ナタリー PowerPush - 藍坊主
ベストアルバム&初の武道館ライブ後にバンドが見据える“この先”
4月にベストアルバム「the very best of aobozu」とシングル「星のすみか」(TVアニメ「TIGER & BUNNY」エンディングテーマ)を同時リリースし、5月6日には初の日本武道館ライブ「藍空大音楽祭 ~the very best of aobozu」を成功に導いた藍坊主。いわゆる“青春パンク”のシーンから活動をスタートさせ、作品のたびに音楽的洗練と深い精神性をたたえた歌を追求しながら、まさに唯一無二のロックバンドへと成長してきた彼らにロングインタビューを試みた。武道館ライブを終えた4人はいま、どこに向かおうとしているのか? ナタリーPower Push初登場となったインタビューは、藍坊主の“これまで”と“これから”を結びつける、貴重なものになったと思う。
取材・文/森朋之 撮影/平沼久奈
武道館はパワースポット
──初の武道館公演から約1カ月が経ちましたが、今振り返ってみると、あのライブにはどんな手応えがありましたか?
藤森真一(B) 意外と緊張しなかったな、っていう気持ちがまずあって。途中、「リラックスしすぎじゃないか?」って思うくらい、自然体で楽しんでやれましたね。150人とか200人くらいのキャパでやるライブに比べても、全然緊張しなかったんですよね。不思議な空間でした。
渡辺拓郎(Dr) 朝からずっと浮かれっぱなしで、最後までそのままだったんですけど(笑)、次の日起きてみたら、体の重さとか疲れっぷりがけっこうすごくて。知らないところで力んでたのかなって思いましたね。昼過ぎまで寝ちゃって、1日ゴロゴロしてたいって感じだったんですよ。普段はそんなことはあんまりないし、気の抜けた状態だったのかもしれないですね。
──バンドにとっても大きなライブですからね、間違いなく。
田中ユウイチ(G) そうですね。日本武道館っていう名前自体が大きな存在だし、俺らのワンマンの中でもキャパが一番デカかったので。最初は緊張もあったし、どんなふうになるのかわからないとも思ってたんですよね。ライブハウスとかだったら「こういうライブになるだろう」ってなんとなく予想できるんだけど、武道館に関しては手探り状態だったかもしれないですね。でも、始まってみたら、会場の雰囲気によってどんどんライブが作り上げられていったんですよ。いいライブをしてるというか、お客さんにいいライブを見せられてるなって感じもあって。今までにない雰囲気でしたね、確かに。
──hozzyはどうでした? 武道館前は「願掛けで禁酒してる」って言ってましたけど、打ち上げでビールは飲みました?
hozzy(Vo, G) それがですね、あのあともずっと飲んでないんですよ。打ち上げのときも「今ビール飲んだら、ここで崩れるな」って思っちゃって。周りも「なんで飲まないの?」って空気だったんですけど、ここで緊張感を解いちゃったらやばいなって。一昨日くらいにビールを2口くらい飲んだときも、「もういらない」って思ったんですよ。自分でも信じられないですけどね、あんだけクソ飲んでたのに。
──それくらいの緊張感があったのかもしれないですね。ライブ自体はどうでした?
hozzy 周りのミュージシャンには「武道館は特別な雰囲気を持ってるから、何をやってもうまくいくよ。大丈夫」って言われてたんですよ。そのときは「何が大丈夫なんだよ!」って思ってたんだけど(笑)、ステージの上で3回くらい、体がブルブルブルって震える瞬間があって。あそこにはよくわからないエネルギーがあるなって感じましたね。パワースポットなんじゃないですか?(笑)
──武道館の前、「やり遂げたいことがある」って言ってましたけど、それは具体的にどういうことだったんですか?
hozzy まあ、ありきたりですけど、現時点で自分が持ってるスキルだったり、表現できることをぜんぶ出し切りたいってことですよね。「今だったらこれくらいできるな」っていう幅は、自分でわかってるつもりなので。それが100だとしたら、武道館でも100は出せたと思います。120まではできなかったけど。
最後のリハでセットリストを大幅に変更した
──ベストアルバムのリリース直後ということもあって、当日のセットリストはこれまでのキャリアを総括するようなものでしたね。
田中 そうですね。実は最後のリハで大幅に変更したんですけど。
hozzy アレンジも変えたしな。
藤森 もっと言うと、当日のリハで決めた部分もあって。
田中 新曲をやろうと思ってたんですけど、候補が2つあったんですよ。どっちをやるか、当日まで決めかねてて。
hozzy 当日のリハで決めるってすごいよな。武道館だぜ!?っていう(笑)。
田中 (笑)。若干、hozzyが気分屋なところがあって。その場の勢いで歌ってみて、良いほうを選ぶ感じだったんですよ。
hozzy リハのときって、どうしても100%の力が出せないですからね。だって、誰も聴いてないし(笑)。やっぱり、その空間で歌ってみないとわからないというか……。特に俺らのライブって、お客さんと一緒に作っていく感じですからね。
藤森 もちろん、あらかじめ決めておいたセットリストでいけるのもいいのかもしれないけど、変えて良くなるんだったら、そっちのほうがいいと思うし。
──セットリストって、いつもどおり田中さんが中心になって決めたんですか?
田中 そうですね。セットリストって「この曲をやりたい」ってことよりも、全体の仕組みがちゃんとできたらいいと思ってるんですよ。ちょっとくらい曲が変わっても、構造が崩れなかったら大丈夫というか。
──武道館はイメージどおりの流れになりました?
田中 思い描いていた以上ですね。ライブってそうじゃないと面白くないと思うんですけど、自分が支配的になったり誰かがコントロールしたりしなくても、武道館ではちゃんと回っていく状態だったんですよね。それこそ、初めからそんな感じだったというか。ライブの前は"武道館を乗り越える"というような気持ちがあったんです。でも、ステージに立ってみると、乗り越えるとか克服するとかっていうんじゃないほうにモードが変わっていって。
──なるほど。
田中 普段だったら「定番曲ばかりだとつまらないかな」って思ったりするんだけど、ベストが出たばっかりっていうこともあったし。例えば「ハローグッバイ」にしても、武道館でやればいつもとは違う「ハローグッバイ」になるだろうって思ってたんですよね。実際、そういうふうになったと思うし。
DISC1
- ハローグッバイ
- 鞄の中、心の中
- ウズラ
- 雫(しずく)
- 未知の道の道
- すべては僕の中に、すべては心の中に
- スプーン
- テールランプ
- コイントス
- ラストソング
- 羽化の月 (FORESTONE Ver.)
- 水に似た感情
- 星のすみか
- 伝言
- セブンスター
DISC2
- ガーゼ
- 桜の足あと
- 雨の強い日に
- 言葉の森
- 名前の無い色
- 空
- 春風
- マザー
- 柔らかいローウィン
- 空を作りたくなかった
- シータムン
- 瞼の裏には
- あさやけのうた
- ジムノペディック
- 忘れないで
DISC3(※初回限定盤のみ)
- Love & Peace
- 僕と同じ
- 雫 (高校生Ver.)
- 小心者
GOING UNDER GROUND 10th Anniversary Tour 2011 「Rollin' Rollin'」 vol.2 ~ emotional song
- 2011年6月11日(土)
名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 17:00 / START 18:00
前売 3500円 / 当日 4000円
席種:オールスタンディング
W)GOING UNDER GROUND - 2011年6月12日(日)
大阪Music Club JANUS
OPEN 17:30 / START 18:00
前売 3500円 / 当日 4000円
席種:オールスタンディング
W)GOING UNDER GROUND
藍坊主(あおぼうず)
高校時代に藤森真一(B)とhozzy(Vo)が中心となり、前身バンド「ザ・ブルーボーズ」を結成。地元小田原を中心にライブ活動をスタートさせる。のちにバンド名を「藍坊主」に改名し、ギターに幼馴染みの田中ユウイチを加え、小田原や下北沢でのライブ活動やインディーズでの音源発表を重ねていく。2004年5月にアルバム「ヒロシゲブルー」でメジャーデビュー。翌年ドラムが渡辺拓郎に交代し、現在の編成となる。hozzyの力強いボーカルを主軸にしたメロウで力強い日本語ロックが高い支持を得ている。
2010年2月にはバンド結成10周年を飾るにふさわしい傑作となった5thアルバム「ミズカネ」をリリース。2011年4月には初のベストアルバム「the very best of aobozu」とシングル「星のすみか」を同時に発売した。また「星のすみか」は、アニメ「TIGER & BUNNY」のエンディングテーマに起用され、日本のみならず海外でも話題を集める。さらに同年5月にはバンド史上初となる日本武道館ライブを敢行し、大成功に収めた。