ナタリー PowerPush - ACO
最高の仲間たちと描き出した、飾らない今の私
商業的な音楽活動をしてるわけではないから、媚びる対象はいない
──そして、「TRAD」にはカバー曲が3曲。まず、Massive Attackの「TEARDROP」はそれこそトリップホップの名曲ですし、「Lover, You Should've Come Over」を取り上げたジェフ・バックリィはオルタナティブ時代の傑出したシンガーソングライターですよね。
取り上げる曲は悩んだんですけど、あまり他のアーティストが取り上げていない曲がいいなって。ジェフ・バックリーのカバーは既にライブでやっていたので、今回、それをそのまま収録することにして。もう1曲はニール・ヤングと迷って、Massive Attackの「TEARDROP」を選んだんですけど、ベースラインだったり、バンドアレンジが素晴らしくて、歌うのが楽しかったです。
──そして、「Kiss」を取り上げたスカウト・ニブレットは2000年以降に登場したイギリスの女性ソングライターですが、ここではtoeの山㟢(廣和)さんを相手にデュエットされていますよね。
この原曲は酔いどれ系の男性シンガーソングライター、ウィル・オールダムとのデュエットなんですね。だから、この曲を取り上げることに決めて、誰かいい相手がいないかなって思ったんですけど、去年toeの「月、欠け」という曲に参加させていただいて一緒に歌ったこともあって、すぐに山ちゃんにお願いしようと思いました。山ちゃんはtoeのライブでもウイスキーをちびちび飲みながら演奏しているし、歌声もダンディでセクシーだから、相手役としてはぴったりだったんです。だけど、ミックスのときに「この歌、セクシーだから、もっと大きめに聴かせようよ」って言ったら、「やだ、恥ずかしい」って(笑)。恥ずかしいなら歌わなきゃいいじゃん!って思いつつ(笑)、耳元で震えて聞こえるようなミックスにしたんです。
──スカウト・ニブレットもプロデューサーはNirvanaを手がけたスティーヴ・アルビニだったりして、オルタナティブな世界を今に伝えるアーティストであることを考えると、取り上げた3曲には90年代の音楽に対するACOさんの愛情が反映されているかと。
ああ。それは間違いなくありますね。ただ、それは媚びてるわけではないですよ。私は商業的な音楽活動をしてるわけではなくて、趣味の延長線上でやってるから(笑)、媚びる対象はいないというか、私の音楽を聴いてくれている人を裏切るつもりはないけど、その人たちは別に媚びる私を求めていないだろうし(笑)。
年齢や経験が持つ説得力は歌に出るもの
──さらに新曲が2曲。「赤いよ」と「Industrial Society」はカバーやセルフカバーを踏まえて、どのように作った曲なんですか?
力まずに歌うことを考えて書いた「赤いよ」に対して、「Industrial Society」は今の世相を反映させて作りました。完成したあと、ちょっと井上陽水さん的な曲だなと我ながら思ったんですけど(笑)。この歌詞は私にとっては珍しいものだし、「年相応にこういう歌詞を書いてもいいんじゃないかな」って思ったんですね。その2曲は「LUCK」の流れの曲、ストレートだし、シンプルな曲ですよね。今は作品とライブを直結で考えているので、作り込んでしまうと、ライブで演奏するときに困ってしまうことになるし。ライブを観に行ったときに作品とライブが違ったら、自分はがっかりするタイプなので、ライブを意識したアレンジになっています。
──そして、セルフカバーしている最後の曲「こわれそうよ」はACOさんが初めて作った曲なんですよね。
そう。15~6歳のときに作ったものなんですよ。だから、最初は多少恥ずかしかったんですけど、でも、長い月日を経ても、当時の自分の気持ちはわかるなーって。まぁ、若いときの曲だから言葉が足りなかったりするんですけど、今となっては恥ずかしさはないですね。だって、「そう思ったんだもん」っていう(笑)。なぜ今回、この曲を取り上げたかというと、当時、今回のようなシンプルなアレンジでやりたかったのに叶わなかったから、それを実現したかったというのが一点。それから、ここで歌われている歌詞が今身に染みてわかるというか、大人になった私が歌ってみたらどうなのかなって。鳴らし続けると音色が変わる楽器のように声も変わるし、年齢や経験が持つ説得力は歌に出るものだから。
──その普遍的な説得力が「TRAD」というアルバムタイトルに変換されているというか。
「2010年代版クラシカル」というテーマを打ち出した前作の「LUCK」からズレたことをやりたくなかったので、「クラシカル」と近いニュアンスの「TRAD」というアルバムタイトルを付けたんです。今回はレコーディング前から今の私とこのバンドメンバーなら、こねくりまわさずにストレートかつシンプルに揺るぎないものができるだろうなと思っていたんですけど、自分の想像以上の作品ができたと思いますね。
収録曲
- 真正ロマンティシスト
- メランコリア
- SPLEEN
- 悦びに咲く花
- TEARDROP
- 赤いよ
- Industrial Society
- Lover, You Should’ve Come Over
- Kiss
- 雨の日の為に
- 4月のヒーロー
- こわれそうよ
収録曲
- Showtime
- LUCK
- Holyman
- Yes
- Say It
- 正しい答え
- 砂漠の夢
- No
- Lonely Boy
- Innocent
- 悦びに咲く花
- Control
- 4月のヒーロー
アコースティック・ミニライブ&サイン会
- 2013年12月8日(日)
- 東京都 タワーレコード新宿店7F イベントスペース
START 15:00 - 2013年12月13日(金)
- 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
START 19:00
TRAD live 2014
- 2014年1月31日(金)
- 東京都 Shibuya O-EAST
OPEN 18:30 / START 19:30 - <出演者>
ACO / toe(スペシャルゲスト) - 2014年2月2日(日)
- 京都府 京都磔磔
OPEN 17:00 / START 18:00 - <出演者>
ACO / toe(スペシャルゲスト)
ACO(あこ)
1995年にシングル「不安なの」でメジャーデビューした女性シンガーソングライター。1999年にDragon Ashのシングル「Grateful Days」にゲスト参加したことでその名を広めた。同年リリースされた砂原良徳プロデュースによるシングル「悦びに咲く花」がテレビドラマ「砂の上の恋人たち」の主題歌として話題になり、同曲を収めたアルバム「absolute ego」が大ヒットを記録。その後もエイドリアン・シャーウッドやMum、澤井妙治(portable [k]ommunity)、渋谷慶一郎などをプロデューサーに迎えてエレクトロニカに傾倒した作品を発表していく。2005年には澤井と新バンドGolden Pink Arrow♂を結成。その後再びソロ活動を開始し、2010年に4年半ぶりのオリジナルアルバム「devil's hands」を、2012年にフルアルバム「LUCK」を発表。2013年11月にはスタジオアルバム「TRAD」とライブアルバム「LIVE LUCK」を同時発売した。