ナタリー PowerPush - ACO
最高の仲間たちと描き出した、飾らない今の私
90年代も暗かったけど、今よりもっとポップな冷め方だった
──作品を録る前提として、今のACOさんとバンドメンバーが共有できているものを言葉にするならどういうことなんでしょうね? 推測するなら、皆さんにグランジやオルタナティブといった90年代の音楽から受けた影響は少なからずあるのではないかと。
音楽に限らず、映画やファッション……そういうカルチャー全般で共有しているものがたくさんあって。例えば、曲のアレンジを映画に例えてもスムーズに通じるから話が早かったりするので、そういうこともあるかもしれないですね。振り返るとグランジ、オルタナティブの時代というのは、日本だとバブルが弾けて、経済的に大変だった暗い時代ですよね。ただ、音楽産業は盛り上がっていたから、若い子がもっと複雑な冷め方をしている今と比べると、当時はもっとポップな、わかりやすい冷め方だった気がしますね。音楽では、例えばNirvanaやBeck、Beastie Boys、映画だったら「ナチュラル・ボーン・キラーズ」や「トレインスポッティング」……そういう作品を振り返るとカラフルな印象があります。
──確かに当時はエッジーな存在だったグランジやオルタナティブも時を経て、ある種のポップ感覚が際立ってきているというか。そんな時代にあって、ACOさんは1995年にデビューされましたよね。
そう、18歳のとき。高校を卒業して、就職するわけでも、大学に行くわけでもなかったし、音楽をやることが自立するための早道だったから、ホント何も考えてなくて(笑)。だから、当時の大人たちから、R&Bだ、ディーヴァだって言われて、「そういうの流行ってるんですか。へえー」って感じ(笑)。もちろん、R&Bやヒップホップは今でも好きですけど、デビューと同時に地元の名古屋から東京に出てきて、吸収するものは多かったし、いろんな音楽を聴いていたんですよ。
歌手って言われてることに違和感がある
──そして、今回、スタジオ盤のセルフカバーは、1999年の「absolute ego」と2001年の「Material」の曲でほぼ占められていますが、その2枚は自分のやりたい音楽が明確になった時期の作品だからこそ、今回取り上げたということなんですよね?
そう。その時期に音楽家としての自覚が出てきたということもあるし、1999年にDragon Ashの「Grateful Days」がヒットしたことで、周りがようやく私の言うことに耳を傾けるようになって、自分のやりたいことがやりやすいようにもなった。それからまりんさん(砂原良徳)が助言してくれるようになった状況も当時の自分にはよかったんですよね。だから、その2枚は自分にとって大事なアルバムだし、その時期の曲を今の私のモードで形にしてみたかったんです。
──ちなみにその2枚はACOさんが当時形容されていたアメリカのディーヴァ系ソウルでもなんでもなく、トリップホップだったり、重心の低いダブワイズなUKソウルの流れを汲むものですよね。
そうなんですよね。だって、歌唱力のあるディーヴァっていうことでいったら、もっと歌のうまい人はたくさんいたし(笑)、私は歌も歌うけど、曲と歌詞、アレンジを含めた表現に意識が向かっていたから、歌手って言われてることに違和感はあるんですよね。あと、例えば、「悦びに咲く花」はまりんさんのトラックのイメージが強いと思うんですけど、その元となる曲はまりんさんのトラックと違うものとして存在しているので、今回、バンドアレンジを施すことで「私の曲はこんな感じでも聴けるんです」ということを提示したかった。そのセルフカバーのバンドアレンジに関しては、私がメンバーにデモを渡して、すでにライブでやっていたので、そこまで時間はかかりませんでした。ただ、今回のアルバムを録るにあたって、アレンジがシンプルなだけに雰囲気だけでごまかせないんですよ。だから、ディーヴァではない自分なりのいい歌、例えば玉置浩二さんのように抜くところを抜いて抑揚を付けたり、ストーリー性を意識した歌を目指したつもりです。
収録曲
- 真正ロマンティシスト
- メランコリア
- SPLEEN
- 悦びに咲く花
- TEARDROP
- 赤いよ
- Industrial Society
- Lover, You Should’ve Come Over
- Kiss
- 雨の日の為に
- 4月のヒーロー
- こわれそうよ
収録曲
- Showtime
- LUCK
- Holyman
- Yes
- Say It
- 正しい答え
- 砂漠の夢
- No
- Lonely Boy
- Innocent
- 悦びに咲く花
- Control
- 4月のヒーロー
アコースティック・ミニライブ&サイン会
- 2013年12月8日(日)
- 東京都 タワーレコード新宿店7F イベントスペース
START 15:00 - 2013年12月13日(金)
- 大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
START 19:00
TRAD live 2014
- 2014年1月31日(金)
- 東京都 Shibuya O-EAST
OPEN 18:30 / START 19:30 - <出演者>
ACO / toe(スペシャルゲスト) - 2014年2月2日(日)
- 京都府 京都磔磔
OPEN 17:00 / START 18:00 - <出演者>
ACO / toe(スペシャルゲスト)
ACO(あこ)
1995年にシングル「不安なの」でメジャーデビューした女性シンガーソングライター。1999年にDragon Ashのシングル「Grateful Days」にゲスト参加したことでその名を広めた。同年リリースされた砂原良徳プロデュースによるシングル「悦びに咲く花」がテレビドラマ「砂の上の恋人たち」の主題歌として話題になり、同曲を収めたアルバム「absolute ego」が大ヒットを記録。その後もエイドリアン・シャーウッドやMum、澤井妙治(portable [k]ommunity)、渋谷慶一郎などをプロデューサーに迎えてエレクトロニカに傾倒した作品を発表していく。2005年には澤井と新バンドGolden Pink Arrow♂を結成。その後再びソロ活動を開始し、2010年に4年半ぶりのオリジナルアルバム「devil's hands」を、2012年にフルアルバム「LUCK」を発表。2013年11月にはスタジオアルバム「TRAD」とライブアルバム「LIVE LUCK」を同時発売した。