AISHA「I BELIEVE」インタビュー|ミスサンシャインが歌うのは、強くなるための“hold on”と“let go” (2/2)

私、「ディズニーベイビー」なんです

──それにしても、「必要なものはすべて自分の中にある」って、とてもいい言葉だなと思います。

すごい状態ですよね? サビの最後で「I BELIEVE The Sun will rise」と歌っているけど、太陽って朝になれば毎日昇ってくるから、それが当たり前だと思われがち。でも、本当はものすごい奇跡。偉大なエネルギーで作られた太陽と同じエネルギーが私のことも作ってくれたってことは、私も実はこの太陽ほどすごい存在なんじゃないかな(笑)。そうやって考えてみると、いつでも、何歳になっても奇跡は起きる。

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──先ほど、「なりたい自分思い浮かんで」というフレーズについて話してくれましたが、AISHAさんは「なりたい自分」像って何か具体的にありますか?

難しいこと聞きますね!(笑) えーなんだろう。例えば誰かを見て「この人みたいになりたい」と思うことはないですけど、「こういう優しい話し方ができるようになりたいな」「誰かが落ち込んだときは、あの人が私に言ってくれたような言葉をかけたいな」みたいに、仕事場やプライベートな場で日々出会う人たちのいろんな魅力をピックアップして、それを身に付けたときに「なりたい自分」になれるのかなと思いますね。

──それと、歌詞の中に「何度も砕けたけど 奇跡の瞬間もあったよ」というフレーズがありますが、これまでの活動の中で具体的にどんな奇跡がありました?

実は私のお父さんはトロンボーン奏者で、ダイアナ・ロスやマイケル・ジャクソン、スティーヴィー・ワンダーといった人たちとツアーをして、そのあと日本に移住してきたんです。その後ディズニーランドのブラスバンドに加入し、そこでシンガーをやっていたお母さんと出会って結婚したんですよ。

──へえ!

なので、私は「ディズニーベイビー」なんです(笑)。小さい頃は毎日ディズニーランドにいたので、いつかディズニーとお仕事がしたいとずっと思っていました。そうしたらコロナ禍になる直前に、ディズニーオーケストラのツアーのシンガーに抜擢してもらったんです。きれいな格好をしてすごく大きなホールでディズニーの名曲をたくさん歌う、そんな夢が実際に叶ったときは本当にうれしかったですね。やっとチャンスをつかめてうれしいなと思ったし、奇跡みたいだなと思いました。そういう奇跡の瞬間が私にはたくさんあります。

──まさに「必要なものは全て自分の中にある」ですね。サビの「I BELIEVE the Angels will guide me」はどんなところから出てきた言葉?

私はクリスチャンの学校で育ったので、神様に捧げる曲や、天使についての曲もたくさん覚えたんですね。なので常に天使が私を見守っていて、進むべき道に導いてくれるというふうに考えているし、それをそのまま歌詞にしました。

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──「I woke up alone in my beautiful home don't think about you no more」(この美しい部屋で私は一人目覚める。あなたのことはもう考えない)という歌詞は、どんなところから着想を得たのですか?

朝起きてたとえ一人ぼっちだったとしても、「あの人にあんなことをされた」「あんなことを言われた」とか、今まで人に言われて傷付いてきたことをもう考えなくなったし、そういうことをすべて手放して、「自分の好きなこととかをちょっとずつ見つけられるようになったよ?」と歌っています。ここ、恋人のことを歌っているように聞こえるかもしれないけど、今回はラブソングを作らないと決めたので違います(笑)。もちろん、そう捉えて聴いてもらっても全然構わないけど、親や仕事仲間からひどい言葉を投げつけられた経験があって、そのことを「手放したい」と思っている人たちにも聴いてもらいたいです。そして、ここでは人を許すことについても歌っていて。

──「許すこと」ですか。

はい。誰かに言われて嫌だった思い出にとらわれるのではなくて、「でもあの人は、以前はこんな言葉をかけてくれた」って。悪いこと1つにフォーカスするのではなくて、嫌なところもあったけど、実はいいところもたくさんあって、素敵な思い出をたくさんくれた。それも「hold on」するのではなく「let go」することなのかなと思いますね。私、ネガティブなことを考えると「どうしよう、どうしよう?」となって動けなくなるんですけど、そういうときはとりあえず深呼吸をして、「大丈夫だよ、今自分はここにいるんだよ?」と息に集中しながら思うことで少し落ち着ける。もしパニックになったときは、「It's okay relax and just breathe don't overthink I'm where I wanna be forgive who I was yesterday」(リラックスして、大きく深呼吸をしよう。あまり深く考え込まないで、私はいるべき場所にいるし、昨日までの自分をゆるそう)とも歌っているんです。

ジュリーからの電話

──この歌の主人公は、ジュリーという友人からの何気ない電話に「自分は1人じゃない」と気付かされます。

実際にジュリーという、中学生の頃からの友人がいるんです(笑)。その子は高校を卒業してアメリカに引っ越したのでほとんど会えないんですけど、いまだにしつこく電話をかけてくるんですよ。こっちは気分が乗らなくて電話に出たくないようなときでもお構いなし(笑)。出ると毎回FaceTimeでカメラをつけて「AISHA、どうした?」って言ってくれるんです。ああ、こうやって気にかけてくれる人がいる私はなんて幸せなんだろうと。ドヨーンとした気持ちだったのに、ジュリーと話しているうちにどんどん心が軽くなっていって。「そうか、私は一人ぼっちじゃないんだ、幸せなことだな」と気付かせてくれる大切な存在なんですよね。

AISHA

──自分がうれしいことをしてもらうと、違う誰かにその恩を返したくなりませんか?

なります! 自分が大事な人には、もっとリーチアウトしたいなと思っていますね。「大丈夫? 何してんの?」と、ひと言でもいいから声をかけてあげるのって大事なことだなと。みんな、生きていたらいろいろあるじゃないですか。つらいことや悲しいこと……。でも、ひと言声をかけてあげるとこんなにも元気になるものだなと。

──ところで、ボーカルレコーディングのときにはどんなことに気を付けましたか?

私、小さい頃から憧れてきたシンガーって、クリスティーナ・アギレラやマライヤ・キャリーみたいなディーヴァばかりなんですよ。思い切り歌い上げる人が好きで、私もついそういう歌い方をしようとしてしまうんですけど、この曲はとにかく優しく歌うように気を付けましたね。強く歌うのではなく、軽くふわっと歌う。サビはちょっと強めですが、私的にはけっこう優しく歌えた楽曲ですね。

──できあがってみて、今はどんな心境ですか?

私、リリース当日に改めてこの曲を聴いて、思わず号泣しました(笑)。何度も言いますが、「hold on」していたものを「let go」していくことの大切さを再確認させてくれるようなリリックになったかなと。今、自分が一番聴きたかったメッセージを、自分で発しているような状態になりましたね。

──今年もあとわずかですが、最後に今後の展望について聞かせてもらえますか?

今後は海外での活動も積極的に行っていきたいと思っています。私は今、南米発祥のフィットネスプログラム「ZUMBA」のオフィシャルパートナーを務めているのですが、その縁でアメリカ・フロリダで1万人のオーディエンスの前で歌わせてもらったんです。185カ国に1650万人のZUMBAユーザーがいらっしゃるので、アメリカだけでなくさまざまな国の人たちの前で歌えるのが今から楽しみですね。

AISHA

プロフィール

AISHA(アイシャ)

神奈川県生まれのシンガーソングライター。ミュージシャンであるアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、20歳のときに「AISHA.EP」でメジャーデビューを果たす。2020年1月には東京、兵庫、愛知で開催された「ウォルト・ディズニー・アーカイブス コンサート」にシンガーとして出演。現在は南米発祥の人気フィットネスプログラム「ZUMBA」のオフィシャルパートナーを務める。「ミスサンシャイン」の愛称で親しまれ、日本だけに留まらず世界を視野に活動を続けている。