足立佳奈が3rdアルバム「あなたがいて」で見つめ直した、たくさんの出会いと素の自分 (2/3)

5. おやすみ

作曲とアレンジをしてくださったMichael Kanekoさんとご一緒するのは、前回のアルバム「I」に入っていた「Call me」以来、2度目になりますね。実はこれ、「Call me」のあとにいただいていて、1年半くらい温めていたものなんですよ。そのときにはもう私の歌詞も乗っていた状態だったんですけど、今回アルバムに収録するにあたって書き直しました。22歳になった自分として、「もっとこうしたい、ああしたい」という欲がでてきたので。部分的に残しているフレーズもありますけど、主人公の年齢感も含め、けっこうガラッと変えましたね。それによってMichaelさんがアレンジもブラッシュアップしてくださいました。

──終わった恋を“僕”目線でつづった歌詞に合わせて、歌声もすごく切ないですよね。

失恋の悲しみを思い出している曲なので、そういった表情が自然と声に出ました。ただ、この曲はよりナチュラルな歌声を出すことをすごく意識した部分もあったんですよ。私は普段、家では床にあぐらをかきながらギターを弾くことが多いので、この曲のレコーディングでもブースであぐらをかきながら歌ったんです(笑)。普通に立った状態でも歌ってみたんですけど、この曲ではやっぱり座って歌ったほうがマッチしていたんですよね。ここでの歌を聴いてMichaelさんが「歌い方が変わったね」とポジティブな意味で言ってくださったのがうれしかったです。「なんかあったの?」と聞かれたので、「いや自分でも何があったかはわからないんですけど」と答えました(笑)。

足立佳奈

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6. キミとなら

──「クノール® スープDELI®」のタイアップソングとして、wacciとのコラボによって生まれた楽曲ですね。

wacciの橋口(洋平)さんとはラジオ局でよくお会いしていて交流もあったので、以前からいつかご一緒してみたいなと思っていて。クノールさんのお話をいただいたときに私からコラボをお願いさせていただきました。歌詞に関しては、橋口さんが書いてくれたものを見せていただいて、要所要所で私からのアイデアを加味してもらった感じですね。曲も含め、wacciさんならではの温かさを感じさせてくれる仕上がりになったと思います。

──橋口さんとのデュエットはいかがでした? 細かく掛け合う部分もありますが。

すごく楽しかったです。会話のように歌でキャッチボールするパートは私にとってすごく新しくて。ヘッドフォンから聞こえる橋口さんの歌声が心地よかったので、歌いながらめちゃくちゃ心があったまっちゃいました(笑)。サビでは橋口さんがメインを歌って、私がハモりでサポートさせてもらったのも新鮮でしたね。

──このコラボを通して学んだこともありましたか?

ありました! 私は1曲をいくつかのブロックに分けてレコーディングすることが多いんですけど、橋口さんはまるっと1曲歌われるんですよ。ある意味一発録りみたい感じというか。そこで修正点が見えたら直しつつ、さらに何度か歌って完成という流れで。そこでの集中力にはただただ驚きでしたし、勉強にもなったんですよね。「あ、こういう録り方もアリなんだ」という発見は、その後の制作に大きく影響したところもありました。

足立佳奈

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7. 2歳の記憶

──この曲では渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)さんのピアノと一緒に一発録りをされたそうですね。

そうなんです。まさに「キミとなら」での経験があったからこそ、挑戦することができたレコーディング方法だったと思います。シュンスケさんと一緒にブースへ入り、目を合わせながら「せーの」で歌うのはすごく緊張しましたね。でも、歌詞の内容的にも一発録りをしてよかったなとすごく思いました。この曲では、噓のない思いをしっかり歌に込めたいと思っていたので。

──歌詞では足立さんのパーソナルな出来事がリアルに描かれていますよね。

父親のことを書かせてもらうのは初めてですね。これまでの人生があったからこそ書ける歌詞を残したいと強く思っていたので、自分の記憶に鮮明に残っていることを言葉にして書いていきました。聴く方によっていろんな受け取り方があるとは思うんですけど、私にとってはものすごく大切な1曲。本当に書けてよかった、歌えてよかったなと思いますね。

──曲中に出てくるトイピアノは足立さんの演奏なんですよね?

はい。トイピアノの音を入れることで、幼い頃の楽しい雰囲気も、ちょっと切ない雰囲気も出るんじゃないかなっていうアイデアをシュンスケさんからいただいて。よりいい雰囲気になりましたね。

足立佳奈

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8. ノーメイク

これはドラマ「理想のオトコ」(テレビ東京系で2021年4~5月放送およびParaviで配信中)のオープニングテーマとして作った曲で。ドラマは“30代独身女性”がテーマになっていて、結婚に対しての焦りの気持ちなどが描かれていたんですよ。でも、自分にはまだそういった経験がなかったので、曲を作るにあたって周りにいる30代の女性の方々にたくさん取材をして。それによって、ドラマの内容にすごく寄り添った1曲に仕上げることができました。今後、自分が年齢を重ねていくことでより説得力を持って歌える曲になるんじゃないかなという楽しみもありますね。

──OKAMOTO'Sのハマ・オカモトさん、SANABAGUN.の澤村一平さんがレコーディングに参加されていることも大きな話題になりましたね。

ずっとお世話になっているCarlos K.さんが作ってくださった曲は打ち込みのままでも全然カッコいいものだったんですけど、今回は生の音で、ちょっと後ろめにノリのあるリズムで歌ってみたいなと思ったんです。そこで、私のライブに参加してもらっているサトウカツシロさん(BREIMEN)に加え、ハマさんと一平さんにお声がけさせていただきました。これまでの自分にはなかった雰囲気をサウンドでしっかり出していただくことができたので、歌に関してもすごく大人っぽく歌えたと思います。