ナタリー PowerPush - ALL OFF

挑戦と進化を繰り返し ラウドロックから外側の世界へ

音楽の幅を広げたくて初めて他人の曲に挑戦

──2曲目の「Paradise」は王道ギターロック感のある、すごくストレートなロックナンバーだなと思いました。それまでのALL OFFの楽曲と比べると、すごくJ-ROCK的というか。

松浦 実はこの曲、僕らが作曲したものではなくて、同じ事務所に所属してるTHE UNIQUE STARのエバタ(ヒロカズ / Vo, G)くんが書いたものが原型で。初めて聴かせてもらったとき、ALL OFFが今までやったことがないようなギターロックで、僕らにはこういう曲はまだ書けないけど、ちょっとこの曲をやってみたいっていう話になって、エバタくんに「この曲、ちょっとアレンジさせてくれない?」ってお願いしたんです。そこからエバタくんが書いた原曲をALL OFFでアレンジして、僕が歌詞を書いて完成させたのが「Paradise」なんですよ。なので、ALL OFFが初めて外部の人間と共作した楽曲というか。

──なるほど。それで今までのALL OFFとはちょっと違う雰囲気を感じたんですね。

内藤祐貴夫(G)

松浦 それはあると思います。今後僕らがこういうギターロックナンバーを書く上ですごく参考になりましたし、最初の取っ掛かりとしては大きな意味のある1曲になったんじゃないかな。

内藤 昔、LUNA SEAなどの日本のバンドが好きだったので、「Paradise」ではそういった面を打ち出してみたくて。ギターのフレージングも今までのALL OFFにはなかったものを取り入れようと、いろいろ研究したんです。今後より音楽的に幅を広げていくためにも、すごく貴重な経験だったと思います。

──そして3曲目の「Party Anthem」は、本当にタイトル通りの“パーティアンセム”になりましたね。前作に収録されていた「Just Tonight」もダンサブルな楽曲でしたが、もうちょっとラウドロック寄りのアレンジでした。だけど今回の「Party Anthem」はラウドロックの枠を飛び出して、それこそ最近のDaft Punkにも通ずるところがあるなと思います。

松浦 前もちょっと話したと思うんですが、ダンス系の要素を取り入れたゴリゴリのバンドってけっこういるんです。ピコピコしてたりスクリームが入ってたりっていう。でも純粋な歌モノポップスとしてのダンスチューンをやってる同系統のバンドって、意外といないんですよ。僕らは海外のポップスもすごく好きで、そういうエッセンスを取り入れて自分たちなりに展開したいなと思ってるんです。「Just Tonight」ではそこに近付けようとかなり挑戦したんですけど、あの曲を作ったことで今回「Party Anthem」にたどり着けたのかなと。

アルバムタイトルはバンドを始める前に妄想してたもの

──「Soundtrack For Your Lonely View」というタイトルもすごく印象的ですね。このタイトルはどうやって決めたものなんですか?

松浦奏平(Vo)

松浦 僕がバンドを始める前、中学生とか高校生ぐらいのときに妄想してたんですよ。自分がバンドをやってアルバムを出すんだったら、このタイトルだなって。バンドを始めてからはずっとそのことを忘れてたんですけど、今作を作り終えてタイトルをどうしようかと考えたときに、今回の5曲が孤独や別れをテーマとしていることに気付いて急に思い出したんです。今寂しさや孤独を感じている人たちにとって癒しのサウンドトラックになってほしいという願いを込めて、このタイミングで使ってみました。

──すごくピッタリなタイトルだと思いましたよ。でも5曲とも孤独感をテーマにしつつも、ポジティブに前進していこうという気持ちが強く出た歌詞ですよね。

松浦 そうですね。あくまで孤独感は深層の部分にあるテーマであって、表面的には5曲とも違ったテーマがあるんです。ALL OFFというバンドはネガティブよりもポジティブさを前に出していくことをモットーとしているので、そこが今回も強く出ているんでしょうね。

──どの曲がリード曲になってもおかしくない、強力な楽曲が揃ったと思います。

松浦 全曲シングル級の作品にしたくて。「最初の2曲はいいけど、あとの3曲はちょっとね」って言われるのはイヤだったし、やっぱり「ALL OFFの曲って毎回ハズレがないわ」って絶対言わせたいので、すごくこだわりました。

──そういう意味では、今作はアルバムのように流れを考えて構成された作品というよりも、シングル級の楽曲が5曲並んだ1枚といった印象が強いです。

松浦 なんか聴き始めたら曲に引き込まれて、「あ、もう終わっちゃった。もう1回聴こう」みたいになるのが理想なんです。

地道にいいライブといい作品を連発して、最終的に大成したい

──ここまでミニアルバム3枚、そして今回の「Soundtrack For Your Lonely View」を発表していますが、そろそろフルアルバムも聴いてみたいですね。

左から内藤祐貴夫(G)、松浦奏平(Vo)。

松浦 今回みたいに半年とかじゃなくて、2年くらい制作期間が欲しいですけどね。

内藤 2年もかかってたら、俺ら終わっちまうよ!(笑)

──いやいや、わからないですよ。2年後にいきなり2枚組フルアルバムができているかもしれないし。

松浦 あはは(笑)。だったら、できた曲からさっさと出しますよ。

内藤 でも売れたら制作期間が2年もらえるかもしれない。劇的に売れたら(笑)。

松浦 劇的に売れたらね。マジで売れてほしいわ、本当に。

内藤 この新作を通じて、今まで届いていなかったところにも響いてほしいですね。

松浦 一応セールス的には地味ではあるんですけど右肩上がりなので、少しずつ広がっているのかな。このペースがアーティストとして正しいのかはわからないですけど、僕らは特別な肩書きとか飛び抜けたルックスとかあるわけじゃないので、地道にいいライブといい作品を連発して、最終的に大成したいなって。もどかしい部分もあるんですけど、自分たちが正しいことを証明するためには長い時間をかけて続けていくしかないなって思いながら、今後も活動していくつもりです。

ALL OFF(おーるおふ)

松浦奏平(Vo)、内藤祐貴夫(G)、越本兼瑛(B)、大槻真一(Dr)、畑島岳(G)からなる新世代ロックバンド。エモ、ロック、メタルの要素を詰め込んだサウンド、キャッチーなメロディと圧倒的なライブで多くのリスナーを虜にしている。2008年に行われたRO69主催「COUNTDOWN JACK」で優勝し、同年末に「COUNTDOWN JAPAN 08/09」に初出演。これを機にパンク / ラウドロックシーンで一気に知名度を高める。2010年に初のミニアルバム「From Midnight To Sunshine」をリリース。2012年に発売されたドラマ「QP」のトリビュートアルバムには、新曲「Nothing」を提供した。同年8月、2ndミニアルバム「Start Breathing」を発売。同作収録曲の「Let It Shine」をOBLIVION DUST / MEGA8BALLのRIKIJI(B)がプロデュースを手がけたことで大きな話題を集めた。2013年6月、3rdミニアルバム「Follow Your Heart」をリリース。カルフォルニア育ちの松浦が英語と日本語を使い分けた歌詞を取り入れるなど、新境地を見せた。9月のツアーファイナルでは東京・WWWでのワンマンライブがソールドアウト。12月には早くも5曲入りの新作「Soundtrack For Your Lonely View」を発表した。