暁月凛×DJ和|深く心地のいい闇に沈んでいく……没入型アニソンカバーアルバム、ここに完成

暁月凛が12月11日にコンピレーションアルバム「没入time mixed by DJ 和」をリリースした。

今回のアルバムには、幼い頃からアニメを愛してきた暁月によるアニソンカバー全20曲を収録。「空の境界」「神無月の巫女」「うた∽かた」など彼女がアニメの奥深さを知るきっかけになった作品から、「進撃の巨人」「Re:ゼロから始める異世界生活」「ソードアート・オンライン アリシゼーション」といった近年の作品までさまざまなアニメ作品の楽曲や、自身の「コノ手デ」のセルフカバーが選曲されている。今回、DJ和が暁月の思いを汲み取って選んだ曲を、ノンストップミックスに仕上げることによって作品全体で1つの流れを表現。音楽ナタリーではアルバムの制作風景について、暁月とDJ和に振り返ってもらった。

取材・文 / 杉山仁 撮影 / 星野耕作

世界が崩壊するアニメが好き

──「カバーアルバムを出す」というアイデア自体は、どんなふうに出てきたものだったんでしょう?

暁月凛 実は、デビュー前からずっとカバーアルバムを出したいと思っていたんです。自分が愛してきた曲をいつかカバーして出せたらいいなと。それで、デビュー前からスタッフの方たちにも「カバーアルバムを出したいです!」とお願いしていて。念願叶って、ついに実現しました。

暁月凛

──しかも今回は、DJ和さんがそのカバー曲をつないで、ノンストップミックスを仕上げています。なんでも、制作前に暁月さんとDJ和さんでアニメの話をしたそうですね。

DJ和 そうなんです。「どんなアニメが好きなの?」という話をして、そこで暁月さんの趣味がなんとなく理解できた部分がありました。僕はどちらかと言うと“陽アニメ”が好きで、「仕事に疲れて帰ってきて、かわいい女の子に癒されたい!」という感覚でアニメを観ることが多いタイプですけど、暁月さんはもうちょっと違うタイプの作品が好きそうだなと感じました。

暁月 世界が崩壊するようなタイプの作品が好きなんです(笑)。

DJ和 (笑)。それってつまり、作品の世界にグッと入り込めるような作品が好きだということですよね。そういうところから、選曲や今回の作品の世界観のヒントをもらいました。

──具体的には、どんな作品の話題が出たんですか?

暁月 えっと……なんの話をしましたっけ……?

DJ和 なんだったかなあ……とにかく、どういう曲が好きかを聞く中で、あくまでいい意味ですけど、「出てくる曲が、全部暗いなあ」という感じのイメージでした(笑)。そこで、底が見えない感じの方だなという印象があったと思います。今回のタイトルになっている「没入time」ともつながるように、彼女自身が没入できるタイプの、奥が深い人なんだろうなと思いました。

暁月 もともと、私は“楽しい”“うれしい”という感情よりも、“悲しい”“切ない”という感情のほうが美しいと思っていたんです。考えさせられる、哲学性があるような歌詞や物語に触れることが好きなタイプの人間なんですよ。

曲の世界観の中にもぐっていくような感覚

──今回のアルバムの選曲は、具体的にはどんなふうに進んでいったんでしょう?

DJ和 最初に何曲か、絶対に歌いたい曲を暁月さんに挙げてもらって、そこから僕のほうでも、それに合うような形で「こんな曲もどうですか?」と提案させていただきました。

暁月 和さんは幅広くいろんなアニメに対する知識がある方なので、好きなものをお伝えしたら、「じゃあこれも好きじゃないですか?」と、すごく的確に提案してくれたんです。

DJ和

DJ和 そうしたら、暁月さんが「その曲、私も好きです」と言ってくださったりして。そんなふうに選曲を進めていきましたね。暁月さんから、まずは「蝶」(PlayStation2用ソフト「零~紅い蝶~」のイメージソング)のような曲を提案していただいて。

暁月 ほかにもangelaさんの「Shangri-La」(「蒼穹のファフナー」オープニングテーマ)や「最高の片想い」(「彩雲国物語」エンディングテーマ)のような曲を最初に提案させていただきました。このあたりの曲だと、「最高の片想い」は明るめの曲ですけど、“片思い”だからこそ、切なさもあって、いいなあと思う曲で。それ以外にも、「アンインストール」(「ぼくらの」オープニングテーマ)や「oblivious」(「空の境界 第一章 俯瞰風景」エンディングテーマ)、「Re-sublimity」(「神無月の巫女」オープニングテーマ)のように、私が提案した曲をたくさんピックアップしていただきました。

DJ和 やっぱり、好きな曲をいくつか聞いていくと、音や雰囲気だけでなく、「暁月さんは、こういう要素に惹かれるタイプなんだな」「こういう種類の楽しみ方が好きな人なんだな」ということがわかってきますよね。そこから、作品の全体の方向性が見えていきました。

──それで「没入time」というタイトルが似合う作品になっていったんですね。

DJ和 やっぱり、暁月さんが好きな曲って、みんなで「おおー!」って盛り上がろうというタイプの曲ではないじゃないですか。

暁月 はい(笑)。アガるというよりは……。

DJ和 “没入していく”というか。「その曲の世界観の中にもぐっていくような感覚のある作品」という雰囲気が、よく表われているタイトルだと思いました。

暁月 個人的に「没入time」という言葉には、太陽が沈んでいくイメージもあると思うんです。太陽は沈んでまた昇る、没入してまた上昇するという、切ない魅力を感じます。