういう絵だよね」という発想で制作していて。歌を聴いたときに、歌詞よりも先に絵が浮かぶ。その絵にもっといろんな世界の色を付けて、もっと奥行きを持たせて、それを膨らませていくのが今後の目標であり野望ですね。それによって、これまで小屋だったところがお城になって、最終的にドームにまでたどり着けたらいいなと思っています。