アルバムイメージは“Back to the 90's”
──1曲目「歓びの詩」はバグパイプの音色から始まる、オープニングナンバーらしい楽曲ですね。
まさにオープニング曲を作ろうと思って作りました。再始動への思いをつづった2曲目「これから」につなげるために。
──このアイリッシュな空気感も、アルバムのところどころに散りばめられてますよね。
あまり深く考えて入れたわけじゃないけど、アイリッシュ系好きですよ。
──「Walk your way」はライブでモッシュやシンガロングが起こりそうな英語詞のパンクロックナンバーです。
そうですね。そういうイメージで作りました。175Rは「もっとちゃんと伝わる日本語で歌おう」って、活動初期に英語詞をやめたから、英語詞を書くかは迷ったんですよね。でもこの曲は英語詞が合いそうだなと思って書き始めて、意味を伝わりやすくするために、最後に日本語詞を書き足しました。
──英語詞を入れたという部分にもバンドのルーツが反映されていると思いますし、ジャケットアートワークも1990年代のパンクバンドの作品っぽいですよね。
1周しましたね。自分の中で、今作に関しては“Back to the 90's”みたいなイメージがあって。今日着てる服も先輩がやってる「GOODENOUGH」っていう、1990年代にすごく流行ったブランドの服だし、最初のアー写でも当時のTシャツをリメイクして着てたりだとか。
──“Back to the 90's”がところどころに現れているんですね。
楽曲も活動休止前にはやってなかったパンク色の強いものだし、名前は175Rだけれども、また新しいバンドを組んで作った1枚目っていうイメージでもあるんですよね。自分の中で1stアルバムって、カバーが入ってたり、オープニングらしい曲が1曲目にあったり、そういうイメージがあって。
──これまでの活動はあまり意識せずに制作したんですね。
そうですね。例えば今「空に唄えば」作れって言われても作れないし、家族が増えたりとか、今の年齢の自分だから書けることもあるし。若さとは違う何かが、今の175Rには新たに備わってると思うので。
「AIR JAM」と「SKA OF IT ALL」
──“Back to the 90's”というテーマ通り、「1999」というタイトルの楽曲も収録されています。こちらは激しいスカパンクですね。
この曲と「ROMAN ROAD」はSHOGO and His Friendsのつながりで、かなすを含むHEY-SMITHのメンバーがホーンを吹いてくれて、すげえありがたいなって。ケンくん(イイカワケン / Tp)は同い年で、彼がLONG SHOT PARTYをやってたときに俺らと一緒のレーベルだったから、古い付き合いなんです。
──この曲の歌詞には「散らかるCDとテープと積まれたビデオの山々 擦り切れるほど観たAIR JAM & SKA OF IT ALL」と、1997、98年頃に開催されたイベントのタイトルが出てきますね。
この2つのイベントは175Rのルーツで、でかい存在ですね。「SKA OF IT ALL」のVHSでメジャーに行く前のSNAIL RAMPとかを観て、「こういうバンドが東京にいるんだ」みたいな。この曲で描いてる1999年頃は福岡に住んでたので、東京で行われることって全然違う、外国のものみたいに見えるんですよ。
──今作でカバーされている槇原敬之さんの「遠く遠く」は、故郷にいる友人への思いが描かれた曲ですよね。
学生時代、一番多感な時期に聴いてた曲ですね。その頃はホントに邦楽オタクで、ジャンル関係なくめちゃめちゃ聴いてて。同窓会に行きたいんだけど忙しくて行けない、でもみんなにわかってもらえるように東京でがんばってる姿をふるさとに届けるよって、学生時代には俺もいつかこういう思いを歌詞に残せるようになりたいと思ってました。東京なんか出たこともない少年が、いつかこういう歌を歌いたいんだっていう、当時の思いを今回カバーで表現しました。そういえば、僕らの地元にいる昔バンドが好きだった同級生は、もう音楽を聴かなくなったりしているんですよ。みんな子どもがちょっと大きくなって。CDも買わないみたいだし。
──もちろん、ライブハウスにも行かないですよね。
絶対行かない。福岡の友達が行くのはラーメン屋ぐらいです(笑)。でもやっぱお金と時間の使い方も変わっていくと思うから。初回限定盤には「空に唄えば」の再録が入ってるんですけど、この曲はもともと地元の仲間に向けて歌ってて。レコーディングのときにも、福岡にいる仲間のケツを叩くような、肩を叩くような気持ちで歌いましたね。
“175R印”を好きな人が増えてくれたら
──今回175Rとして7年ぶりのアルバムを発売されますが、改めて今どんなお気持ちですか?
自分が好きな感じが時代に合ってないんだろうなっていうのは、けっこうずっと思ってるけど、やめられないんですよね。その時代に向けて、カメレオンのように色を変えることも自分らにはできないから、今回も結果“175R印”みたいな感じで。だからそれを好きな人が少しでも増えてくれたらいいなって思いますね。
──ストレートで力強く背中を押してくれる歌詞という175Rの大きな魅力は、新しいアルバムでも変わってませんからね。
本質は変わらないですね。活動休止して6年と言えども、僕らがデビューしてテレビとかにバンバン出てた2003年からは、14年経ってるわけで。僕らは6年ぶりだけど、ひさしぶりに聴く人にとっては、もしかしたら10年以上ぶりの175Rだから、単純にどういう感想が返ってくるのか楽しみですね。あと、初めて175Rを聴く人が今回のアルバムを聴いて、どんなバンドだと思うのかなって。初回限定盤には代表曲を再録した「175R(e) BEST」が付いてるので、過去の僕らを知らない人への入門編のような作品でもあると思います。
──確かに、初めて聴く人からしたら“175R印”も新しく感じるかもしれないですよね。
そう思います。活動再開に向けて動き出したときに、最近のバンドとかを聴いたり、観に行ったりしたんですけど、今みんな好きなバンドとして“WANIMA、フォーリミ、ブルエン”って口をそろえて言ってるなって気付いて。その3バンドはおそらく、今の時代を象徴するバンドなんですよね。そこになんとか“WANIMA、フォーリミ、ブルエン、イナゴ”みたいな感じで、ちょっと入れねえかなと思って。新人バンドみたいな感じで。そういう、いい意味で軽いスタンスでワクワクしてますね。
──楽しみにしています。4月8日には東京・日比谷野外大音楽堂、15日には大阪・大阪城音楽堂でのワンマンライブも控えていますね。
野音は昔からけっこうやってて、こういうお祝いのときは野音だ、みたいな感じなんですよ。だから早めに押さえてたんですけど、今回このアルバムを作り終えたときに「みんなでモッシュ&ダイブやりたかったかな、あちゃー」と思って。でもこの野音って、レコ発っていう意味合いだけじゃなくて、7年ぶりの公式なワンマンライブなんですよね。「GET UP YOUTH!」以外も含めて、175Rのすべてを見せるような日になると思うし、野音にしかない独特な雰囲気を楽しんでもらえたらいいなって。座席があるから親子でも来れると思うし。
──フロアがもみくちゃになるようなライブは追い追いですね。
うん。それはもういつでもできるから。野音は「改めて、活動再開を祝いませんか」っていう、誕生日会みたいな空気感にしたいなと思ってます。
- 175R「GET UP YOUTH!」
- 2017年4月5日発売 / EMI RECORDS
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初回限定盤 [2CD]
3780円 / UPCH-29246~7 -
通常盤 [CD]
2700円 / UPCH-20444
- DISC 1
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- 歓びの詩
- これから
- Weakness
- ROMAN ROAD
- トカイノネオン
- シャナナ
- Walk your way
- 君にまで
- 1999
- 4seasons
- 遠く遠く
- Restarted
- 新世界
- DISC 2(初回限定盤のみ)
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「175R(e) BEST」
- ハッピーライフ
- 空に唄えば
- YOUR SONG
- 僕の声
- 「手紙」
- SAKURA
- 175R 活動祭開!青き春の野音!
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- 2017年4月8日(土)東京都 日比谷野外大音楽堂
- 2017年4月15日(土)大阪府 大阪城音楽堂
- 175R(イナゴライダー)
- 1998年、SHOGO(Vo)を中心に北九州で結成。地元でライブ活動を展開すると共に、KEMURIやLA-PPISCHといったメジャーバンドと共演し、ファン層を拡大する。2003年にシングル「ハッピーライフ」でメジャーデビュー。同作と、同年リリースのシングル「空に唄えば」が共にオリコン週間CDシングルランキング初登場1位を記録した。この年の大みそかには「NHK紅白歌合戦」に出場。2004年には初の東京・日本武道館公演を行った。2007年に結成10周年目に突入したことを記念し、初のベストアルバム「サンキュー・フォー・ザ・ミュージック」をリリースし、初の47都道府県ツアーと海外公演を実施。2010年2月にメジャー6thアルバム「JAPON」をリリースしたのち、同年の12月より無期限の活動休止期間へと突入。およそ6年間の休止期間を経て、2016年12月に活動を再開する。2017年4月には7年ぶりのフルアルバム「GET UP YOUTH!」を発表。さらに東京・日比谷野外大音楽堂と大阪・大阪城音楽堂で「活動祭開!青き春の野音」と題した6年ぶりのワンマンライブを開催する。