音楽ナタリー Power Push - 96猫×伊東歌詞太郎 96猫×ろん
「ニコ動」とメジャー “戦友”たちが抱く思い
96猫×ろん
1回止めてもらってもいいですか?
──では、お二人の出会いから聞かせてください。
96猫 出会いというより、最初は私が一方的に知っていたというか……。
ろん 私は今から6年くらい前、96猫さんが「くるみ ぽんちお」という曲を歌っているのを聴いたのが最初で……。
96猫 ちょっと1回止めてもらってもいいですか?(笑)
ろん あはは(笑)。2010年の3月頃ですね。すごく伏せ字が多い曲なんですけど、96猫さんは包み隠さずに歌っているのが衝撃で。その動画が面白くて、「いつか話してみたいな」って思ってました。
96猫 恥ずかしいですね(笑)。私は歌ってみたを始めて2、3年経った頃に、ろんさんの「ジュブナイル」っていう曲を聴いて衝撃を受けて。そこからはずっと、ただのファンをやってました。だからもう、さっきからニヤニヤが止まらないんですよ。
ろん 最初に96猫さんの歌を聴いたときは少年らしいというか「カッコいい感じの声だな」と思っていたんですけど、最近の歌を聴くと96猫さん、大人の女性らしい色気が出ていますよね。
96猫 ありがとうございます。実際の私を見ると、全然そんな色気はないですよ(笑)。
ろん 今の感じで「くるみ ぽんちお」を歌ったら……。
96猫 生々しくなりますかね?(笑) 私も、ろんさんの歌声はどちらかというと少年っぽいなと思っていました。でも今のろんさんは、少年というよりは女の子って感じで。かわいさが増してるんですよ。
ろん ありがとうございます。
96猫 歌い方も好きだけど、やっぱり声が大好きなんです。苦手な声だったら歌い方が好きでも聴かないと思うし。
ろん ああ、わかります。
96猫 わかってくれている! うれしい!
ろん 私は、96猫さんは普通の歌い手さんと違うところがあると思っていて。歌い方がミュージカルっぽいというか、演じてらっしゃるというか。「泣きながら歌ってるんじゃないか?」と思うほどの歌声だったりして、歌っているところを見たくなるんです。曲の中にセリフを入れたりとかもそうですけど、演じてリスナーさんに伝えられる声と表現力があるっていうのは素敵だと思います。
96猫 ああ、幸せです。もう帰っていいですか?(笑)
ニコ動自体はよくも悪くも変わっていない
──ろんさんがメジャーシーンで歌を歌うことにした理由はなんだったのでしょう?
ろん 私はメジャーとかネットとかっていうことは考えていなくて。活動を続けてきた中でよい人たちとの出会いがあって、その人たちとそのときを記録するという意味で「CDリリースという形もいいかな」と思って、メジャーでも作品を出させてもらっている感じです。
──ではメジャーシーンに出てみて、今までの活動が変化したということもない?
ろん そうですね。私はないです。
96猫 歌詞太郎くんは真逆だった。
ろん そうなんですか?
96猫 「僕はずっとメジャーに夢を抱いていた」って、めちゃくちゃ熱く語ってた。
──その際に、今の“ニコニコ動画シーン”についても意見を聞きましたね。
96猫 そうですね。ろんさんは今のニコ動をどう捉えていますか?
ろん 「ニコ動は変わった」という人もいるけれど、私はニコ動自体はよくも悪くも変わっていないと思います。ユーザー層とか周りの環境が変わったのかな?って。
96猫 私もそう思ってます。最近はニコ動の周りを取り巻くものがどんどん大きくなっていますよね。だから、視聴者も投稿者の投稿を「純粋に趣味で上げているんだな」っていう目で見れなくなっていたりするのかな、とか……。
ろん うん、その通りだと思います。
両思いになれました
──では、ここからは楽曲の話を。今回のコラボは96猫さんのオファーで実現したんですよね。
ろん ありがとうございます。
96猫 自分がずっと追いかけてきた人だったので、「いつか何か一緒にやりたい」と思っていたんですけど、私はチキンだからなかなか自分からアタックができなくて。でも今回、大人の力を借りて(笑)、実現することができました。OKをいただいてもすぐに信じられなかったです。
ろん 実は96猫さんに一度、コラボに誘っていただいたことがあったんです。だけど、私もチキンなのでそのときは「えっ、コッ……コラボするんですか?」って感じで引いてしまって、コラボができなかったんですよ。けれど、ろんも大人になったし(笑)、「やっぱりやりたいな」っていう気持ちが強かったので、一緒にやらせていただけてうれしかったです。
96猫 両思いになれました。よかったです。
──楽曲制作はどのように進んでいったんですか?
96猫 曲はいくつかの候補の中から選んで。そこから完全に自分の自己満足でパート分けを決めさせてもらって、ろんさんにお渡しして……という感じでした。「ブラックペッパー」は「ニコニコっぽい曲だな」っていう印象があって。曲の中で印象がどんどん変化していく曲だと思うんですけど、ろんさんはいろんな声を出されていたし、私もいろんな声で歌わせていただくことができて楽しかったです。
ろん 最初にいただいたものに96猫さんとボーカルガイドさんの歌が入っていたんですけど、その時点でかなり完成されていたから「どうしよう、これろんも歌うのか!」って思ってビクビクしてました(笑)。けれど、歌ってみたら「ろんが得意な電子曲だな」と思えて、楽しかったです。あと、「私と96猫さんは歌い方が違うのかな」と思っていたんですけど、一緒に歌ってみたらそうでもなくて。
96猫 発声方法が似てるんですよね。ただ、ろんさんはハキハキした声だから、どんな曲を歌っていても音に負けないんです。逆に私は音に吸い込まれちゃうというか。どれだけ大声で歌っても音負けしちゃう声なので……私の中にも、「声が合うかな」という不安はありました。でも完成した曲を聴くと全然心配はなくて。自分でいうのもあれだけど「めっちゃ合ってるんじゃない?」って。
ろん ミュージックビデオの動画にも、そういうコメントが多かったですよね。
96猫 ね。あと「また聴きたい」っていうコメントもあって、それはすごくうれしかったです。
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- 96猫 2ndミニアルバム「7S」 / 2016年11月23日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 2462円 / SRCL-9228~9
- 通常盤 [CD] / 1922円 / SRCL-9230
CD収録曲
- ブラックペッパー with ろん
- 鬼KYOKAN with 下田麻美
- 晩秋ロストイン
- Alive
- フタリボシ with 伊東歌詞太郎
- MOTHER ~7S Ver.~ with 奥華子
- どう考えても私は悪くない [bonus track]
- ブラックペッパー -Instrumental-
- 晩秋ロストイン -Instrumental-
- Alive -Instrumental-
- MOTHER ~7S Ver.~ -Instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
- 「ブラックペッパー with ろん」 Music Video
- 「高尾山を登ってみた。」
- ろん / Charisma.comとRYO-Zお兄さん(RIP SLYME) 両A面シングル「ハロートゥモロー / ゴマムー」 / 2016年10月19日発売 / Warner Music Japan
- 初回限定盤 [CD+グッズ] / 2268円 / WPCL-12445
- 通常盤 [CD] / 1512円 / WPCL-12446
©森下裕美・OOP/Team Goma
96猫(クロネコ)
2006年からニコニコ動画の「歌ってみた。」カテゴリなどで活動している女性歌い手。セクシーな女性の声から少年のような声までさまざまな声色を使う表現力の幅広さで視聴者から支持を得ており、ニコニコ動画とYouTubeの動画累計再生数は1億回を超える。2012年に初のソロアルバム「memoReal」をリリースし、その後も定期的にアルバムを発表。2015年元日発売のアルバム「Brand New...」では、リードトラック「Shooting Star」にHISASHI(GLAY)がギターで参加した。2016年6月にリリースされるミニアルバム「Crimson Stain」でSony Music Recordsよりメジャーデビュー。11月に2ndミニアルバム「7S」を発表した。
ろん
ニコニコ動画を中心に活動する歌い手。初めて動画を投稿した際にイギリス・ロンドン在住だったことから「ろん」と名乗るようになった。2010年5月に投稿した動画「おちゃめ機能 歌った」で一気に注目を集め、6月には自身初のミリオンを達成。同動画は2012年3月にニコニコ動画「歌ってみた」カテゴリ史上初の600万再生となる。2011年11月に初のソロアルバムとなる「EXIT TUNES PRESENTS ろん BEST -ひっしに歌ってみた編-」を発表。2015年8月にはJ-POPカバーアルバム「ろんかば -J-POP ZOO-」をリリースした。キュートかつ愛らしい歌声で中高生を中心に絶大な支持を集め、Twitterのフォロワー数は25万人を超える。