ナタリー PowerPush - 1966 QUARTET×NIGO

マニア納得のTHE BEATLESカバー集を紐解く

QUEEN、マイケル・ジャクソンを経て

──完成したアルバムと1stアルバムのTHE BEATLESを比べて、NIGOさんの感想はいかがですか?

NIGO この間コンサートを観に行ったんですけど、そのとき新作から1曲「Can't Buy Me Love」をやっていて、それがロックに近いビート感というか。「うわっ、これすごい」って感動したんですよ。もちろん今までのもいいんですけど、ひと皮むけたというか(笑)。

──確かに私もそう感じました。リズミカルな曲が特にレベルアップしましたよね。

松浦 やっぱりQUEEN(2ndアルバム)とマイケル(3rdアルバム)で壁にぶち当たった結果だと思います。QUEENで発狂する感じができて、クラシックだからこうっていう部分をなくしてやりきろうという度胸が付いた。で、マイケルのときに16ビートと32ビートを嫌というほどやって、そこでグルーヴ感が一歩上のステージに行けたんです。その経験を経たからこそ今作があると思っています。

花井悠希(Violin)

花井 前回のTHE BEATLESはバラードが多めで、今回はロックっぽいのも入っていたので、選曲面でも過去2作で培ったものがうまく出せたんじゃないかな。

──サウンドに幅が出ましたよね。バラードはよりクラシカルに、テンポも原曲より落としていますが、それは意図してるんですか?

松浦 自分たちが気持ちいいと感じるところに、大差なく4人が揃うようになってきたっていうのが大きいんじゃないかな。

花井 テンポ感や作り方に対して、それぞれがわりと迷いなくいけるようになったんですよね。

THE BEATLESのアルバムと同じ曲目で13枚出したい

──ところでNIGOさんは、1966 QUARTETが奏でるTHE BEATLESってどんなTHE BEATLESだと思いますか?

NIGO 聴く人によりますけど、僕なんかはホントに面白いっていう感想ですね。

──原曲を知ってるからこそ面白い?

NIGO そうですね。僕は譜面のアレンジとかあまり詳しくないんですけど、聴いて素直にすごく面白いアレンジだと思う。今回のアルバムで言ったら、「I Feel Fine」の曲頭の表現とかね。ジョン・レノンがアンプの近くにギターを置いてたらハウリングして、それが面白かったから曲にも使ったっていうあのアイデアがちゃんと再現されてる。THE BEATLESは完全にロックのあり方を変えたグループで、だからこそ1曲にまつわるストーリーも多い。そういったところを表現している点も面白いですよね。

──では今後、1966 QUARTETとNIGOさんが再びタッグを組んだらやってみたいことは?

NIGO 僕はけっこう今回フルスウィングで、あとがないつもりでやったんですよ。ただ、THE BEATLESはまだまだあると言えばあっていろいろとやりようはあると思うんですけど、まあここで結果を待ってっていう(笑)。

松浦 「次はどんなグループをカバーするんですか?」っていろいろ言われるんですけど、私たちはこのままビートルズを仕上げていきたいという思いがあるんです。

──具体的には?

松浦 いろいろあるけど、例えば1枚目からTHE BEATLESが出したアルバムと同じ曲目で13枚出す。

──それかなり壮大な企画ですね(笑)。

松浦 私はそれをボックスで出したいっていうのと、実際にアビーロードスタジオに行って録音したいっていうのも1つの夢ですね。あとは、THE BEATLESって解散後の曲もまだまだいっぱいあるじゃないですか。私たちはそこまで勉強できていないので、これからそっちも広げていけたらいいなとか。あとはコンサートでNIGOさんプレゼンツのプログラムを出したくて。

──今回やるんですか?

松浦 いや、今ずっとお願いしてるんですけど。

NIGO なかなかね(笑)。

松浦 それをCDにするのも面白くないですか? NIGOさんに全部曲を選んでもらって。そういうのもやってほしいと思ってるんですよ。

NIGO なるほど(笑)。検討します。

1966 QUARTETとNIGO。
ニューアルバム「HELP! ~Beatles Classics」2013年6月5日発売 / 2940円 / 日本コロムビア / COCQ-85012
ニューアルバム「HELP! ~Beatles Classics」
収録曲
  1. Help!
  2. Can't Buy Me Love
  3. And I Love Her
  4. I Feel Fine
  5. Hey Jude
  6. Back In The U.S.S.R.
  7. Hello Goodbye
  8. Nowhere Man
  9. Ob-La-Di, Ob-La-Da
  10. Girl
  11. Something
  12. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
  13. Don't Let Me Down
  14. Here There And Everywhere
  15. Yesterday
1966 QUARTET
(いちきゅうろくろくかるてっと)
1966 QUARTET

THE BEATLESの初代担当ディレクター・高嶋弘之が送り出す、クラシックのテクニックをベースに洋楽をカバーする女性カルテット。現メンバーは松浦梨沙(Violin)、花井悠希(Violin)、江頭美保(Piano)、林はるか(Cello)。THE BEATLES来日の年である「1966」をユニット名に冠し、2010年11月「ノルウェーの森 ~ザ・ビートルズ・クラシックス」で日本コロムビアよりCDデビュー。2011年11月にQUEENをカバーした2ndアルバム「ウィ・ウィル・ロック・ユー ~クイーン・クラシックス」を発売したのち、メンバー交代を経て2012年11月にマイケル・ジャクソンをフィーチャーした「スリラー ~マイケル・ジャクソン・クラシックス」を完成させる。2013年6月、再びTHE BEATLESに回帰した4thアルバム「HELP! ~Beatles Classics」をリリース。

NIGO(にごー)
NIGO

クリエイティブディレクター、DJ。ファッションブランド「A BATHING APE」の創設者。現在はフリーのデザイナーとして活動。2004年にRIP SLYMEのILMARIとRYO-Z、m-floのVERBAL、WISEと結成したヒップホップユニット・TERIYAKI BOYZのメンバーでもあり、DAFT PUNK、カニエ・ウェスト、Corneliusといった国内外のそうそうたるアーティストとのコラボレーション作をリリースして注目を集めた。