アーティストとしての指針編
⑩ 普段、聴いている音楽
栗本 いつも失恋の曲ばかり聴いてますね。まつりさん、優里さん、Saucy Dogさん、あたらよさん……ほかにも好きなアーティストさんは大勢いますけど、とにかく音楽は泣ける曲が好きで、お風呂に入っているときや移動中もずっと浸っていたいんです。朝起きた瞬間から泣ける曲を探すくらいです。
モラレス 変わった朝の迎え方だね(笑)。私は朝だったらスキマスイッチさんの「全力少年」みたいな元気な曲でテンションを上げていきたいタイプ。逆にクリスマスの時期が近付くとロマンティックな曲ばかり聴くし、シチュエーション重視派かもしれない。
山崎 普段、私は男性ボーカルものを聴くことが多いんです。RADWIMPSさんやMrs. GREEN APPLEさんとか。メンバーと車移動するとき、私は助手席に座って音楽を流すことが多いんです。つまりet-アンド-のDJ担当(笑)。
モラレス でもDJカノンはセンスいいんですよ。私と音楽の趣味が似ているから、個人的には大満足(笑)。
野島 私はリスナーとしては少し変わっているかもしれない。特定の音楽ジャンルやアーティストを集中して聴くというよりは、歌そのものに関心があるんです。例えば街中ですごいフェイクをキメてる歌を耳にしたら、「この上手な人は誰?」って感じですぐShazam(音楽検索アプリ)を起動。洋楽も含めて、とにかく圧倒的な歌唱力に目がないです。
──さすが「AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」の初代王者だけありますね。
野島 今となってはあれもけっこう前の出来事ですけどね(笑)。でも、その頃から歌に対する意識は根本的に変わっていないのかもしれないです。
⑪ 目標としているアーティスト
モラレス うーん、これは意外に難しいテーマかも。「こういうふうになりたい」というのはパッと思いつかないですね。
野島 そういえば、こういう話って4人で一度もしたことないね。ある意味、それが答えなのかな。目標にしているアーティスト名がすぐに出ないということは、要するに自分たちがオリジナルになりたいって話だから。
モラレス 尊敬するアーティストさんはたくさんいますけど、誰かのコピーになりたいわけではないんです。この4人でしか作れない音楽をやらないと意味がないし、「今までにない新しい音楽」と言われるようになったら成功なんだと思います。
野島 そうだね。et-アンド-の目標としているアーティストは、「今よりもカッコいいet-アンド-」ということじゃないでしょうか。
⑫ et-アンド-ってジャンル的には何?
野島 プロフィールでは「新世代女性ボーカルグループ」となっているんですけど、「ジャンルの幅を広く持っていたい」という考えがその前にあるんですよ。
モラレス 前例がないことをやろうとしているつもりなので、何かのくくりに入れるのが難しいという部分はあると思います。私たちに似たアーティストも特にいないですし。
野島 (サウンドプロデューサーの)菊池一仁さんがよく言うのは、「なんでもできるグループになってほしい」ということ。私たち4人は歌の個性がバラバラで、きあらみたいにラップが得意で、クールな表現が合っているメンバーもいれば、カノンみたいに儚い表現が上手なメンバーもいる。4人の個性を生かすためにも、ジャンルは絞らないほうが可能性は広がると思うんですよね。
栗本 “春夏秋冬4部作”も全部タイプが違うし、ジャンルレスというのが音楽的な特徴と言えるかもしれません。
モラレス 4曲を聴いてもらえたら、「私はこれが好き」という意見も人によって違うと思うんです。そこは私たちの狙いでもあって、Z世代の子たちに自分の好きなet-アンド-を見つけてもらっている最中。何か1つでも「これだ!」とハマってもらえるものがあればいいなと考えています。
⑬ステージに出るとき肝に銘じていること
栗本 なるべく観に来てくださっているファンの方全員と目を合わせるようにしています。さっき「ステージでは自信を持つように意識している」と言いましたが、それは小さい頃にミュージカルをやっていた経験からなんです。自信を持たないとセリフも飛ぶし、パフォーマンスの質も明らかに下がる。それは先生からだけでなく、お母さんからも言われました。「ここで自信を持たないと、今後何もできない人生を送ることになるよ」って。
モラレス 言葉は厳しいけど、すごく愛を感じるね。
栗本 実際、私はほかの人以上に堂々とするように心がけないとダメだと思うんです。et-アンド-としてデビューした頃の映像を観返すと、私1人だけが棒立ち。そんな調子では自分らしい表現なんてできっこないです。
野島 私はステージに上がる瞬間にスイッチを入れるようにしています。普段と同じ気持ちで本番を迎えるわけではなく、ステージで別人格になるイメージ。SKE48時代は「どう見られているのか?」というところを気にしていて、あのときはそれで正解だったとも思うんですけど、et-アンド-になってからは「どれだけ曲を伝えられているか?」ということのほうが重要で。歌っている顔がどれだけブサイクになっても構わないし、目を閉じて曲の世界観に入り込んでいることが多いです。
山崎 確かに歌っているときの樺乃って表情がコロコロ変わるんですよ。
野島 ステージ上だと、笑顔1つでも日常生活の中で笑っている表情とは明らかに違って、曲に入り込むとどうしてもそうなっちゃう。もっともっと歌を届けることを追い求めていきたいです。
⑭ 作詞をするとき、何を参考にする?
栗本 夏のシングル「夏海月」と秋のシングル「宵宵」ではメンバー全員が作詞に挑戦しました。私は普段からSNSをよく見るほうなんですけど、参考になるのはコンテンツそのものよりもコメント欄なんですよ。例えばTikTokに泣ける失恋ソングが上がっているとするじゃないですか。そこに対するコメントを読むと、「こういうポイントで人は共感するのか」と勉強になるんですよね。
山崎 私が参考にするのは自分の妄想かな。妄想のエキスパートですから(笑)。あとは知り合いから恋愛体験とかをヒアリングすることもあります。もちろんet-アンド-の曲は恋愛だけがテーマではないので、例えば励ますタイプの曲だったら、お酒を飲みながら人生について熱く語る友人が参考になったりします。歌詞のために話を聞き始めても、いろんな考えを知ることができるのって単純に楽しいですよ。1人の人間として刺激を受けることが多いですし。
⑮ アーティストを目指している若者にアドバイスを送るとしたら?
モラレス 大前提として、努力は必須。正直、努力が必ずしも報われる世界ではないんですけど、努力しない人にはチャンスさえ回ってこないですし。まずは一歩踏み出すことが大事で、「向いているかな? 向いていないかな?」と考えている時間すらもったいないと思います。
野島 あと、大事なのは周りの環境です。自分よりレベルが上の人に囲まれていて、なんならその中で自分が最低ランクという環境のほうが成長できると思います。尊敬できる人たちと一緒に活動したほうがいいですね。
──それは今までの活動を通じて気付いたことなんでしょうか?
野島 そうですね。集団の中では自分が後輩に教える役目も大事なんですけど、そればかりやるとリソースを全部そちらに注いじゃうから、自分自身の成長が二の次になるんです。これからデビューを目指す立場だったら、まずは自分がステップアップすることを第一に考えたほうがいいかなって。
栗本 私はすごく不器用だから、ほかの人が1回でできることを10回やってもできなかったんです。繰り返し同じ練習を続けて、ようやく人並みになれるかどうかという感じで。私は極端な例かもしれないけど、根気というのが大事な要素なのは間違いないと思います。卓越したセンスや才能があれば話は別かもしれないけど、そうじゃなければ実直に続ける根気を持ってほしいなと伝えたいです。
山崎 私からアドバイスがあるとしたら、とにかく好きだという気持ちを忘れないでほしいということ。デビューを目指す段階では不安なことも多いだろうし、悩みも抱えているかもしれません。それでも楽しみながらがんばったほうが、結果は絶対プラスになるはずなんですよ。そもそもなぜ自分がデビューを目指そうと思ったのか、その気持ちを忘れずにいてもらいたいですね。
ライフスタイル&プライベート編
⑯ 犬派? 猫派?
野島 これは「せーの」で一斉に言ってみようか。せーの……。(※野島、モラレス、栗本の3人が「犬」と回答。山崎は「その他……」と小声で挙手)
山崎 ナマケモノになりたいんですよ、私。オフの日なんて、本当に1日中布団の中にいますから。すでにナマケモノになりかけてはいるんですけど、どうせだったら完全体になりたい(笑)。
栗本 きあらは猫を飼っているよね。それなのに犬派なの?
モラレス いや、もちろん猫も大好きだよ。でも、猫って気分屋じゃないですか。「おいで」と呼んでもこっちに来ないし、かと思うと自分の気が向いたときだけ甘えてきて……。そういう意味で犬に対する憧れがあるんだけど、これはないものねだりなのかもしれないですね。人間は欲深い動物なので(笑)。
⑰ ファッションのこだわり
栗本 et-アンド-のファッションリーダーといえば樺乃ですね。
野島 私は名古屋出身で、昔から東京に遠征する機会が多くて。例えば1週間くらい東京に泊まることになったら、7日分の洋服をそろえないと気が済まないんです。なんだったら靴も変えたいし、コートも変えたい。だから荷物が多くなっちゃうんですよ。
山崎 考えられない……。私なんて7日間あっても2、3日分くらいしか用意しないけどな。上下の組み合わせとかで誤魔化せるし(笑)。
野島 でも、お気に入りの服を着ているとテンションが上がらない? 私が昔から考えているのは、「いつスカウトされても恥ずかしくない恰好でいる」ということなんですよね。
モラレス デビューしてから8年くらい経っているのに、いまだにスカウトのことを考えているとは……(笑)。意識、高すぎ!
⑱ 明日、地球が滅びます。今夜、何を食べる?
山崎 私はズバリ、焼肉!
栗本 お母さんが作ってくれる中華スープかな。すごくおいしくて、ほぼ毎日飲んでますね。だから最後の晩餐もそれで締めたい。
野島 餃子と白米! そこに少しだけビールがあったら、なおのこと幸せです。
モラレス うーん……悩むけど、結局はラーメンかなあ。人類にとって最後の日は、なんとなく体が味の濃いものを求める気がします(笑)。
⑲ SNSに力を入れるet-アンド-。好きな動画は?
山崎 私、人が食事している動画をすごく観ます。特に大食い系は病みつき(笑)。
モラレス めちゃくちゃわかる! 観ているとなんだかスカッとするんです。あとは街で食べ歩きするタイプの動画もハマりますね。
野島 私なんて自分がごはん食べながら、YouTuberさんが食べる動画を観ていることも多いよ(笑)。
栗本 私はゲーム実況系が多いかな。あとは声優さんがやっているYouTubeチャンネルとか。みんなが飲み食いに特化する中、私だけ傾向が違うかもしれない(笑)。
モラレス 食べものだけじゃなく、お酒を飲むタイプの動画もついつい観ちゃうんですよ。いつか4人でグルメ系のコンテンツがやれたらいいなと思います。
⑳ ファンに言われて気付いたこと
野島 ファンの方たちは、本当に私たちのことをよく見ているなと驚きます。自分たちで気付いていないことを指摘してくれるときもありますし。アイドル時代に言われてハッとしたのは、踊っている最中に前髪を直す癖があること。ちょっと後ろを向いた瞬間にパパっと直していたんですけど、確かに映像を観返すと気になるので、意識して改めました。
モラレス 確かに自分では気付かないことってあるよね。
栗本 人前に立つお仕事をしている以上、いろんな意見に触れることでスキルアップに生かしていきたいですね。
2023年、これからの私たち編
㉑ “春夏秋冬4部作”で得たもの
──“春夏秋冬4部作”のリリースを通じて成長したと思う点はありますか?
野島 自分たちで作詞したことは、振り返ってみると大きかったと思う。日常生活の中で着眼点が変わったし、人の心の揺れにも敏感になりました。その結果、アーティストとして表現力が増した気がします。曲に対する思い入れも強くなりますし、それをファンの方に愛してもらえるとすごく誇らしい気分にもなります。
山崎 作詞に関しては、引き続き今後も4人でチャレンジしていきたいですね。すごく充実感があったので。
栗本 新曲の「恋のせい、」に関しては、歌詞の内容が深いから1回聴いただけでは理解できないかもしれませんが、メッセージ性が強くて考えさせられるものになっています。いきなりラップから始まるところも、そのあとリズムや雰囲気が急展開していくのも曲として新鮮なので、深く味わってもらいたい1曲です。
㉒ 人間のカオス性について
──「恋のせい、」は人間の複雑さやカオスな面がテーマとなっています。「人間ってカオスだな」と感じたことはありますか?
栗本 友達の恋愛話で「は?」と思うことはありますね。その子は彼氏のいいところを一切言わず、愚痴ばかり話すんです。こっちとしては「なんで別れないのかな?」と思うじゃないですか。ところが実際に2人でいるところを見ると、信じられないくらいラブラブなんですよね。本当に意味がわからない。
山崎 それって「女の子あるある」なのかな。照れくさいのかもしれない。
栗本 にしたって、のろけるんだったら堂々とのろければいいじゃん。「ちょっと、これ見てよ」とか嫌そうに見せてくるLINEのスクショも幸せそのものな内容だから、どう返していいのかわからなくて……。それこそが人間の複雑さなのかもしれないです。
野島 今度、その友達のことを歌詞にしたほうがいいよ(笑)。
㉓ 2023年の抱負
野島 2023年の目標は、まず自分たちのワンマンライブのチケットを完売させること! そして今回のシングルで春夏秋冬シリーズの連続配信は終わってしまうので、ここから真価が問われることになるのかなって。今年もスピード感を落とさないように楽曲をリリースしていきたいですし、イベントにもどんどん積極的に出演したいです。
モラレス et-アンド-は地方出身メンバーも多いので、もちろん東京での活動も引き続きがんばりつつ、全国で愛されるグループになりたいです。みんなが友達を誘って遊びに来れるような、そんなハッピーなライブ空間を作っていくつもりです。
野島 デビュー3年目を迎える私たちですが、今は自分たちのやっていることにすごく手応えを感じるんです。これからも全力で突っ走っていきますので、遅れないようについてきてください!
プロフィール
et-アンド-(アンド)
野島樺乃、栗本優音、モラレスきあら、山崎カノンの4人からなる女性ボーカルグループ。「第1回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」で優勝を果たすなど、高い歌唱力を持つことで知られる元SKE48の野島をリーダーとして結成された。ミドルテンポに裏拍のリズムをとるレゲトンをベースにした音楽が特徴で、サウンドプロデュースは作曲家の菊池一仁が務めている。2021年6月に愛知・SKE48劇場で行われた野島のソロライブ内でステージデビューし、7月にデビューシングル「#tokyo」を配信リリース。9月にマンスリーライブ「Monthly LIVE 2021『RGB』」をスタートさせ、11月に初のCD作品であるミニアルバム「toi et moi」を発表した。2022年に入ってからは“春夏秋冬4部作”のシングルを連続リリース。2023年1月にその第4弾として、ドラマ「それでも結婚したいと、ヤツらが言った。」のオープニングテーマ「恋のせい、」を配信リリースした。
et-アンド- (@and_421official) | Twitter