「69号室の住人」特集|アーティストの知られざる一面と本音を引き出す音楽番組 MCグランジ遠山が語るその真髄と作り方

靴下にまで気を遣うように

──「SCHOOL OF LOCK!」はラジオ、「69号室の住人」はテレビと放送メディアが違いますが、収録にあたって変えている部分はありますか?

あんまり変えてる部分はないですね。同じ感じでやってるかな。ただ「SCHOOL OF LOCK!」はリスナーが10代の子が多かったので、「10代にどう届けられるか」ということを僕なりに考えて。あと生放送だったので「この流れであの曲がかかるから、そこにつながるように話を持っていこう」とか考えながらしゃべってたかな。「69号室の住人」は生放送ではないし、MVやライブ映像もいいところに編集で入れてもらえるので、僕が考える必要がないという違いはあります。あ、でも「69号室の住人」は座り方に注意していますね。

──座り方ですか?

グランジ遠山

僕が座ってるイスの構造上、ひじ掛けに寄りかかるとすごい偉そうなヤツに見えちゃうんですよ……だから、姿勢に気を付けるようにしてます。ラジオのときはテーブルに足をかけてしゃべってましたからね(笑)。あとラジオだったら別にパンツ履いてようが、履いてなかろうが、関係ないじゃないですか。実際にパンツ履いてない回もあったし。だけど、「69号室の住人」が始まってから靴下にまで気を遣うようになりました。

──「69号室の住人」の現場はお部屋ですもんね。

基本僕、靴下にこだわりはなかったんですけど、オンエアを観るとちょいちょい映ってるんですよ。一応40歳にして、まだおしゃれに思われたいという浅はかなところがあるので、靴下は1足1500円くらいのちょっと高いものを買うようにしています。自分としては、靴下は成長したなと思ってます。

──ではオンエアでは遠山さんの靴下にもご注目をということですね。

はい!

チバユウスケと人間ドックに行きたい

──MCの遠山さんから見て「69号室の住人」の魅力はどんなところですか?

スタッフのアーティストに対する愛情をめちゃめちゃ感じるところですね。Base Ball Bearの皆さんが「SCHOOL OF LOCK!」に出演してくれたときに、「69号室の住人」の収録時のことを話してくれて。スタッフの皆さんが打ち合わせの段階で、Base Ball Bearの今の思いを画面を通して届けたいんだなというのが伝わってきて、それが本当にうれしかったと。スタッフの皆さんは、収録に至るまでにアーティストが面白く見えるように、曲がよく伝わるように考えてくれているんですよね。アーティストに対する愛情を僕も画面を通して感じるんです。アーティストの皆さんが、現場で心を開いて楽しくしゃべってくださっているのであれば、それは僕ではなくスタッフの力だと思います。

──いいチームなんですね。

グランジ遠山

スタッフにはマジで感謝してます。しかも、僕には「ほぼ好きなようにやってください」と言ってくれるし。何も気にすることなく、思ったようにやらせてもらえてるのでめちゃめちゃありがたいです。もう「69号室の住人」は一生かけてやっていくライフワークにしたいと思ってます。

──今後、「69号室の住人」でやってみたいことはありますか?

例えば、毎日のように酒を飲まれてるであろうThe Birthdayのチバユウスケさんと一緒に人間ドックに行く企画とかはどうでしょうか(笑)。そういう企画だったら、僕も人間ドックに行けると思うんです。"僕たちのチバ"が鼻から胃カメラ入れてる!とか実況で解説したりして(笑)。怒られますか(笑)。

──番組を拝見したときに遠山さんがしばしば「僕、40なんです」とおっしゃっていたのが気になったのですが、ご自身として年齢は気になりますか?

歳を取るのは嫌ですね、正直。でも、山下達郎さんのライブに行ったときに最後に「お互いカッコよく歳を取りましょう!」といったことをおっしゃっていて勇気付けられましたけど。「なるほど、そういう考え方でいいのか」と思うようになりました。ただ、怪我をすると治りづらいし、腰は痛いし……若いときはこんなんじゃなかったのにということはあって。そういうリアルな部分も番組で伝えていきたいなと思っているので、チバさんと人間ドックに行きたい(笑)。

──人間ドック企画はカッコよく歳を取るためだと。

はい。僕は心配なんですよ、ミュージシャンの皆さんの健康が。奥田民生さんとか今でもタバコ吸われているはずですし。ヒロトさんとマーシーさんとも人間ドック行きたいですね。前日から食事も抜かないといけないと思うので、そこから追わせてもらいます!

──どんどん話が外れていますが……(笑)。ほかに何か温めているアイデアはありますか?

これも話が脱線するんですが、僕、「69号室の住人」のお笑い芸人バージョンがあったらいいなと思っていて。例えばブラックマヨネーズさんにネタの作り方を聞いたり、どういう経緯で今のスタイルに至ったのかとか……トークの合間にMVの代わりに最新の漫才の動画を挿し込んだり。特に芸人なんて絶対面白いエピソードを持ってますから。もちろんベテランだけじゃなくて、結成3年目くらいの若手で、名前は全然知られてないけどネタは面白い芸人を紹介するとか。番組が軌道に乗ってきたところで満を持して僕の相方の大と五明の登場です(笑)。そして最終回はダウンタウンのお二人に出ていただくことを目標にして。

──確かにそれは興味深いですね。

昔、「いろもん」という笑福亭鶴瓶さん、ウッチャンナンチャン、今田耕司さん、東野幸治さんが出演するトークバラエティがあって。その番組では毎回1組だけ芸人をフォーカスしてたんですけど、それが面白かったんです。そういう企画を「69号室」のスピンオフみたいな感じでやれたらいいなあと。「68号室の住人」というタイトルで(笑)。

課題は「この番組が面白いから観る」人を増やすこと

──ちなみに、今後番組にゲストでお呼びしたい方はいますか?

誰だろうなあ、なかなか難しいと思うのですが、山下達郎さん。9年前に「SCHOOL OF LOCK!」のゲストに来ていただいたんですが、僕が校長になってまだ1年目で何もお話しできずに終わってしまったんです。そのときは、先輩であるマンボウやしろさんに盛り上げてもらって……自分に対して負けた気持ちがあった。だから、「69号室の住人」でゲストにお招きして、2人でめちゃめちゃ笑える時間が作れたらいいなと思ってます。あと、お招きしたいのは「SCHOOL OF LOCK!」でマブダチになった長渕剛さんとか。剛さん、めちゃめちゃ面白いんですよ。漫談も上手だし、そのことを「69号室の住人」でも伝えられたらいいなとか。僕が大好きなTOKIOの長瀬智也さんにも来ていただけたらうれしいですね。あの方もギターが好きだったり、バイクが好きだったり、「69号室の住人」の部屋の雰囲気が合いそうなので。

──「69号室の住人」のMCを約9カ月担当されてきた中で見えてきた課題はありますか?

出演者のラインナップを見ても、chelmico、ニガミ17才、マカロニえんぴつとか今の若い子たちが好きなアーティストもいれば、氣志團とかザ・クロマニヨンズと言ったベテランクラスの方もいて面白いんですが、まだゲストの方次第で観るか観ないかを決める方が多いと思うんです。だから今後の目標は、「この番組が面白いから観る」という視聴者を増やすことですね。何度も言ってるように、本当に面白い番組だし、スタッフやアーティストの思いが結集した内容なので、もっといろんな人に届いてほしいです。普段の生活では出会わないような音楽家に本当に出会える番組だと思うんで。

グランジ遠山