akugi|閉塞感を打破するための真剣な“イタズラ”

コドモメンタルの新ユニット・akugiの1stミニアルバム「Playplay」が6月16日にリリースされた。

akugiはボーカリスト1人とダンサー2人によるユニットで、構成員はmarikoyu、まるあうま、nainotokanonの3人。先日の発表でmarikoyuがKAQRIYOTERRORの心鞠游、まるあうまが星歴13夜の天まうる、nainotokanonがTOKYOてふてふの十叶のんのであることが発表された。「Playplay」にはさらにヤマコマロ(KAQRIYOTERROR)、色とわ(星歴13夜)、もとちか襲(ぜんぶ君のせいだ。)、メイユイメイ(ぜんぶ君のせいだ。)、セツナウイネ(TOKYOてふてふ)といったレーベルメイトがゲストボーカルとして参加しており、グループの垣根を超えたコラボ曲が多数収録されている。音楽ナタリーではakugiの構成員であるメンバー3人とプロジェクトの仕掛け人であるレーベルの代表取締役・今村伸秀氏へのインタビューを実施。これまでのコドモメンタルになかった新たな試みとしてakugiがどのように生まれたのか、その理由に迫った。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 関上貴也

遊びだからこそ真剣に

──akugiというユニットはどういう経緯で生まれたんでしょうか?

marikoyu

marikoyu 去年の秋ぐらいにレーベルの社長が「何か面白いことをしたい」ということを言い出して(笑)。KAQRIYOTERRORのツアーも延期が決まったりして、音楽活動がうまくできなくなった時期に、何かできないかという思いから生まれたのがakugiなんです。

今村伸秀(コドモメンタルINC. 代表取締役) 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世の中的にかなり閉塞感が漂うようになって。音楽業界もライブができなくなったり、CDの制作が滞ったりしている中、僕らコドモメンタルの中でとにかく面白い遊び、“イタズラ”を仕掛けたいなと思ったのがakugiを作るきっかけですね。

──akugiというのは「悪戯」の音読みですよね?

marikoyu はい。社長が最初におっしゃっていたのは、akugiはいたずらであり遊びでもあるけど、遊びだからこそ何よりも真剣にやらなきゃいけないということでした。去年はいろんなエンタメがなくなって、外出もしちゃいけないから、とにかく遊びがない1年だったと思っていて。だったら音楽で、ユニットで、真剣に遊ぶのは私としてももちろん大賛成でした。

──コドモメンタルで“イタズラ”をしようというとき、その中心にmarikoyuこと心鞠游さんを選ばれたのはなぜだったんですか?

marikoyu “イタズラ”のイメージに合うのが私だったみたいです(笑)。それとakugiというユニットには人間同士の架け橋になるという役割もあって、いろんな人と一緒に作るプロジェクトになるから、ゲストの邪魔にならないボーカリストが求められていたみたいで。私、自分ではそんなに自覚がなかったんですが、歌い方や声にそこまで特徴がないタイプなんですよ。前にスタッフさんに「個性が強くない分、なんにでもなれるのが心鞠の強みだ」みたいなことを言われたこともあって。捉え方によってはデメリットになり得る特徴のなさを長所と捉えてもらって、akugiの“l言葉”に選んでもらえたことはすごく光栄なことだと思っています。

──akugiには“踊り”として、まるあうまさんとnainotokanonさんが参加しています。どちらも星歴13夜の天まうるさん、TOKYOてふてふの十叶のんのさんのアナグラムを別名義としているものですが、この2人はどういう経緯で選ばれたんでしょうか?

nainotokanon

nainotokanon 実はTOKYOてふてふのオーディションに合格したのと同じくらいのタイミングでakugiとしても活動できることも決まったんです。私は新グループオーディションに応募していて、みんな横並びの状態で活動が始まると思っていたら、いつの間にか先輩たちとakugiをやることになっていて……。最初はビックリしましたけど、私がダンスの経験があるのを評価してくれてakugiというユニットでも力を発揮できることになったから気合いが入りました。

marikoyu akugiというユニットがボーカル1人とダンサー2人で構成されることは社長から聞いていたんですけど、誰が参加するかは聞かされていなかったんですよ。でも新メンバーオーディションのときに行われていた合宿を見に行ったときに、ダンスが踊れる(十叶)のんのを見て、「あ、きっとあの人だ」って思ってました(笑)。逆に3人目が誰になるかは予想もできなくて、まうるが来たときは驚いたなあ。

今村 全グループのメンバーを見渡していったとき、まうるはストイックなメンバーという印象が強かったんです。所属している星歴13夜というグループに対しても、自分に対してもストイックだから、星歴としての活動が軌道に乗ったところで彼女にとっての次のステップを考えられたらいいなと思っていたときに、akugiのプロジェクトが立ち上がったからちょうどいいかなと思って。最初は声をかけても断られると思っていたんですよ。

まるあうま 声をかけてもらったとき、正直にうれしかったし、断ろうなんて考えなかったです。星歴13夜のメンバーとして2年間やってきて、ダンスをもっとよくしたい、学びたいけどどうすればいいかわからない、みたいな状態が続いていて。そんなときにakugiのお話をいただいたので、これはめちゃくちゃいい機会になるなと思ったくらいです。

マロのことを知りたくなる「r u serious?」

──akugiとして最初に発表された曲は、昨年12月の「r u serious? feat. ヤマコマロ」です。この楽曲が発表された約1カ月後にマロさんがKAQRIYOTERRORに再加入することが発表されましたが(参照:KAQRIYOTERRORにヤマコマロが再加入)、楽曲の制作中にそういう話は……?

marikoyu 全然なかったんですよ。レコーディング時はマロがKAQRIYOに入ると誰も思ってなかった(笑)。これはMV撮影時の裏話なんですけど、のんのがマロの背中を押すようなことを言ったんですよ。

nainotokanon マロさんがKAQRIYOで歌っているときのライブ映像を観たら、それがものすごくカッコよくて。MV撮影時に「女性グループでやるにはもういろいろ厳しいかな」みたいなことをマロさんがおっしゃったので、「全然大丈夫ですよ。やりたいならやったらいいじゃないですか!」と声をかけたら、後日KAQRIYOに入ることが決まって(笑)。あとで「のんのちゃんのひと言で戻ることを決めたんだよ」と言われて、うれしかったです。

──KAQRIYOとして活動を共にしている心鞠さんは、マロさんのボーカルについてどう感じていますか?

marikoyu もともとマロの歌がすごく好きなので、マロの足を引っ張らないようにがんばりました(笑)。「r u serious?」は言ってみればKAQRIYOっぽい曲でもあるんですけど、一緒に歌ってみてマロの新たな一面が見れた気がする。MVの踊りもカッコよかったし、もっとマロのことを知りたくなるような1曲になったと思います。

──MVの振り付けを考えたのはのんのさんですか?

nainotokanon はい。akugiとして初めての踊りだから、どういうダンスがいいのか探り探りではありましたけど、「r u serious?」という曲がすごく力強い印象だったので、マロさんが踊ってカッコいい姿になるように意識しました。

まるあうま 最初に振り付けを見せてもらったとき、「難しくて踊れないよ!」と思っちゃったんです(笑)。星歴で踊る振り付けとは方向性が全然違うし、今までやったことがない動きも入っていたから、振りがなかなか入ってこなかったんですけど、のんのに何度も教えてもらってようやく踊れるようになりました。でも練習してるとき、すごく楽しかったなあ。

nainotokanon 私が驚いたのは、まうるさんも心鞠さんも4時間ぐらいぶっ通しで練習するんです。ちょっと水を飲むくらいしかしないで、全然休まないで練習し続けるのは本当にすごいと思う。

まるあうま がんばってたというより、時間を忘れていたんじゃないかな(笑)。

nainotokanon 立場上、ダンスのノウハウを教えることが多いんですけど、2人からはメンタル面の強さを教わりました。TOKYOてふてふの活動だけだったらこういう経験はできなかったので、akugiのレッスンは自分にとってもすごく学ぶことの多い、素敵な時間だと思っています。

癖のないポエトリーが必要だった

──MVが発表された順に話を聞くと、次は「デイドリームスピーカー feat. 色とわ」です。

marikoyu この曲はすごくひさしぶりに社長自身が作曲した曲なんですよ。しかもトラックをétéのオキタ(ユウキ)さんが作っていて、リリックはGESSHI類さん、ボーカルには星歴の色とわちゃんという、最高の布陣で作られた曲で。特に色とわちゃんの声がすごくキレイで優しい歌声なので、私も優しい感じに合わせています。

nainotokanon 2人の声の相性、すごくよかった。

今村 僕が作ったメロディが、男の子だとちょっと高くて女の子だとちょっと低いくらいの音域だったのもあって、そこに一番合うのがとわだったんですよね。それと、この曲のポエトリーは主張しすぎないくらいがちょうどいいと思っていて。例えばトラックを作ったオキタが歌ったらもっと主張の強い、突き刺すような歌になっちゃう。それがétéのよさであるんですけど、「デイドリームスピーカー」に関しては、もっと言えばakugiの楽曲に関してはそもそもメッセージ性をそこまで求めてなくて、気軽にBGMとして流していてスッと聴けるようにもしたくて。だから癖のない心鞠のポエトリーがちょうどよかった。

まるあうま

まるあうま 私、このクレジットを見たときにすごくテンションが上がって、とわにプレッシャーをかけといたんですよ。「akugiの曲よろしくね。期待してるよ」って(笑)。もしかしたらとわは低音に苦手意識を持っているかもしれないけど、この音域のとわの声がすごくいい響きをするんです。高音域でも低音域でも全部優しく包み込んでくれるイメージがあるし、心鞠さんのポエトリーもすごく心地よくて、夜にBGMとしてかけて落ち着いて聴ける感じがすごく好き。傑作だと思います。

nainotokanon 振り付けに関しては曲の雰囲気をそのままに、自然体のように見える動きを意識しています。曲を流して自然に思い付いた動きを振り付けとして採用しているので、逆にどう作ったか話すのが難しいくらいで、曲を聴いて振り付けを考えるまでビックリするくらい早かったんです。受け取ったまま素直に表現するのが正解な曲でした。