トニセンが憧れていた“アイドル”を再現
──ジャケットはガラリと変わってアイドル感がありますが、これはチャレンジングでしたか?
井ノ原 チャレンジングではあるけど、僕らが見ていた先輩アイドルをモチーフにしてるんですよね。今見てもあの時代の方々はかわいいと思うし、そういうのを再現できたらいいなって話で盛り上がっちゃって。時代とともにアイドルらしさみたいなものは変わっていくけど、僕らがカッコいいなとか素敵だなと思っていた人たちの美しさは不変だから、そういうものに憧れていた時代の僕たちを再現できたらいいんじゃないかというのが始まりです。撮影中はとにかくずっと転げ回って笑っていましたね。
長野 かつらを付けるのは初めてだよね。
井ノ原 コント以外ではね。かつらの技術が上がっているんで、今後どういうことになってもイケちゃうなって思いましたね。坂本くんのロン毛はなかなかいいんじゃないかなと思います。スタッフさんみんなで意見し合う感じで、衣装も「やっぱトニセンはこれしかないでしょ」ってスタイリストがすごく盛り上がって遊んでくれたんですよね。ただ、水を使ったんで坂本くんは寒かったって。
坂本 さーむいんですよ。
井ノ原 濡れてクーラー浴びるのは酷だよね。外だったらまだいけるけど。
坂本 撮影が終わったあとはずっと外にいました。今回自分たちでやってみて、昔の新御三家はやっぱりカッコいいし、かわいいし、素敵なんだなっていうのを改めて感じましたね。僕らはもちろん現代のアイドルなんでしょうけど、素晴らしい時代の写真のフレッシュさとか清らかさがうまく再現できていたらうれしいです。
井ノ原 お笑いにならないようには気を付けましたね。リスペクトがないモノマネはしたくないから。今の世代の子たちには新鮮には映ると思うんですけど、僕らの世代は見ていたものであって、その本当の“カッコいい”を再現したかっただけなので。ゲラゲラ笑いながらやっていましたけど、ふざけた笑いじゃなくて「ヤバいことになってきたぜ、これは」みたいな感じ。そういう空気感がずっとスタジオの中にあったんです。とにかく長野くんのポージングの多さにみんなが腹抱えて笑って。長野くん、水を得た魚のようでしたからね。
長野 変装してたからね。
井ノ原 変装したらやれちゃうんだ。
長野 やり切る。やっぱ照れてちゃダメなんだよ。昔の方も徹底してアイドルを表現していたと思うので。それはやっぱ人気出るよなって改めて思いましたね。
──ミュージックビデオはダンスが印象的でした。
井ノ原 監督の提案で、ダンスのコンセプトは振付ユニットのCRE8BOYさんに決めてもらったんですけど、変な感じですよね。「ひさびさに踊るんだったら普通に踊るんじゃなくて、インパクトがあったほうがいいよね」ということでああいう形になったんですよ。踊りが入った映像を観ると曲の聞こえ方も変わってきますよね。ただ、「面白いことをやっているから、ちゃんとやりましょう」ということで踊りはけっこう厳しかった。撮影当日に振りを教えてもらう形だったし。あと撮影場所の千葉が蒸し暑くて汗だくになったんだよね。でも、ごはんがおいしいからいいかって。
長野 ダンスはシンプルで簡単に見えるかもしれませんけど、キレや微妙な角度はすごく意識していて。「ここだけ目線ください」とか、そういう指示にその場その場で、グッと集中してやりました。
坂本 振りはキャッチーなんですけど、緊張しながら真剣にやっていましたね。角度とか目線とか「正確にやってください」って言われたのは、少年隊のバック以来だった。
井ノ原 確かに! 懐かしいね。
──上着をバッと脱ぐ「水曜日」ポーズもインパクトがありました 。
井ノ原 あれは大変ですよ。「なんだこれ!」「ヤバヤバ!」「面白いっすよコレ!」みたいに、いろんな喜ばせ方のパターンで監督が囃し立ててくる。まあ調子に乗らされた感じで楽しかったですね。
ライブをやらない選択肢はないし、ドームツアーを目指してもいい
──ライブ活動について意欲はありますか?
井ノ原 楽曲があるのにライブをやらないのは一番もったいない話だし、トニセンは舞台とかもやっていましたけど、「ライブをやろう」という話になったのがそもそもの始まりなんですよ。1996年くらいに映像を使ってトニセンでライブをやったのが僕らの原点で、小さいけど自分たちでやってる感があったんです。予算が付かなかったので自分たちで8mmカメラを使って撮影したり、照明も自分たちでやったり、手作りで。スタジオも取れなくて、「白バックがあればいいだろ」みたいな感じで、リハーサル室で撮影していましたからね。麻布十番でロケやったり、浴衣着て歩いたりもしてた。そういうわけで、「トニセンってなんだろう」って言われたらやっぱ自分たちにとってはライブなので、いずれそういう発表ができたらいいなとは思っています。
坂本 「やる」「やらない」っていう選択肢はなくて、やるタイミングが来たらやるでしょうし、「観たい」「やってほしい」って声が届けば「やりましょうか」って、そういうスタンスですね。ただ、自分たちがやりたいことを楽しんで形にするのが僕ららしさなので、それは絶対忘れちゃいけないなと思っていて。とは言え、1回ドームを目指してもいいかなと。
井ノ原 いやいや、考えたことないでしょ(笑)。
坂本 いや、ドームをいろいろ調べたら、静岡に天城ドーム(客席680席)とかあって。大きなドームじゃなくてそういうドームのツアー。
井ノ原 なるほどなるほど。丸けりゃいいんだよね。
坂本 静岡だけで3つか4つくらいあるし、全国にいろいろなドームがあるので。
井ノ原 5大ドームじゃなくて、5小ドームツアー(笑)。そういうところを攻めていきたいですね。
坂本 灯台下暗しじゃないですけど、そういうところを摘んで大きくしていったら面白いよねっていう考えがあるんですよね、僕らには。
井ノ原 背伸びしないのが何よりですよね。
──長野さんはいかがですか?
長野 まあタイミングですかね。ライブはやっぱり好きなので……ドームツアーやりたいですね(笑)。5小ドームツアーなんてうちの事務所、誰もやってないんじゃない? みんながやってないことって楽しいし、そんな発想で3人ならではの形になったらいいですね。
プロフィール
20th Century(トゥエンティースセンチュリー)
坂本昌行、長野博、井ノ原快彦により結成されたユニット。1997年にアルバム「ROAD」でCDデビュー、1998年に2ndアルバム「! -attention-」、2004年にベストアルバム「Replay~Best of 20th Century~」をリリースしている。2022年5月に曽我部恵一提供の「夢の島セレナーデ」、8月にグソクムズ提供の「風に預けて」を配信シングルとして発表。10月にミツメ提供曲「水曜日」を配信リリースした。