ammoインタビュー|メジャーデビューから半年、新たな挑戦が詰まったニューアルバム「SONG LIE」 (2/3)

無茶しちゃうドラムフレーズがまたいい、ベースはどんどん引き算

──初のタイアップ曲「意解けない」は7月にスタートした「小市民シリーズ」のエンディングテーマです。制作に関しては、これまでとの違いもあったのではないでしょうか?

岡本 まず89秒のアニメ尺の音源を作らなくちゃいけなくて、それが初めての経験だったので新鮮でした。最初にアニメの制作サイドとミーティングをしたときに、「歌始まりで、劇中でも使えそうな印象的なリフがあればなお最高」みたいなリクエストをいただいて。サビの尺とかテンポ感とかいろいろ考えました。アニメの曲をバンバン書いているロックバンドも多いですけど、タイアップをやられてきた先輩方は本当にすごいなと改めて実感しました。

──岡本さんから受け取ったデモをもとに、川原さんがアレンジしていくわけですよね。

川原 僕はタイアップ曲だからといっていつも以上に気合いを入れる、みたいなことができないタイプで。気張り方がわからないだけなんですけど(笑)、そういう意味ではいつも通り、優星からもらったデモを聴いて、そのままアイデアを膨らませていきました。

──いい意味で肩の力が抜けていて、そこが従来のammoらしさにもつながっている気がしました。北出さんはこの曲のドラムに関しては、レコーディング含めてどういった形で臨みましたか?

北出 ドラムアレンジの大枠はほとんど創馬が作ったものなんですけど、創馬はドラマーだったらやらないようなフレーズをたくさん入れてくるんですよ。なので、めっちゃ難しいなと思いながらレコーディングした記憶があります。

川原 すみません(笑)。

北出 いやいや(笑)。けど、ドラムを叩けへん人が作る無茶なドラムフレーズが、またいいというか。僕が全部作ったら自分の手癖を入れちゃうけど、この曲はいい意味でまったく僕っぽくないドラムになっていて、そこでammoの音楽性を表現できてるのかなと思います。

北出大洋(Dr)

北出大洋(Dr)

──ベースラインに関してはいかがですか?

川原 僕はまず最初にドラムとギターストロークの入った音源を作って、最後の最後に色付けとしてベースのフレーズを作るんです。めちゃくちゃ遊んだベースを弾いて、それを何回も聴き返してどんどんいらないところを削っていく。そういう引き算で最終調整をしています。

──ammoのアレンジには3ピースバンドならではの、引き算によってお互いの存在感を高めていくという美学が強く感じられます。特に今作はそこが顕著に表れていると思いました。

川原 そう感じてもらえるのはアレンジャー冥利に尽きるというか、一番うれしいです。

“詩”じゃなくて“歌詞”だから

──「意解けない」の歌詞に関しては、「小市民シリーズ」の物語を反映させながら書いたのかなと思いますが。

岡本 書く前に原作を何回も読み込みました。主人公の感情をただ歌で説明するだけだったら、僕が書く意味がない。“岡本節”というか自分らしい言葉を織り込みつつ、僕なりに解釈した「小市民シリーズ」をしたためました。

──実際、歌詞に含まれているワードからも原作とリンクする部分を感じました。

岡本 めっちゃ引用させてもらいましたし、そういう作業は楽しかったです。

──あと、韻の踏み方がめちゃめちゃ気持ちよかったです。

岡本 そこに関しては、今作ではけっこうレベルが上がってきたなと自分でも感じます。

岡本優星(Vo, G)

岡本優星(Vo, G)

──節回しや譜割りにはヒップホップ的なノリも感じられますし、歌でリズムを刻んでいるところも気持ちよさにつながっているのかなと。

岡本 そうですね、そこはいかに気持ちよく聴かせるかを意識した結果です。譜割りに関しても、1つの単語を歌い切るとかそういうことを意識しすぎずに、響きやリズムを大切にしながら刻むことは多いですね。だって“詩”じゃなくて“歌詞”だから、文章として成立しなくても自分の中でOKにしています。

──アルバムは「意解けない」でスタートする構成になっています。

岡本 1曲目はこれにしようという前提でアルバムを作り始めるので、そこに関して迷いはなかったです。1曲目を決めてから、こういうリズムの曲を作ろうとか、ピアノを入れた曲もいいなとか自由に書いていって、制作の後半で「あとはどういう曲が必要かな?」と足りない部分を補っていきました。

カレーを作っているときに

──「意解けない」に限らず、今作にはキャッチーで遊び心のある歌詞が多いですが、作詞する際はメロディから着想を得て歌詞を書いていくんでしょうか。それとも、思いついたワードをひたすら歌詞に落とし込んでいく形なんでしょうか?

岡本 後者が多いですね。「この言葉とこの言葉を使いたい!」とひらめいて、そこから組み立てていきます。

──それがリズミカルさにもつながっていると。「ルウ」というタイトルの響きもそうですけど、「涙で溶けたルウ うるうるうるうる」というフレーズの気持ちよさは別格ですし。

岡本 ここ、かわいい響きですよね。このフレーズは家でカレーを作っているときに降りてきました。

ammo

ammo

──「戻らない日々はプライスレス 数百円のルウ」というフレーズも、最初に聴いたときにドキッとしました。

岡本 これも我ながらよく出てきたなと思います。こういうトリッキーなフレーズって、意外と2番とか最後のほうに落とし込むことが多いので、1曲まるまる聴いてほしいんですよね。

──川原さんはこういった曲をアレンジするうえでどこまで歌詞を意識していますか?

川原 アレンジに関してはメロディを重視しているので、実は歌詞をあんまり意識していなくて。歌詞がアレンジに影響することはほとんどないかな。

岡本 歌詞はコーラスを作る段階で意識してもらうようにしてます。そもそも、歌詞を邪魔するようなアレンジって今まで一度もなかったですし。

──信頼関係がしっかりあると。

川原 そこは10年来の仲だからじゃないですかね(笑)。