“学校生活の3年間”という起承転結を描くことを目指した

──作品全体としては、入学から卒業までを7曲で描いていくという流れですよね。

笹原　そうですね。学校生活の3年間っていう起承転結を7曲で描けたらいいなと思って、テーマを分担しながら曲を出し合っていきました。博が「恋に落ちたら」っていうラブソングを持ってきたんで、じゃ俺は部活とか運動系の曲を書こうかなとか。

──中村さんのラブソング、良かったですよ。学生特有の甘酸っぱさが詰まっていて。

中村　学園と言えば恋じゃないっすか、やっぱり（笑）。異性を異性として意識するのが、ちょうどそこらへんの時期ですもんね。好きな子とつきあいたい、でもつきあうってなんなんやろうみたいな。そういう汚れを知らなかった頃の気持ちを忘れてないですか、みたいなことを書きたかったんです（笑）。

──すごくピュアな恋愛ですよね。ちなみに今の中村さんは？

中村　え、どういうことですか？（笑） いやぁもう汚れてるか汚れてないかで言ったらね、齢27にもなるんでね。アハハハ。

──笹原さん作の「よーいドン！」は部活ソング。実体験満載だそうですが。

笹原　部活大好き人間だったんで、自分の体験から書き下ろした感じは強いですね。汗かいた分だけ俺の勝ち、みたいな勢いやテンションがある、元気だけの曲っていうのは初めて作りましたね。タイトルからして、ちょっとやっちゃったなぁって感じですよね（笑）。

──最後には「あざーしたー！」という体育会系ならではのあいさつまで入ってるし（笑）。

森　デモ聴いたときはビックリしましたけどね。こいつ「あざーしたー！」って言ったよ、って（笑）。

笹原　いちおうフェイクの一環として聴いてもらえれば。この曲はね、陸上部で円盤投げをやってた運動部上がりの僕と、バリバリ文科系のリーダー（森）の2人で歌うっていう意味の深さもあると思いますね（笑）。

森　僕は美術部で筆を走らせてました。「よーいドン！」って（笑）。でも、運動部を見ながらよくスケッチをしてたんですよ。なので、運動部はそういう気持ちだったんだなぁっていうのを感じながら、シンクロして歌うことができましたね。

ビデオクリップ制作でもリスナーとコラボレーション

──恋や部活など、学生生活の明るい側面がありつつ、一方では少し闇を思わせる部分にもちゃんとフォーカスしているのもすごく興味深くて。森さんによる「ablaze days」なんかは、人をうらやんでしまう心の風景を深く、鋭く描き出しています。

森　僕は学生時代、けっこう内向的な性格だったんで、他人をうらやんだり憎んでしまったりっていうことが多くて。さらに「あいつウゼェな」とか思っても、どうすることもできない葛藤があったりもして。なので、そういう気持ちを曲として書いてみました。大人になった僕らの年代だと、同じようなことを感じながらも「まぁ、しょうがないよね」って流してしまったりすると思うんですけど、学生時代ってストレートにヘコんだり、そこから何か行動を起こしちゃったりすると思うんですよ。でも、そういう焦りや負の感情は誰もが持っているものだから心配しなくていいよ、みんな案外同じなんだよっていうのを曲として伝えることで、ちょっとでも楽になってもらえたらいいなぁと思って。

──この曲では、リスナーから動画を募集して、それを編集したビデオクリップも制作されたんですよね。

森　そうなんですよ。この曲のデモをニコニコ動画にアップして、それを観たユーザーさんから、普段言えない心の叫びを動画にして送ってもらったんです。で、それを元に、曲とPVで僕らが代弁することが面白いんじゃないかなと思って。

笹原　100件くらい動画が届いたんですけど、みんなそれぞれ叫びたいことがあるんだなってすごくわかりましたね。そういう叫びがあってこそできた曲だと思うし。

──ネットを活用して面白いことを試していくという姿勢はabsorbらしいですよね。

笹原　そうですね。ユーザーさんと一緒にモノ作りをしていくと、僕らが思いつかないようないろんなヒントがもらえるから楽しいです。

森　ビデオクリップの中で紙飛行機を飛ばすっていうのも、ユーザーさんとのコラボレーションから生まれたアイデアなんですよ。僕らとしても新鮮なことがたくさんあって。

笹原　このPVはCD-EXTRAに映像として収録しているので、ぜひ観てもらいたいですね。