みんなの顔を思い浮かべて歌いました

──本作にはボカロ曲のカバーも多数収録されています。こちらはどんな基準で選曲していったんでしょうか？

自分が歌いたい曲、みんなに知ってほしい曲。あとはリスナーさんからのリクエストでよく歌っていた曲という基準で選びました。ミニアルバムとしての全体像を見ながら、バラードがあったり、ポップで元気な曲があったりと、いろんなタイプの曲を楽しんでもらえることも意識しましたね。

──それぞれの曲に対して一言ずついただけますか？

スタッフさんに薦められて聴いた瞬間に心打たれて、「いい曲！ 歌いたい！」と思ったのがn-bunaさんの「夜明けと蛍」です。淡々としているんだけど、それが逆に心に突き刺さってくるというか。ぽつりぽつりとしゃべるように歌っていきながら、ラスサビで爆発する感じを出しました。この表現はかなり難しかったです。で、「みんなに知ってほしいな」と思った曲はすこっぷさんの「外見と内面」。みんなに嫌われるのが怖くて素直になれない、でも素直になった自分のことを「好きだよ」って受け入れてくれる存在もいるよっていう歌詞の内容に自分を重ねてしまうところがあって。そういうメッセージを伝えたいなって思ったんですよね。

──それは96猫さんとファンとの関係性にも当てはまりそうですよね。

そうなんです。私が何か失敗したとしても「大丈夫だよ」って認めてくれるのがファンの存在なんですよ。なので、みんなの顔を思い浮かべて歌いましたね。

──そんなファンからのリクエストに応えたという楽曲は？

KEIさんの「ピエロ」です。この曲をニコニコ生放送で歌うたびに「投稿しないの？」っていつも言われてて。「今はまだできないや」って断っていたんですけど、今回やっと音源として残せることになりました。ぜひ聴いてほしいなって思います。

──このタイミングで収録できたのは、この感動的なバラードを歌いこなせる自信が付いたから？

いや、自分の歌に自信が出たからっていう感じではないですね。この曲を生放送で歌ったときに、つらい思いをしているいろんな人たちから「助けられました」「がんばろうって思いました」っていうコメントをたくさんもらったことがあって。なので、メジャーデビューっていうタイミングでもあるし、みんなの支えになるなら収録してもいいのかなって思えるようになったんです。私自身、悲しい気持ちのときにいろんな曲で助けてもらってきたから、みんなにとってもこの曲がそういうものになったらいいなって。

──そしてもう1曲、DECO*27さんの「ゴーストルール」はどんな思いで選んだんですか？

この曲は自分が歌いたいという思いもあったし、同時にチャレンジっていう意味合いも大きかったです。転調してキーがどんどん上がっていくし、淡々としていると思ったら急に激しくなってまた淡々とするし……とにかく歌うのが難しい曲なんですよ。ライブじゃ絶対歌えないと思うんですけど、レコーディングでは何回も納得いくまで録れるんで、挑戦してみようかなと。生で歌えたらカッコいいですよねえ。課題ですね、今後の。まだその勇気はないですけど（笑）。

もっともっとたくさんの人に自分の歌を聴いてもらえるように

──そして、ボーナストラックにはテレビアニメ「ポケットモンスター」3代目エンディングテーマに使用されていた「ポケットにファンタジー」のカバーも。楽曲の素晴らしさもさることながら、大人と子供の2役を演じ分けている96猫さんの声の表現力がすごいなと。

いきなりセリフから始まるんで、生放送で歌うと最初は「何してんのwww」みたいなコメントが付く感じなんですけど、曲が進むにつれてみんな聴き入って、「いい歌詞だわ」って感動してくれるんです。それがこの曲のすごさなんだと思います。歌に関しては、もう完全に演じるイメージで歌いました。子供パートは自分が子供の頃に戻った気持ちで、大人パートは今の自分として子供の言葉に耳を傾けるように歌いました。子供の頃だからできることもあれば、大人になったからこそできることもある。でも逆に子供にはできないこと、大人になってできなくなっていくこともある。そういうものを感じてもらえたらうれしいですね。まさかこの曲をCDに入れる日が来るとは思っていませんでしたけど（笑）、「これ歌っちゃうんだ」とか「こんな曲あるんだ」って驚いてもらえればと。

──ここから新たなスタートを切る96猫さん。前回のインタビューで、ニコニコ動画へ投稿を始めたのが2006年だったとおっしゃっていました。ということは丸10年の記念すべき年にメジャーデビューを果たしたことになるわけですよね。

ああ、確かにそうですね。もう10年かあ。投稿を始めた当時はよくも悪くも「自分がよければそれでいい」っていう感じだったけど、徐々に観てくれる人が増えたことで「それじゃダメだ」っていう気持ちが強くなっていって。みんなに楽しんでもらうっていう気持ちを大事にしつつ、もっともっとたくさんの人に自分の歌を聴いてもらえるように、ここからも積極的にいろんなことに挑戦して、いろんなことを学んでいきたいですね。

──miwaさんが先日リリースした「シャンランラン」という曲にコーラスで参加したのも1つの大きなチャレンジでしたよね。

そうなんですよ！ メジャーで活躍されている方と一緒に作品を作れるなんて、まさに一生の宝物ですから。今後はそういうコラボもどんどんやっていけたらいいなって思っています。