ナタリー PowerPush - ALL OFF

挑戦と進化を繰り返し ラウドロックから外側の世界へ

ALL OFFが最新CD「Soundtrack For Your Lonely View」をリリースした。ミニアルバム「Follow Your Heart」からわずか半年で発表される今作には、音楽性の幅を広げた前作からより進化した強力なナンバーを収録。「Follow Your Heart」で初導入された日本語詞の比率も今作ではより高まっており、ALL OFFが新たなステージに到達しつつあることが感じられる。

ナタリーでは松浦奏平(Vo)と内藤祐貴夫(G)にインタビューを実施。新作のテーマや制作過程について、たっぷり話を聞いた。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類

もっと外側に向けた作品にできないかな

──前回のインタビュー(参照:ALL OFF「Follow Your Heart」インタビュー )で、前々作「Start Breathing」と前作「Follow Your Heart」の間隔が10カ月というのは過去最短だと言ってましたけど、今回はさらに更新しましたね(笑)。

左から内藤祐貴夫(G)、松浦奏平(Vo)。

松浦奏平(Vo) 早いですよね。いいペースというか、ただ無理しただけっていう(笑)。

内藤祐貴夫(G) 作る側は毎回ヒイヒイ言ってますよ(笑)。

──そんな今回の新作「Soundtrack For Your Lonely View」ですが、前作でチャレンジした新機軸の部分をさらに深く追求した濃い楽曲が揃っていると思いました。皆さんにとって前作「Follow Your Heart」の手応えは大きなものだったんでしょうか?

松浦 はい。狙った通りの内容になりましたし、あのアルバム以降本当にライブがいい方向に激変して。それがすごく自信につながったんです。でも、確かに前作は幅広くいろんなことにチャレンジするのがテーマでしたが、今聴き直すとコアなロックファンにはアピールする仕上がりかもしれないけど、もっと外側に向けた作品にできないかなと考えるようになって。ロック好きはもちろんなんですけど、いろんな層の人が聴いても楽しめるような作品にしたいというのが、今回の大きなテーマでした。

──なるほど。

松浦 どの曲も前作を作り終えたあと、ゼロから作ったもので。前からストックしていた曲を入れて「前とあんまり代わり映えしないね」って言われることを回避したかったし、前作から短い期間で成長した部分も見せたかったし。制作スケジュールはハードだったし、ライブで新曲を試す時間もなかったけど、自分たち的には狙い通りの作品に仕上げることができたと思ってます。

内藤祐貴夫(G)

──それにしてもすごい創作意欲ですよね。最近ではアルバムの間隔が年単位のアーティストが多い中、5曲とはいえ前作から半年で作り上げてしまうんですから。

松浦 海外のアーティストなんて数年に1枚ですし。あんまり1つの作品を引っ張り続けるよりは新しい作品を次々に出して、常に動いてる感を見せていたいんですよ。

内藤 バンドの成長している姿を、常に提示していきたいんです。そういう意味でも今回の作品を短期間で作れたことは、ALL OFFにとってすごく大きいと思います。

要所要所で英語詞を使うことで、日本語詞をなじませてる

──前作でのインタビューで、松浦さんは歌詞の表現の仕方が変わってきて、「聴き手の背中を押してあげるような、第三者に向けて発信してるような内容」になってきたと言っていました。今作では日本語詞の比率もより高くなっていますし、他者に気持ちを伝えたいという思いはより強くなっているんじゃないかと感じました。

松浦 うん、そうですね。そこはすごく意識しました。日本語詞も前作では1曲の中に1センテンスだけ、みたいな配分でしたし。そのぶん苦労しましたよ。日本語詞にまだまだ慣れてないんで(笑)。

──でも1曲の中に英語詞と日本語詞がバランスよく取り入れられていて、聴いて違和感はなかったですよ。

松浦 あ、本当ですか? だったらよかったです。2曲目の「Paradise」はオール日本語詞に近いんですけど、出だしの1文が英語詞だったりして。逆に要所要所で英語詞を使うことで、日本語詞をなじませてるっていうのはあるかもしれないですね。

──ほかの曲にしても英語詞の中に程よいバランスで日本語詞が入ってくることで、曲のテーマがよりわかりやすくなった気がします。

松浦 それはすごく意識しました。

松浦奏平(Vo)

──作詞の際、最初から日本語詞と英語詞をミックスしながら書いているのか、それとももとになる英語詞があって、そこに日本語詞を加えていくんでしょうか?

松浦 曲によるんですけど、例えば「Paradise」の場合は最初から日本語メインでいこうと思っていたので、ほぼ全編を日本語詞で書いたんです。逆に1曲目の「Say Goodbye」はまず英語詞を書いて、ストレートに響かせたい部分を日本語詞に変えてます。

──じゃあ歌詞の中で強く打ち出したいポイントを英語詞にするか日本語詞にするかは曲によって変わってくる?

松浦 そうですね。「Say Goodbye」の場合は、そもそも「Say Goodbye」っていう言葉自体が日常的によく使われていて、半分日本語みたいになってると思うんです。なので、そのまま日本語で歌い続けるとちょっと野暮ったくなっちゃいそうだったんで、英語詞を多めにしてます。そのバランスは1曲1曲考えるようにしてますね。

ALL OFF(おーるおふ)

松浦奏平(Vo)、内藤祐貴夫(G)、越本兼瑛(B)、大槻真一(Dr)、畑島岳(G)からなる新世代ロックバンド。エモ、ロック、メタルの要素を詰め込んだサウンド、キャッチーなメロディと圧倒的なライブで多くのリスナーを虜にしている。2008年に行われたRO69主催「COUNTDOWN JACK」で優勝し、同年末に「COUNTDOWN JAPAN 08/09」に初出演。これを機にパンク / ラウドロックシーンで一気に知名度を高める。2010年に初のミニアルバム「From Midnight To Sunshine」をリリース。2012年に発売されたドラマ「QP」のトリビュートアルバムには、新曲「Nothing」を提供した。同年8月、2ndミニアルバム「Start Breathing」を発売。同作収録曲の「Let It Shine」をOBLIVION DUST / MEGA8BALLのRIKIJI(B)がプロデュースを手がけたことで大きな話題を集めた。2013年6月、3rdミニアルバム「Follow Your Heart」をリリース。カルフォルニア育ちの松浦が英語と日本語を使い分けた歌詞を取り入れるなど、新境地を見せた。9月のツアーファイナルでは東京・WWWでのワンマンライブがソールドアウト。12月には早くも5曲入りの新作「Soundtrack For Your Lonely View」を発表した。