3markets[ ]メジャー1stアルバム「SUPER DUST BOX」特集|メジャーデビュー“白紙”の裏側に迫る

「メジャーデビューがなくなりました」。そう報告した3markets[ ]のX(Twitter)のポストは、インプレッション数が52万を超えるほどの注目を浴びた。

2024年8月にエイベックスより予定されていた3markets[ ]のメジャーデビューは、楽曲の歌詞に指摘が入ったことから一旦見送りに。その後、彼らは同年11月に楽曲「白紙」で晴れてメジャーデビューを果たす。そこに至るまで、メンバーはどんな心境だったのか。そしてこのたび、2月26日にリリースしたメジャー1stアルバム「SUPER DUST BOX」にどんな思いを込めたのか。

音楽ナタリーでは3markets[ ]メンバー4人にインタビュー。メジャーデビュー発表から実際にデビューするまでの経緯と心境を語ってもらった。さらにデビュー曲「白紙」やアルバム「SUPER DUST BOX」への思い、メンバーが考えるカザマタカフミ(Vo, G)の作家性について話を聞いた。

取材・文 / 天野史彬撮影 / 大城為喜

3markets[ ]メジャーデビューへの道

経緯①“ナメ切っていた”のにZeppワンマン2日前に決定

──3markets[ ]は本来なら昨年8月にメジャーデビューする予定が、楽曲の歌詞に指摘が入り、1度白紙に。その後、11月にメジャーデビュー曲「白紙」が無事リリースされ、このたびメジャー1stアルバム「SUPER DUST BOX」が完成しました。メジャーデビューという事象を巡ってこれほどドラマが生まれるのも、生き様を赤裸々にさらけ出す3markets[ ]ならでは、という気がします。改めて振り返ると、メジャーデビューが決まったときの心境はどのようなものでしたか?

カザマタカフミ(Vo, G) そもそもは、Zepp Shinjukuでワンマンをするにあたって、何か発表するネタがないかな?と(矢矧)暁と話していて。だいたいバンドってワンマンで何かを発表するじゃないですか。でも、そのときの僕らはお知らせできることが全然なかった。それで「メジャーデビューしたら面白いんじゃない?」と、ナメ切った態度でマネージャーに頼んでみたら、すぐにエイベックスさんにお願いしてくれたんです。そこからはマネージャーとLD&Kの菅原さんのタッグであれよこれよと物事を進めてくれて……よくわからないままライブの2日前にOKをもらって。そもそもナメ切っていたので、「嘘だろ?」って感じでしたね。今でもふわふわしています。

左からmasaton.(Dr)、田村亮(B)、カザマタカフミ(Vo, G)、矢矧暁(G)。

左からmasaton.(Dr)、田村亮(B)、カザマタカフミ(Vo, G)、矢矧暁(G)。

──もともと、メジャーデビューに対して「目標にしよう」みたいな思いは……。

カザマ まったくなかったです。

──カザマさん以外の3人はZepp Shinjukuのステージ上でメジャーデビューを知ったんですよね。当日まで内緒にしていた理由は?

カザマ 人を驚かせるのが好きな性格なんです。なので、多少のドッキリはあったほうがいいのかなって。多大な面倒臭さはありましたけどね。

──その「驚かせるのが好き」という性格は、ご自身の作る音楽にも反映されていると思いますか?

カザマ それはめっちゃ思います。聴いた人が「おっ」と思うようなものを作りたいという気持ちは、ずっとありますね。

──矢矧さん、masaton.さん、田村(亮)さんは、ステージ上でメジャーデビューを発表されたとき、どんな気持ちでしたか?

矢矧暁(G) 僕はライブ前に「(メジャーデビューは)ダメだった」と聞いていたんですよ。なので、ステージ上で発表されたときは「やりやがったな」という感じでした。

カザマ 暁は一番気持ちに浮き沈みがあったでしょ。

矢矧 そうね、「やっぱりダメだったか」ってところから、「メジャーデビューするんだ!」となったから。最初はドッキリかなと思ったんですけど、今もそこにいる(エイベックスの)菊池さんを楽屋で見たときに「メジャーっぽい人がいる!」と思って。そこで初めて「本当なんだ」と思いました(笑)。

──もともと、矢矧さんの中でメジャーデビューへの思いはどのようなものでしたか?

矢矧 正直、そこにこだわりはなかったです。スタイル的にも「メジャーを目指そうぜ」みたいなバンドではないし、そういう話もしたことなかったし。でも、メジャーに対してマイナスのイメージがあったわけでもないので、バンドを長くやってきたところだったし、タイミング的にもいいのかなって。今回のメジャーデビューは、印象としてはポジティブなことでしたね。

矢矧暁(G)

矢矧暁(G)

──masaton.さんは、メジャーデビューに対して特別な思いはありましたか?

masaton.(Dr) 自分も正直、特別な思いはなかったです。今後、メジャーでしかできないことがやれたらいいなとは思いますね。

──田村さんはいかがですか?

田村亮(B) メジャーデビューを発表されたときは、まず「嘘なのか? 本当なのか?」と思いました。俺も菊池さんに会うまでは一切信じていなかったです。

矢矧 俺と同じだ(笑)。

田村 もう、まったく信じていなかった(笑)。自分もバンド以外の仕事があるし、不安のほうが最初は大きかったですね。でも、今は楽しいです。

──今はメジャーアーティストとして活動していて、どんなことが楽しいですか?

田村 経費でごはんを食べることです。

一同 (笑)。

田村 あとはホテルに泊まらせてもらったり(笑)。ドラマ撮影もあったし、テレビで自分たちの音楽が流れたときも、「ああ、メジャー感あるなあ」と思いました。

カザマ メジャーデビューを発表したとき、X(Twitter)のトレンドになったんですよ。そうしたら亮ちゃんが、うちをやめた前のベースの金子セイメイってやつに向けて「見てる?」とSNSで言ったんです。あれはめっちゃ面白かった(笑)。

田村 「今、どんな気持ち?」って(笑)。

矢矧 煽ってるわ(笑)。

田村 だって、売れないと思ってやめたんだろうから。続けとけばよかったのに。

田村亮(B)

田村亮(B)

経緯②ドッキリかと思ったら本当、デビュー2週間前に白紙へ

──その後、昨年8月にメジャーデビュー曲になる予定だった、性格判断をモチーフにした楽曲の歌詞に対して指摘が入り、メジャーデビューが2週間前にして一旦白紙になりました。そのときはどのような心境でしたか?

カザマ それまでの曲作りがけっこう大変だったんですよ。「これでいくぜ!」とデビューが決まったわけじゃなくて、「とりあえずデビューが決まったから、曲を作ろう」という流れだったので、メジャーデビューのために何曲も何曲も作っていて。そうやって作った曲をアレンジして、レコーディングもして、「やっと行くぜ!」となったタイミングで白紙になったので……これこそ、僕はドッキリかと思いましたね。そのとき、カメラが回っていたんですよ。なおさらドッキリかと思ったんですけど、曲がダメになったことにマネージャーも怒っていて。「マネージャーが聞いていないドッキリなんてあるか?」と。でもまあ、やるしかないので。「とにかく、また曲を作らなきゃ」って感じでしたね。

矢矧 僕もドッキリかと思いましたよ。

田村 そういう企画かなと思ったよね。

矢矧 なぜカメラが回っていたかというと、YouTubeとかのコンテンツ用に僕らはよく何気ない場面を撮影しているんです。それの一環で、ドッキリだろうと思ったんですけど、マネージャーも怒っているし、「え、本当なの?」って。このために3曲レコーディングして、合宿もしていた。それなのに途中で終わってしまって「あれだけがんばったのに、白紙かあ……」と思いましたね。

カザマ あと、僕は「お客さんに申し訳ない」という気持ちが一番大きかったです。喜んでくれた分、裏切っちゃうことになるんじゃないかって。とはいえ、僕たちは悪くないし……まあ、歌詞を書いた自分は悪いのかもしれないけど。

──メジャーデビューを念頭に置いて制作をされていた段階では、どんな曲がふさわしいと思いながら曲作りを行っていたのでしょうか?

カザマ 長く売れていないので、もはや「売れるならなんでもいい」と思っているんです。自分が作ったもので売れるなら、なんでも。結局、そのあとに書いた「白紙」でメジャーデビューしましたけど、「白紙」は売れる曲ではないと思っていて。次からはもっと売れる曲を書かないと。今はそんなことばっかり考えていますね。