「UC」のことすら考えてなかったかもしれない

──その楽曲はいずれもバンド感あふれるっていう意味では共通しているもののバラエティに富んでますよね。「ガンダムUC」のサントラではCyuaさんが歌っていたシンフォニックな「A LETTER」はハードロックテイストにリアレンジされているし、アルバム用の新曲「Next 2 U」や「Because we are tiny in this world」はフォーキーでかわいらしいし、その一方で「bL∞dy f8」は人力トランスだし（笑）。

澤野　一応音楽理論の教育も多少受けてはいるんですけど、バリバリのクラシック畑から出てきたわけではなくて、ルーツは洋楽ロックや日本のポップスっていう人間なので。「Aimerさんとバンドと一緒に何をやると楽しいかな？」って想像したとき、パッと思い浮かんだのがこのアレンジだったっていうだけなんです。こういうときにカッコいいことが言えないのが本当に申し訳ないんですけど、ほぼ無意識。思い付きですから。なんなら「UC」のことすら考えてなかったかもしれない（笑）。

昨日いいと思ったんだから、なんかいいんだろ

──でも先日のライブでは「ガンダムUC」の映像や音声をインサートしながら「UnChild」の収録曲をプレイしていて、それがちぐはぐだったかと言われれば、そんなことはもちろんない。1つの美しいパッケージになっていました。

Aimer　それは歌っている私自身も感じていました。劇中で流れている曲が多い上に、その劇中の曲の歌詞は「UC」の世界観に沿ったものだから、ちゃんと折り合っていた面もあるとは思うんですけど、でもその曲もサントラとはアレンジは違っていて。それでもちゃんと「UC」の世界を思い浮かべながら歌えるので、本当に澤野さんはすごいな、と思っていて。

澤野　ありがとうございます。いつもこうやってフォローしてくれるんですよ（笑）。何も考えずに曲を作ってる僕をAimerさんが助けてくれる。

──実際、「何も考えず」曲って作れるものなんですか？ 産みの苦しみみたいなものは？

澤野　今後とんでもないスランプに巻き込まれることになるのかもしれないんですけど、今のところ「UC」に限らず、音楽を作るときに苦労したっていう感覚になったことがないんですよ。言ってしまえば即興演奏の延長線上にあるというか。なんとなく「この曲作ろう」って思いながらピアノを弾きながら作っているので。あとせっかちなので、行き詰まるのが好きじゃないっていうのもあるのかもしれない。1回手が止まって「どうしようかなあ」って悩むのがイヤで「だったらとりあえず1回作っちゃえ！」って完成形まで持っていってしまうので。

──その曲を改めて聴いてみて「あれっ!?」ってなることは？

澤野　次の日、気になった箇所を直すみたいなことはありますけど、ボツにすることはないですね。性格的に「まあ、昨日いいと思ったんだから、なんかいいんだろ」って思えてしまえるので（笑）。

フラれるのには慣れているので正直に言ってください

──そのノリであのクオリティの曲を書かれたら、ほかの音楽家はたまったもんじゃない気もしますけど……。

Aimer　確かに（笑）。だからこういうことを言うと澤野さんは否定されるかもしれないんですけど、すごく天才肌の方なんだと思うんです。直感的、感覚的にあれだけの素晴らしい曲を書ける上に、「UC」の世界に寄り添うこともできるわけですから。

澤野　いやいやいや。……お恥ずかしい。

──ホントに否定した（笑）。楽曲やアンサンブルのレベルは当然高いし、お2人の関係もすごくいい感じだし、このプロジェクトって1回限りで終わらせるのもったいないですよね。

Aimer　ぜひまたご一緒したいですよね。

澤野　そうですね。今度オファーさせていただいたとき「いや、とりあえず今回は……」って言われなければ光栄だと思ってます（笑）。

──あはははは（笑）。

澤野　でもフラれるのには慣れてるんで、正直に言っていただいて大丈夫ですからね。もし僕に直接言いづらければ、表向き「やりたいです」って言っておきつつ、レーベルを通じて遠回しに「本当は……」って言っていただければ全然大丈夫なので（笑）。

──なんでそんなに卑屈なんですか（笑）。Aimerさんも「ぜひ」って言ってるのに。

Aimer　本当に私もまたご一緒したいのに（笑）。「RE:I AM」や「StarRingChild」でハードなロックっていうチャレンジをさせていただいて、今回の「UnChild」では、また新たに「bL∞dy f8」みたいなチャレンジもさせていただいて。繰り返しになっちゃうんですけど、澤野さんの曲を歌うときはいつもワクワクできるんです。私がこれまで歌ったことのないタイプの曲に対するアプローチの仕方に悩むことすら楽しみなので、またぜひご一緒させてもらえるとうれしいですね。