ASIAN KUNG-FU GENERATIONの“伝統芸能”、パワーポップへの飽くなき探究心 (2/2)

Oasis、Weezer、Kasabianにアジカン

──Weezerとアジカンは縁の深い2組ですが、皆さんの中でWeezerとの思い出というと?

後藤 いろいろありますけどね。2011年の「NANO-MUGEN FES.」(アジカン主催のフェス形式のイベント)にWeezerが出たときに、ステージ脇でマット・シャープ(ex. Weezer)と一緒にライブを観たことかな。「Say It Ain't So」(マット在籍中の1995年に発表されたシングル曲)を聴きながら、2人で大絶叫して(笑)。

喜多 マットもステージに出ればよかったのに(笑)。

山田 マットはゴッチのことが大好きだよね。

後藤 家に呼んでくれて、新曲を2時間くらい聴かされたこともあったな(笑)。

伊地知 「ホームタウン」(2018年12月発売のアルバム)で、リバース(・クオモ / Weezer、スコット&リバース)に曲を書いてもらったのも感慨深かったよね。デモ音源がリバースの弾き語りで。それをアジカンの曲として発表できたのがすごくうれしくて。

伊地知潔(Dr)

伊地知潔(Dr)

──アジカンが直接的に影響を受けているバンドですからね。

伊地知 僕はもともとそんなに知らなくて、大学生になってからメンバーの影響で聴くようになったんです。最初に聴いたのが、それこそ「I Just Threw Out The Love Of My Dreams」だったかな。「なんで女性ボーカル?」と思った記憶があります(笑)。それから1stアルバム、2ndアルバムと聴いていくうちにどんどん好きになって。

山田 第1回の「SUMMER SONIC」も印象深いですね。初めてWeezerを生で観て、すごく感動した。

後藤 メンバーみんなで行ったんですよ。Weezer、Snug、Teenage Fanclubも出てて。

山田 その5年後の2005年のサマソニのときは、Oasis、Weezer、Kasabianにアジカンという並びだったんですよ。そんな機会が訪れるなんて、学生時代は想像もしてなかったなあ。

喜多 そうだよね。Weezerは今もトレンドと戦いながら新作を出し続けていて。ギターロックバンドとして、ずっと気になる存在です。

後藤 去年リリースされた「OK Human」も「Van Weezer」もよかった。長く活動しながら、よくこんなスパンで新曲が出てくるよね。素直にすごいと思います。

「ブルートレイン」を彷彿させるシングル

──3曲目の「追浜フィーリンダウン」は喜多さん、後藤さんの共作だと伺いました。

喜多 これもWeezerとのつながりがある曲です。シングル「The Good Life」に入っている「Waiting On You」みたいな曲を書いてというリクエストがゴッチからあって。切ない、エモーショナルな感じの曲を意識して揉んでいたら、いつの間にかスケジュール的に“僕のカップリング曲待ち”みたいになっちゃって……。

喜多建介(G, Vo)

喜多建介(G, Vo)

後藤 だってさ、「曲はある」って言うのに一向に聴かせてくれないんだもん(笑)。

喜多 結局、デモ音源は作らず、みんなの前で弾き語りをして聴かせた曲です。それをもとにセッションしてできたのが「追浜フィーリンダウン」です。

山田 弾き語りの段階ではもっとゆったりしたテンポだったよね。

喜多 そうそう。いろいろアイデアを出してもらって、ツインボーカルがいいんじゃない?ということになって。

後藤 俺はできれば建さんに全部歌ってほしかったんだけど。

喜多 僕はゴッチに歌わせたかった(笑)。ゴッチが作ったラップ調のパートが難しくて。

山田 ゴッチのボーカル、独特の感じがあるからね。

左から山田貴洋(B, Vo)、伊地知潔(Dr)。

左から山田貴洋(B, Vo)、伊地知潔(Dr)。

──後藤さん、喜多さんのボーカルの色がしっかり出ていて。いい曲ですよね。

伊地知 うん、めちゃくちゃいい曲。これをシングルの表題曲にしてもいいんじゃない?ってくらい。

後藤 いい曲だよね。

伊地知 豪華なシングルになりましたね。「ブルートレイン」(2005年11月発売の7thシングル)も4曲入りの充実したシングルだったので、当時のことを思い出しました。

──先ほどから話に出ている「サーフ ブンガク カマクラ」の続編に関してはどのくらい制作が進んでいるんですか?

後藤 すでにほぼ録り終わってます。あとはコーラスを重ねるくらいなので、レーベルのOKをもらえたらすぐにでも出せますよ。実は「プラネットフォークス」の前に「サーフ~」続編の曲を書いていたので、もし何かきっかけがあれば「サーフ~」の続編が先にリリースされる世界線があったかもしれないですね。どちらが先に出てもおかしくないくらい、同時並行で制作が進んでいました。

“迷ったら負ける”シビアなツアー

──シングルの初回生産限定盤には、昨年開催された25周年ツアー「Quarter-Century」のライブ映像が収録されたBlu-rayが付属します。結成25周年ツアー、今振り返ってみるとどうでしたか?

後藤 体がバキバキでしたね。

喜多 (笑)。このツアーはひさびさに4人だけで回ったツアーだったんですよ。アジカンのサポートを8年間やってくれたシモリョー(the chef cooks me)が一旦離れるタイミングだったのもあり、セットリスト的にもかなり大変で。初日が札幌だったんですけど、いきなり燃え尽きちゃったよね。

後藤 ライブ自体がひさしぶりだったから、うれしくて高ぶっちゃったんだよね。そのままの感じで回ったら、東京に戻ってくるときは体がバキバキでした(笑)。4人だけだとさらに集中力が必要なんですよ。弦のピッチも大事になってくるし。

左から後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)。

左から後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)。

伊地知 「迷ったら負け」みたいなシビアさを感じながら回るツアーでした。ドラマーとして、演奏中のテンポをどうコントロールするか、判断しなきゃいけない役割があると感じているので。

後藤 例えば僕がちょっと前のめりのテンポになっていて、建さんがちょっと後ろ気味だったとき、最終的にどっちのテンポに合わせるのか決めるのが潔の役割なんですよね。

伊地知 そのときのテンションだけで決めるのではなくて、ライブ全体のことも考えなきゃいけないのも難しくて。例えば3曲目くらいで原曲よりテンポが上がったとしてその場は楽しくていいけど、その高揚感を引きずって次の曲もテンポが上がったまま進んでしまうと演奏が崩れてしまうことがある。「ここは俺が我慢して、テンポをキープしよう」みたいなこともけっこう必要で。

後藤 成長しましたよ、潔は。昔、BRAHMANと対バンしたときに、TOSHI-LOWさんにいいところを見せようとしたのか、潔だけ突っ走っちゃったことがあって(笑)。今はそんなことはまずないし、安心して任せられますね。その仕事の大変さは、こういう話を聞くと改めてわかりますよね。

伊地知 確かに以前は「エモければいい」みたいなところもあったかな。今は自分たちのスタミナも考えられるようになった。

山田 かといってエモさがないと、ライブとしては面白くないから難しいよね。そのバランスを取りながら楽しんでライブをやれるようになったのは成長した部分なのかな。去年のツアーでは、シモリョーが担っていたコーラスもメンバーで分担するようにして。

喜多 山ちゃんが歌うパートも増えたよね。

山田 声の要素も増えて、さらに表現の幅が広がったと思います。

──今はアルバム「プラネットフォークス」のツアー中ですね。ツアー後半に向けての意気込みは?

後藤 こういう情勢なので、1本も落とさずに完走するのが目標ですね。今回のツアーもけっこうな本数ありますが、2023年ももちろんツアー開催を予定しています。

──「サーフ ブンガク カマクラ」の続編も控えているし、来年もアジカンのパワーポップが楽しめる年になりそうですね。

後藤 そうしたいですね。いろんな音楽があって、それぞれの魅力があるけど、バンドで集まって曲を作ったり、演奏するのが楽しいという感覚は変わらないので。来年はデビュー20周年の年でもあるし。

山田 「サーフ」15周年も重なっているはず。

後藤 メモリアルイヤーじゃん。続編はもちろん出したいし、「サーフ ブンガク カマクラ」の完全再現ライブもやってみたいですね。

ASIAN KUNG-FU GENERATION

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プロフィール

ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアンカンフージェネレーション)

1996年に同じ大学に在籍していた後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)、山田貴洋(B, Vo)、伊地知潔(Dr)の4人で結成。渋谷、下北沢を中心にライブ活動を行い、エモーショナルでポップな旋律と重厚なギターサウンドで知名度を獲得する。2003年にはインディーズで発表したミニアルバム「崩壊アンプリファー」を再リリースし、メジャーデビューを果たす。2004年には2ndアルバム「ソルファ」でオリコン週間ランキング初登場1位を獲得し、初の東京·日本武道館ワンマンライブを行った。2010年には映画「ソラニン」の主題歌として書き下ろし曲「ソラニン」を提供し、大きな話題を呼んだ。2003年から自主企画によるイベント「NANO-MUGEN FES.」を開催。海外アーティストや若手の注目アーティストを招いたり、コンピレーションアルバムを企画したりと、幅広いジャンルの音楽をファンに紹介する試みも積極的に行っている。2015年にヨーロッパツアー、南米ツアーを実施した。2018年3月にベストアルバム「BEST HIT AKG 2 (2012-2018)」「BEST HIT AKG Official Bootleg "HONE"」「BEST HIT AKG Official Bootleg "IMO"」を3作同時リリース。2021年に結成25周年を迎え、2022年3月に10thアルバム「プラネットフォークス」を発表した。9月にはアニメ「四畳半タイムマシンブルース」の主題歌「出町柳パラレルユニバース」を収録したシングルをリリース。