苦手だったワインを好きにさせてくれたのも彼女
──「ガールズトーク」はタイトル通り、居心地のいい女性同士の関係が見えてくる楽曲ですよね。
最初は恋愛系の曲にしようという話もあったんですけど、そういう歌詞をあまり書いたことがないからちょっと照れくさくて(笑)。なので私と丸ちゃんの間にある友情みたいなものを“ガールズトーク”というテーマで書くことにしました。けっこうディープな感じのメロディに合わせて、私が丸ちゃんに抱いている思いがリアルに出ましたね。
──歌詞に具体的なワードが出ていたので、実体験が色濃く反映されていそうですね。
そうなんです。だから、ちょっと恥ずかしいんですよ(笑)。歌詞の通り、丸ちゃんとはドライブをすることが多いし、苦手だったワインを好きにさせてくれたのも彼女ですからね。あと、私はめっちゃしゃべるイメージだと思うんですけど、本当に居心地のいい人の前だと実はあんまりしゃべらないんです。そういう部分もすごくリアルに書きました。
──「ガールズトーク」というタイトルなのに、一人称が“僕”で書かれているのが面白いところだなと。
そうなんですよ(笑)。女の子が2人そろったときって、ふと女の子じゃない瞬間が出ることがある気がしていて。どちら側にも、どこかしら相手への憧れがあるし、純粋な恋心とは違うけどちょっと惚れてる部分があるんじゃないかな。この曲で言えば、必然的に私がちょっと不器用な“僕”として立ち回ることになるんだろうなっていう、そんな感覚なんですよね。
──思いのこもった歌声がすごく胸に響きました。
ありがとうございます。これは本当に丸ちゃんと2人で話してるときの声の質感、音量などを大事にしながらレコーディングしました。ちょっと独り言に近い感覚で、でも相手への大切な思いがあるからぶっきらぼうにはならない歌い方を心がけましたね。
自分のめんどくさい部分を歌に
──もう1曲の「EXP」、これはラブソングのように受け取ったんですけど。
そう聞こえますよね。でも実際は違うんです。自分の中で心に区切りをつけたいものの比喩表現として、ラブソングっぽい書き方をしたんです。自分から離れればいいだけの話なのに、それができないもどかしさとか、天邪鬼さとか、めんどくさい部分を曲にしたくて。そういう思いは、“期限切れ”を意味する“Expired”から取ったタイトルにも込めています。もちろん恋愛の曲として聴いてもらっても全然うれしいんですけどね。
──ちなみにaillyさんの中にある区切りをつけたいものって?
……それはまた10年後ぐらいのインタビューで語ろうかな。今話すにはまだ刺激が強すぎると思うんで(笑)。
──了解です(笑)。この曲ではちょっとトーンを落とした、シリアスな声のニュアンスが出ていますね。
自分でもわかっている自分のめんどくさい部分、鬱陶しい部分を伝えられるように、淡々とした声色を意識してレコーディングしました。サウンドと相まって、今回のEPの中では一番、空間の広がりを感じられるボーカルスタイルになったかもしれないです。
aillyとして高橋優になりたい
──続いて4曲目には高橋優さんが手がけた「ダイナミクス」が収録されていますね。
yonige同様、高橋優さんの楽曲にも中学時代の不登校だった私はめちゃくちゃ支えてもらっていたんですよ。Gacharic Spinとして活動するようになってからお会いすることがあって、それ以降、ものすごく仲よくさせていただいていたので、今回は「私が学生時代、優さんの曲に救われてきたように、私も誰かを救える曲を歌いたいです」「誰かにとっての高橋優に、aillyとしてなりたいです」ということをお伝えして。この「ダイナミクス」という曲を作っていただきました。
──非常に高橋優イズムに満ちた楽曲ですけど、それをちゃんとaillyさん色に染め上げているのが素晴らしいなと。
本当に高橋優イズムを感じすぎる曲だったので、いただいたときには思わず泣いてしまいました。本当は私も歌詞を書いて共作として仕上げたい気持ちがあったんですけど、優さんは私以上に私の言葉を持っていて詰め込んでくださったので、その大切な言葉をそのまま受け取って歌うことに決めたんです。
──でも歌詞のクレジットを見るとaillyさんの名前も入っていますよね。
Dメロの部分だけ私が書かせてもらったんです。優さんと一緒にごはんを食べているときに、そのお店にギターがあったので一緒にDメロを作って、私が歌詞を乗せました。なので、一応共作という形にはなりましたね。
──歌詞に合わせて表情がガラッと変化するボーカルは、優さんのディレクションを受けて生まれたものなんですか?
はい。お忙しい中、歌録りにも立ち合ってくださって。パートごとに、「ここは志村けんさんっぽく」「ここは美しい感じで」「ここではめっちゃ怒って」「次は甘えた感じで」と細かくディレクションしてくださいました。ただ、その通りに一度録り終えたあと、「じゃあ今のをベースに、最後はアンジーが好きに歌ってごらん」と言われたんです。さらに「目の前に自殺しようとしている人がいるとして、その人に最後にかけられる言葉がこの曲の歌詞だとしたらどう歌うか。それを意識して、いってらっしゃい!」って。そこで思い出したんです。消えてしまいたいと思ったときに優さんの曲があったから踏みとどまれた過去の自分のことを。「あ、あのときのことだ!」って。そこで自分の中のスイッチがもう一度ガン!と入って、思いのままに歌うことができました。そのテイクが音源に使われています。
──高橋優さんのプロデュース能力がaillyさんの新たな引き出しを開けてくれたんですね。本当に生きる力をくれる曲になっていると思います。
アーティストとしても、1人の人間としても優さんは本当に素晴らしいなって、改めて思いました。自分の範疇ではなかったところまで、aillyの歌を引き延ばしてくれた実感があったので、本当にうれしかったですね。
地続きな日常、引き算の美学
──そしてEPは「Radiory」を経て、ラストナンバー「つぎはぎ」で幕を閉じます。この曲はコンペで選ばれたんですよね。
そうなんです。プロアマ問わず、一緒に曲を作ってくれる方をラジオで募集したんですよ。私が書いた歌詞に曲をつけていただく形で。ものすごくたくさんの応募があった中、大学生の小野凪くんが作ってくれたこの「つぎはぎ」を選ばせていただきました。
──決め手になったのはどんな部分だったんですか?
“卒業”をテーマに書いた私の歌詞に対し、ものすごくシンプルで美しいメロディを付けてくれたところがすごく気に入ってます。卒業って人生における大きな転換期だから、感動的なアプローチもできると思うんですよ。でも、実際は地続きな日常のワンシーンでしかなかったりもするので、そういう部分に凪くんのシンプルなメロディがすごく合ってるなと。卒業って日常でもあるなと、すごく思えたんです。そのメロディに感銘を受けたので、レコーディングするにあたって最初に書いた歌詞をちょっと書き直してブラッシュアップしました。
──時計の針の音のように刻まれるギターの音が印象的な、ある種、淡々としたアレンジもメロディと歌詞にマッチしていますね。
卒業という節目があったとしても人生は地続き、その先もまだまだ続いていくんだよということを伝えたかったので、それを表現してくれたあのギターの刻みには私自身、グッときちゃいましたね。引き算の美学というか、シンプルに言葉を届けるアプローチができたことは、aillyとしてすごく大きな経験になりました。ほかの曲たちを通してaillyのボーカルスタイルが自分の体に浸透した実感はあったんですけど、この曲ではまた新たなニュアンスが出せた気がします。収録曲の中では一番柔らかい声が出ているんじゃないかな。
──今回のEPは、aillyというアーティストの本質と可能性を強く感じさせる1枚になりましたね。
そうですね。aillyが心の内側でどんなことを思っているのかを表現するために、ここでしっかりと裸になっておく必要があるなと。その結果、アンジーとはまた違う、aillyだからこその表現を詰め込んだ作品になったと思います。“ailly”をタイトルに掲げるにふさわしい仕上がりになりました。
──3月から4月にかけては対バンスタイルの1stツアー「Hello ailly!!」の開催も発表されていますね。
そうなんです。東京は同世代のバンドConton Candyと、大阪はEPで一緒に楽曲制作をさせてもらったyonigeと、広島はまさかのRCCラジオアナウンサー・横山雄二さんと対バンさせていただきます。そしてファイナルの愛知には、最高な先輩バンドに出ていただけることになったので、ぜひ楽しみにしていてください!
──この先の未来についてもいろんなビジョンを思い描いてますか?
もちろんです。Gacharic Spinとしてはもう7年も活動させてもらっているので、夢ばかり抱くのではなく現実を見ることの大事さもちゃんとわかってはいます。でもaillyは新人ですからね(笑)。ワンマンでZeppを回りたいし、20代のうちに日本武道館に立ちたいし……いろんな夢があります! Gacharic Spinとはまた違った形で、一歩一歩周りの景色をしっかり見ながら、出会う人を大切に、その人たちに恩返しできるような活動をしていこうと思っています。
公演情報
Hello ailly!! 1st Tour 2026
- 2026年3月6日(金)東京都 下北沢シャングリラ
<出演者>
ailly / Conton Candy - 2026年3月13日(金)大阪府 梅田 BANGBOO
<出演者>
ailly / yonige - 2026年3月14日(土)広島県 SIX ONE Live STAR
<出演者>
ailly / 横山雄二(中国放送アナウンサー) - 2026年4月4日(土)愛知県 CLUB UPSET
<出演者>
ailly / OKAMOTO'S
プロフィール
ailly(アイリ―)
Gacharic Spin・アンジェリーナ1/3のソロプロジェクト。2025年9月に「Radiory」でソロデビューを果たす。同曲を収録した1st EP「ailly」を2026年2月にリリース。3月にライブツアーを行う。現在TOKYO FM / JFN系で放送中の帯ラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」に“アンジー教頭”としてレギュラー出演中。
ailly (@ailly.official) | Instagram


