ナタリー PowerPush - absorb
テーマはずばり“学生生活” ミニアルバム「学園」リリース
今年も82校もの卒業式で歌われた「桜ノ雨」という名曲をきっかけに、全国の学生たちとのつながりを深めているabsorb。そんな彼らがこのたびリリースしたのは、学生生活をテーマにしたコンセプトミニアルバム「学園」。そこには、その名のとおり、学園を舞台に繰り広げられるさまざまな出来事が7編の楽曲として収められている。
現役学生は限りある時間の素晴らしさを噛みしめながら、すでに学校を卒業している人はあのとき確かに存在していた輝かしい時間に思いを馳せながら、absorbが描き出した世界を堪能してほしい。
取材・文/もりひでゆき
学校をテーマにした作品を作りたかった
──もはや卒業ソングの定番とも言える「桜ノ雨」(2008年リリースのメジャーデビュー曲)から派生したイベント「桜ノ雨卒業式」が今年も開催されたそうですね。
笹原翔太(Vo, G) 去年よりも少し大きい会場でやることができて、すごくうれしかったですね。今年は、高校生の映画制作団体が作ってくれた映画の上映と、僕らのミニライブ、それと最後に「桜ノ雨」を現役高校生の吹奏楽をバックに合唱しました。
──何人ぐらいで合唱したんですか?
笹原 お客さんみんなに歌ってもらったんで、300人くらいですね。
──おぉ。それだけの声が重なるとすごそう。
中村博(G) すごかったですよ、ほんとに。
笹原 練習しといてねってブログでお願いしておいたので、みんなしっかり歌ってくれて。で、最後のサビの部分では、歌詞に合わせて手話もしたんです。もうすごくいい光景で、感動しましたね。
──そういう学生たちとの密なつながりで活動の幅を広げているabsorbですが、待望の新作はミニアルバム「学園」。なんだかすごく自然な流れで、大きく納得してしまいました。
笹原 アハハハ。まさに、ですよね(笑)。もともと「桜ノ雨」をリリースしたときから、学校をテーマにした作品を作りたいよねっていう話はあったんですよ。で、今回のリリースタイミングがちょうど新生活が始まる時期だったので、じゃあやろう、と去年の冬くらいから動き始めて。
──学校でのさまざまな出来事を曲として描いていくというテーマはすごくわかりやすいし、いろんな人に伝わるものでもありますもんね。
笹原 今回はできるだけわかりやすくテーマを見せるという意味で、すべての曲でバッキングをすごくシンプルにしたんですよ。できるだけ、歌詞と楽器のどっちも聴こえやすいようなアレンジメントにしてますね。
中村 1stアルバムでは結構いろんなトライができたんで、今回はいらない音を排除して、シンプルさを追求しようかなと。
思い出話が昔に戻るスイッチになって楽曲制作につながった
──だからこそ、曲ごとの世界観がリアルに伝わってくるんでしょうね。実際、僕も聴きながら学生時代を鮮明に思い出しました。
笹原 僕らもけっこう思い出しましたね、当時を。曲を書きながら学生に戻りました。
中村 あのとき、自分は何してたっけなぁとか。
──逆に、当時に戻らないと書けない部分もありそうですよね。
笹原 そうですね。特に1曲目の「wanna be friend」では、メロディも詞も全部3人で合作してみようってことになったんですけど、その会議では思い出話に花がわんさか咲いて。みんな17~8歳になってました(笑)。
──どんな思い出話が出てきました?
笹原 その曲のテーマは、入学後の初日を書くっていうことだったんで、自分たちがどうだったかを。ドキドキして、なかなか話しかけられなかったっていうのは、3人とも共通してたんですけど、博は「部活、何してた?」っていうところから切り出したとか。僕の場合は、前と後ろの席の2人が友達だったんで、僕を挟んで盛り上がってるわけですよ。なので、そこに無理矢理入って仲良くなった(笑)。
森晴義(Vo, Key) 僕はゲームでしたね。「最近、何やってんの?」っていう話をきっかけに「じゃ、うちにやりにくる?」みたいな感じで仲良くなっていきましたね。
中村 この曲を作る過程で、そういう話ができたことが昔に戻るスイッチになったみたいなところもあったよね。3人それぞれが。
笹原 一番最初に形になった曲がコレだったもんね。
absorb(あぶそーぶ)
森晴義(Vo, Key)、笹原翔太(Vo, G)、中村博(G)からなるツインボーカルユニット。2005年8月に結成し、東京を中心にライブを展開。MySpaceなどのWEBサービスを積極的に活用し、リアルとバーチャルを横断したオリジナリティあふれる活動を展開している。2008年にはボーカロイド・初音ミクをフィーチャーしたオリジナル曲「桜の雨」をニコニコ動画上で発表。2008年秋にメジャーデビューを果たし、「桜の雨」は2009年春に全国119校の卒業式で合唱曲として歌われた。続く2ndシングル「愛ノ詩」は長門裕之・南田洋子夫妻のジャケット写真とともに話題に。2009年5月に1stアルバム「we walk abreast」をリリースした。