9. 朝になったら削除します
コロナ禍によって世界の状況が変化していく様子を眺めながら、時代に寄り添った言葉を盛り込みつつ、自分の1つの軸であるラブソングとして書き上げた曲です。配信リリースしたのが去年の8月なので(参照:足立佳奈「朝になったら削除します」インタビュー)、ちょっと懐かしい感じがありますね(笑)。
──シチュエーションをリアルに想起させる歌詞がこの曲の大きな魅力ですよね。
これまでも情景の見える歌詞を書くことは意識していましたけど、この曲はかなり具体的なワードを使っていますね。そういう書き方をすると聴き手の方により伝わりやすいし、自分としても楽しいんだと気付くことができたところもあって。この曲での気付きは今回のアルバムにもつながっていると思います。
──1年以上前のご自身の声を改めて聴くとどうですか?
なんか張りがあるなと思いました(笑)。コロナ禍で活動が止まってしまった時期もあったので、歌えること自体がうれしかったんでしょうね。切ない曲ではありますけど、ちょっと前向きな気持ちも声には含まれているかなって。これまでライブでは何度も歌っているんですけど、今はもうちょっと落ち着いた雰囲気が出てきているような気もします。
10. まちぼうけ
──今年2月に配信された曲ですね(参照:足立佳奈「まちぼうけ」インタビュー)。「たとえあなたにとって1番の存在になれなかったとしても、あなたのそばにいたいんだ」という歌詞の内容が強く印象に残ります。
年齢を重ね、環境が変化することで、恋愛の形もいろいろ変わっていくんだなということを、歌詞を書きながら改めて感じた曲でした。「私の思いを歌ってくれてありがとう」「この曲すごく好き」という声を友達からたくさんもらえています(笑)。
──トラックがすごくシンプルなので、感情のこもった歌声がより鮮明に響いていますね。
出だしはつぶやくように歌い、サビでは一気にエモーショナルになるという1曲の中での感情の変化を強く意識してレコーディングには臨みました。いかに自分らしい歌い方ができるのかを、アレンジをしてくださったCarlosさんといろいろ相談しながら作り上げていった感じですね。
11. ライオンの居場所
──これは歌詞のインパクトがすごいですね。パッと聴き、わがまま三昧の女王様のような女性像が浮かんでくるんですけど。
あははは。ラブソングとして考えるとそういう捉え方になると思うんですけど、実はこの曲に出てくる“あなた”はお母さんなんですよ。私は家族の前ではすごく甘えるし、ときには怒ったりもする。でも、東京での暮らしはある意味、弱肉強食だから、誰にも甘えることなんてできないわけで。それがなんとなくライオンの生き方に似ているなと思って、この歌詞を書いたんですよね。ライオンも野生だと自分でエサを調達しなきゃいけないから大変だけど、動物園にいればごはんが自動的に出てきて甘えながら暮らせるじゃないですか(笑)。
──なるほど。それを恋愛っぽい視点で描いてみたと。
そうです。お母さんに限定して歌詞を書くと、かなりマニアックな曲になってしまうと思って。プロデュースという立場で参加してくださったハマさんからも、いろいろアドバイスをいただきながら、幅広い方々に届くような世界観に仕上げました。
──この曲でもハマさんや、澤村さんをはじめとするSANABAGUN.のメンバーがレコーディングに参加されていますね。
「ノーメイク」での経験が忘れられなくて、アルバムでももう1曲お願いすることにしちゃいました。皆さんとビデオ通話で、曲の方向性について夜な夜な語り合ったのが楽しかったですね。セッション感のあるバンドサウンドを軸にしつつ、私が作ったピアノのデモの雰囲気を残したアレンジにしていただけたのがうれしかったです。オケのレコーディングにも立ち会わせてもらったんですけど、もうホントにカッコよくて。思わず立ち上がって「すごい!」って言っちゃいました(笑)。そのオケに合わせて仮で歌ったときに出たフェイクを褒めていただいて、それを本番で生かせたのもいい思い出です。
12. 雨の日は
──ラストを飾る1曲も、足立さんが作詞・作曲・編曲を手がけていますね。
この曲は“虹”をテーマに作りました。虹ってすごくきれいだけど、忘れた頃にフッと現れるものじゃないですか。それって過去の恋人にも重なるような気がしたんですよね。ふとした瞬間に思い出したり、ばったり出会ったりしちゃうという。実際に虹を見た日の夜、ワンコーラス分を一気に書き上げましたね。
──ご自身でアレンジまで手がけることは楽しいですか?
楽しいです! 正解があるわけじゃないから難しさももちろんあるんですけど、「自分でいいと思ったらこれでいいんだ」という気持ちで最後まで作りきることができるのは本当に楽しいんですよね。
──アレンジをほかの方に投げるのか、それとも自分で最後までやりきるのか。現状、その線引きはどこにあるんですか?
曲を作ったとき、そこにどんな音を加えていきたいかのイメージがパッと見えてくるんです。そこでまだまだ足りない音がある場合はアレンジャーの方に力をお借りしようと思うし、逆にもうあまりイメージが湧いてこないときは自分だけで完結してもいいかと判断する感じですね。「雨の日は」はまさに後者の感じでした。まだまだ勉強中ではありますけど、アレンジは今後もどんどんやっていきたいですね。それによって私らしさがもっと色濃く出たらいいなと思うので。
──今後も楽しみです。そして今作のリリースツアーが来年2月から4月にかけて開催されますね。
はい。全国で9公演行います。皆さんにこのアルバムを生で聞いてもらいたいなと思っているで、ぜひ皆さん会場でお会いしましょう。
ライブ情報
「ADACHI KANA LIVE TOUR 2022~あなたがいて~」
- 2022年2月26日(土)東京都 WWW
- 2022年3月11日(金)大阪府 umeda TRAD
- 2022年3月12日(土)石川県 Kanazawa AZ
- 2022年3月20日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
- 2022年3月21日(月・祝)北海道 cube garden
- 2022年3月27日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2022年4月2日(土)広島県 広島セカンド・クラッチ
- 2022年4月3日(日)福岡県 DRUM Be-1
- 2022年4月8日(金)愛知県 DIAMOND HALL
プロフィール
足立佳奈(アダチカナ)
岐阜県海津市出身のシンガーソングライター。各SNSのフォロワーが計130万を超えるなど若者から幅広い支持を得ている。2014年にLINE×SONY MUSICオーディションで12万5094人の中からグランプリを獲得し、2017年8月にシングル「笑顔の作り方~キムチ~ / ココロハレテ」でメジャーデビュー。2018年10月に1stアルバム「Yeah!Yeah!」、2020年2月に2ndアルバム「I」、同年8月に配信シングル「朝になったら削除します」を発表した。2021年2月に「まちぼうけ」、3月に「キミとなら」、4月に「ノーメイク」、8月に「Film」とシングルを配信リリース。同年11月に3rdアルバム「あなたがいて」を発表した。
足立佳奈 (@kana1014lm) | Instagram