経緯③「ゼクシィ」という曲を書いて怒られる

──例えば、人気曲「社会のゴミカザマタカフミ」のような自嘲的な路線でメジャーデビューするという考え方もあったと思うんです。でも性格判断をモチーフにした例の楽曲の歌詞とタイトルを変更してその後リリースされた「INTJINTPENTJENTPINFJENFJINFPENFPISTJISFJESTJESFJESTPISTPISFPESFP」も、メジャーデビュー曲となった「白紙」もそうした方向性とは違って、世の中に対してのメッセージ性が強い曲のように感じます。もしかしたら、より外に目線が向いた曲でメジャーデビューしたい、という気持ちがあったのかなと思ったのですが。

カザマ　申し訳ないですけど、そういう気持ちはなかったです。

──いや、申し訳ないも何も。あくまで、「売れたい」という気持ちがあったということですね。

カザマ　「売れたい」という思いは、常にずーっとあります。結果が出ないと、続けることができないし。それに、何を作っても、僕は言いたいことは言うんですよ。表現の仕方を変えてでも。

──今回のように歌詞に指摘が入る経験をされたうえで、今後、ご自身の表現を制限するものに対してはどのように向き合っていこうと思っていますか？

カザマ　性格判断をモチーフにした楽曲がダメだと言われた日、申し訳なさもあって、家に帰ってからお客さんに向けた曲を書こうと思ったんです。それで書いたのが「ゼクシィ」という曲だったんですけど、マネージャーに送ったら、めちゃくちゃ怒られました。

──完全に商品名を出していますもんね（笑）。

カザマ　商標登録されてる固有名詞はダメなんだなと学びましたね。ほかにもダメなことはいっぱいあると思うんですけど、そういうことはもう、1回1回出してみてから考えてみたほうがいいのかなって思っています。

──「ゼクシィ」以外にも、曲を作るときにお客さんの存在は想定されるものですか？

カザマ　お客さん全体に向けて、ということはあまりないんです。お客さんの中にいるこの人、みたいな感じで。

──個人が見えていることが多いですか。

カザマ　そうですね。そのときは、僕に対して「ガチ恋です」と言っている人がいたので、その人へ「メジャーデビューもなくなったし、結婚できないよ。ごめんね」という曲を書いたんですけど……ダメでした。これは、記事にしてもらってかまいません。

経緯④「白紙」でメジャーデビュー「……これでいいんですかね？」

──その後、昨年11月に「白紙」で晴れてメジャーデビューを果たすわけですが、「白紙」を作ったときのモードはどのようなものでしたか？

カザマ　「これでいいのかよ？」という感じでしたね。エイベックスに向けて、自分のふがいなさも含めて書こうかな、と思いました。あと、やっぱり人は簡単には成功しないんだと。そういう気持ちは、この曲のメッセージになっているかと思います。ただ、いかんせん、すっごく個人的な曲なので……これでいいんですかね？

──すごくいい曲だと思いますし、「さよならハッピー」と歌う楽曲でのメジャーデビューというのは、とても3markets[ ]らしいなと思います。矢矧さん、masaton.さん、田村さんは「白紙」をどのような曲として捉えていますか？

masaton.　エイベックスに対してのヘイトかなって思います（笑）。

矢矧　まあ、怒りは感じますよね。別にエイベックスが悪いわけじゃないんですけど（笑）。デモを聴いた段階から、僕はいい曲だなと思いましたけどね。「これがメジャーデビュー曲でもいいじゃん」と僕は思いました。

田村　曲の冒頭に「刑法233条」というフレーズがありますけど、それはメジャーデビュー曲にならなかった例の楽曲に対して届いた抗議の手紙に書いてあったワードなんです。それを歌詞に盛り込んできたのは、めちゃくちゃ面白いなと思いました（笑）。

──実際に起こった出来事を書くというのは、カザマさんの作家性と言えると思いますか？

カザマ　そうですね。ずっとそうやってきたので。書いちゃうんですよね。

矢矧　「昔から、曲はほとんど実話だ」って言ってたよね？

カザマ　うん。いや、でも、そうじゃないことも書けますよ！ これを言っておかないとアニメのタイアップが来ないかもしれないので、言っときます（笑）。

番外編 エステで感情がジェットコースターに

──そして、「白紙」発表直後に“メジャーデビューを白紙に追い込んだ楽曲”「INTJINTPENTJENTPINFJENFJINFPENFPISTJISFJESTJESFJESTPISTPISFPESFP」がインディーズでリリースされました。原稿に書く際は曲名を完全にコピペしなければいけないくらい、書けないし、読めないタイトルですよね。

カザマ　そうすることで結局、元のタイトルで読まなきゃいけなくなるじゃないですか。僕らはそう言わないですけどね。お客さんたちの間の呼び方については……まあ、止められないですよね。

──お話を聞いている限り、怒りや反骨心も、カザマさんの中の大きな原動力になっているのかなと思うのですが、ご自身ではどう思いますか？

カザマ　あるっちゃありますけど、昔よりはなくなったかもしれないです。怒ると悪いことしか起きないと、もう知っているので。最近は、あまり怒りはないです。とは言いつつ、昨日はひさしぶりにめちゃくちゃ怒っちゃったんですけど。

──差し支えなければ、なぜ怒ったか教えてください。

カザマ　僕、普段からお客さんとDMでやりとりをしているんですけど、「無料のエステ体験があるから、行きませんか？」と言われて。「無料なの？ いいじゃん」と思って、銀座のエステに行ったんです。そうしたら、まず「トイレで手を洗ってください」と言われて。そのトイレがめっちゃ汚かったんですよ。そこまではまあいいんですけど、なんといっても、無料体験が始まる前にされる話がめちゃくちゃ長い。「私たちの企業理念は……」とか、「体と心をきれいにしなきゃいけません」とか言われて。そこから「あなたの誕生日で性格を調べさせていただきました。あなたは感情がジェットコースターみたいになりますよ」とか言われて、ムカついて、パーンッて。本当にジェットコースターみたいにキレちゃって。「心をきれいにする前に、トイレをきれいにしてください！」って、ブチギレて帰りました。

矢矧　なんだそれ（笑）。

──なんというか……すごい話ですね。

カザマ　トイレには紙もなかったし、エステであれはダメですよ！ でも、怒っちゃダメなんです。怒ると、相手にとっても自分にとってもよくないので。でも、いつか「エステ」という曲は出すと思います。